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「実は……俺、人間じゃないんですよ。」
「………………は?」
 時は幾らか前にさかのぼり、時計の短針が10の少し後をさしていた頃。
 並盛中学校の屋上は、何とも言えない静けさに包まれていた。
 原因は先ほどのネロの発言だ。
 そのふざけているとしか思えない言葉に、雲雀は自分がからかわれているのだと思い、機嫌を急降下させて黙り込んでいた。
 対するネロはこうなる事が予想できていたのか、ビクビクと雲雀の様子を窺っている。
 どちらにせよ双方沈黙を保っている事には違いないので非常に気まずい状況だ。
 数分間続いたその沈黙を打ち破ったのは、不機嫌極まりない最凶の風紀委員長の声だった。
「……ふざけてるの?」
「や、やっぱりそう聞こえます?」
「……咬み殺す。」
 言いながらユラリとトンファーを構える雲雀。
「ちょ、待って下さいって! ちゃんと真面目に話しますから!」
「だったら話し始めから真面目にしなよ。」
「落ちついてください! トンファーしまって!!」
「嫌だ。」
「なら、せめてその棘だけでも! 流石にそれをまともにくらったら俺死んじゃいますって!!」
 どうやら予想以上に怒り心頭らしい雲雀を何とか宥めるネロ。
 素手や素トンファーならまだしも、無数の棘が生えたそれを脳天にくらえば流石のネロも普通に危ない。
「……できるだけ簡潔に話しなよ。」
「り、了解であります……。」
 四苦八苦して何とか棘をしまってもらったトンファーを再び首元に宛がわれ、両手をあげて降参の意を示し、顔色を悪くしながらネロは事情を説明し始めた。
「えっと……さっきも言いましたけど、俺、人間じゃないんですよ。」
「……。」
「恭弥さーん、首が閉まって苦しいでーす、力抜いてくださーい……。」
「続けなよ。」
「す、スルーですか……。」
 ぐぐっと気管を圧迫され、ぐえ、と言いたいのをネロは何とかこらえる。視線だけで射殺されそうだ。
「えー……人間じゃないって言っても、元々そうだったわけでは無くてですね。昔俺が居た施設で、大量の特殊な薬物を投与されたのが原因なんですけど……。」
 段々目が据わってくる雲雀。
 あれ、これやばくね?
 と思う時間はネロには無かった。
 なぜなら今にも窒息してしまいそうだったからだ。
「それの後遺症か何かで、毎年七夕頃になると身体がだるくなったり、精神的にアレだったりするんですよ。まあ超ひどい夏バテみたいなもので……で、まだ七夕から一週間ちょいでしょ?」
 喉がずきずきする。潰れていないにしても、凹んだのではないだろうか。
「ですから身体が重くて本気で戦えないというか……。」
「……。」
 まあここまでのネロの長話を総括して言うと、いきなり出てきたトンデモ話ほど人に信じてもらえない話は無い、ということだ。
 そして……
「……咬み殺す。」
 ただでさえ信じてもらいにくい話をあの雲雀に信じてもらう事ほど、難しい事は無かった、ということだ。
「恭弥さん!? おおお落ちついて下さいって!! たっ、タンマっ!!」
「聞こえないね。」
「ほ、ホントなんですってば!! 俺ホントに人間じゃな……にぎゃああああああ!!!」

 
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