やけにカンカンと鳴る踏切の音が煩い気がした。




忘れたいコトがあった。記憶から消し去りたいコトがあった。
ココであったこと。ココで見たこと 。
シズちゃんはどこへ行ったのかを。
嫌なコトは忘れればいい。人はそれを現実逃避というけれど、誰にだってそういうコトをする時があるだろう?
シズちゃんが俺を独りにするから、暗闇にひとりぼっちで取り残されてしまった。



ある朝、シズちゃんは突然姿消した。池袋から、新宿から、東京から。
そういえば、都会はあんまり好きじゃないって言ってたよね。俺も変わり者だけど、突然居なくなるとか、キミの奇行は理解し難いよ。
ああ、もしかしてまた何か事件に巻き込まれたとか、拉致されたとか、危ないことをやらかしたのかと溜息が漏れる。
俺は良くそういうコトに首を突っ込むけど、シズちゃんに限ってそういうコトはないと思う。だけど心配だなぁ。
新羅やドタチンとかに相談して、シズちゃんを探しに行くって言ったら皆揃って止めろと言う。
酷いなキミ達。シズちゃんの友達でしょ?なんて友達思いじゃないヤツ。
いいよ、誰が何と言おうと俺はシズちゃんを探しに行くから。
周りの不快な声に堪らえきれず外に飛び出した。
シズちゃんを見つけたら、キミ達がシズちゃんのコト悪く言ってたって言ってやるからね。



中々見つからないシズちゃん。とりあえず都会には居ないよね。
シズちゃんの行きそうな場所は大体検討が付いてるけど、シズちゃんはいない。なぁに、かくれんぼ?
もしくは俺の後をこっそり着いてきてるとか?
そんなコトするなら嫌いになっちゃうぞってちょっと拗ねてみた 。
勝手にいなくなるなんて、そんなの許さないんだからね。
だから、早く出てきてよ。


キミを探して歩く高架橋の下。落書きだらけの壁。
そうだ、見つけたら頬を叩いて「心配したんだよ、バカシズちゃん」って言ってやろう。
ああ、でもちょっと俺が涙ぐむかもしれない。恥ずかしいな。



ぺたぺた歩く。キミを探しに知らない街の中を。
まるで迷子の子供のように。泣きそうな顔、かっこ悪いなぁ。こんな顔、シズちゃんには見せられない。
ぽろぽろとシズちゃんとの想いが溢れ出す。張りつめてた感情の糸が切れそうだ。
キミが手を引いてくれないと 困るんだから。早くキミに会いたいよ。



知らない街で一日の終わりを告げるように空が真っ赤になる。影が伸びる。俺のだけ。
こんなに苦しいなら、シズちゃんがいない日なんて忘れたい。忘れてしまいたい。



皆が言うんだ。俺の記憶が捏造された?そんなわけない。だってシズちゃんは家出したんだよね?

とても大切なことだけど、思い出しちゃいけない気がするんだ。
どうしてだろう。とても大切な記憶のはずなのに。
街は過保護なくらい俺の願いに忠実だった。
それが幸せをもたらすかはわからなかったけれど。



ばらばら剥がれ落ちた記憶の欠片を拾い集める。もう一度キミに会う為に。
一度目を背けてしまった真実。思い出したいと願う。
くるくる廻る記憶。歩けば歩くほど思い出す。
散歩の終点見えてきた。ホントはもうキミは……。



シズちゃんを探して歩く踏切で、キミのすべてを思い出す。
夕陽に照らされ昇るキミの影。
少し寂しそうに俯いていた。日常で繰り返す喧嘩と言う名の戦争の後。あの日、俺は別れ際にキミに力なく手を振った。
「またね、シズちゃん」
またいつものように話が出来ると思っていたから。
だけど、その日からキミはいなくなってしまった。
俺は、居なくなったキミを探して迷子になった。



「シズちゃんのところへいきたい」



カタカタと震える脚を押さえ、キミを最後に見た場所にもう一度立った。
そこはやはり、夕陽が綺麗な場所だった。
もう戻れないのだけれども、これでいいと決めたんだ。
ふらふらキミを探し迷子になったコトがかっこ悪くて。こんな俺をキミは笑うかな?
カンカンと踏切の音が鳴る。そう言えば、あの時も踏切の音が鳴っていた。二つの点滅に照らされた涙は、きっと安堵からだろう。



「だって」
「キミのいない世界のほうが」
「間違いだから」


「待ってて」
「すぐ、見つけに行くからね」



カンカンと鳴る踏切の音が、やけに大きく聞こえた後、俺の世界は無音になった。





目を開けた。

ああ、やっとここに帰ってこれた。ここなら大丈夫。絶対キミはココにいる。
きっと見つかる。



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暴走Pさんの家出少年と迷子少女という曲のパロをやってみた。
あの曲はいい意味で裏切られたぜ…。さすが暴走Pさん。
好きです(キリッ
結局静雄は死んでてその後を臨也が追ったという…全くハッピーエンドじゃない話っていう…。
むしろハッピーエンドとは程遠いっていうね。

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