サイケはほのぼのと窓辺で日向ぼっこをしている津軽を、見守るように眺めていた。
津軽は物静かで、滅多に怒らないし、喋らない。日向ぼっこが好きなようで、いつもバルコニーでボンヤリと空を眺めている。
だからか、見ていてとても不安になる。ポヤポヤしているから簡単に抱きつく事もキスするのも容易い。
本人はそれを嫌だと思ってないから余計に厄介なのだ。一種の愛情表現だと津軽は思っているらしい。
彼が物静かで大人しいのをいい事に、いろいろちょっかいを出す輩もいるのだから困ったものである。
それは主に自分達の主である折原臨也に値するのだけれど。

「つーがる、津軽。ちょっと来てくれないかなー」

「…? はい、マスター」

ニコニコと微笑む臨也の両手にはフリフリのメイド服と何か凄い色の大人のオモチャを隠し持っていた。
津軽は気づいていないためトテトテと歩き出して臨也の元へ向かうが、近づけさせては行けないと全力で思った。

「わぁああー!!津軽ぅー!行っちゃダメぇえー!犯される!綺麗な津軽が不潔な臨也くんに汚されるぅうーッ!!」

「…サイケ、お前は俺を何だと思ってんの。仮にも主に向かって…」

「え?万年発情期ストーカー変人カマ野郎!!」

そう言ったサイケの顔は太陽のように輝いていたそうな。

「サイケ、笑顔でそういう事いうのやめろ。自分と同じ顔したヤツに言われるのって結構傷付くんだから」

「まんねんはつじょ…??」

「津軽は知らなくていいんだよ!」

津軽の前に臨也から守るように、主である臨也と同じ顔をしているサイケが立ち塞がる。
サイケは津軽の後に創られた歌唱用人形、つまりはボーカロイドであった。
本来ならば歌を歌うだけの用途しかないはずなのだが、今は臨也と津軽とサイケは家族のように接していた。
身体の構造は違うが他は人間と同じなので日常に支障はない。

「サイケ…?一体どうしたんだ?そんなに慌てて…」

「ううん!何でもないよ!でももう臨也くんには近づいちゃダメだよ」

「…何でだ?」

「津軽の純白が臨也くんによって真っ黒に染められちゃうからだよ!」

「…??…おれ、白い…かなぁ…?」

自分の着物を引っ張って見つめる津軽を臨也の目から遮るようにサイケは怒りのオーラで臨也を睨みつけた。
まるでお姫様を護る騎士のように。差し詰め臨也は魔王だろうか。

「なーにサイケ、俺は君達の主なんだよ?逆らうの?」

「臨也くんはずっと静雄くんの事追っかけてたらいいんだよ!津軽に手を出さないで!」

「だってー…、シズちゃんに言ってもやってくれる訳ないじゃないか」

「津軽だってやらないよ!というかやらせない!」

津軽が可愛いフリフリのフリルが付いたメイド服を着ているのは見てみたいが、臨也のオモチャになっているところは見たくない。
何としても津軽だけは守らないと。サイケは自身の心に誓う。

「サイケ、サイケ。臨也はおれ達のマスターなんだから、ちゃんと言う事聞かないと駄目だろ?」

「ぇ、う…。で、でもね津軽。臨也くんは津軽にイヤラシイ事させようとしてるんだよ?津軽だってそんな事されたくないでしょ…?」

津軽の純粋な瞳がサイケを見つめる。その無垢な視線がとても痛い。
間違った事は言ってない。だってこれは津軽を守るためなんだから、とサイケはグルグルと頭の中で必死に言い聞かせる。

「けど、マスターが言う事は絶対だから…おれ、マスターの事好きだし…」

「ほら!ほらねサイケ!津軽は良い子だなぁもう!俺も津軽の事好きだよーッ!!」

臨也に抱きつきながらそう言われ、津軽は頬を染める。それが気に食わなかったのかサイケは眉間にシワを寄せる。

「じ、じゃあさ、じゃあさ!津軽は僕の事、好き?」

津軽なら好きって言ってくれるはず!分かり切った答えにサイケは自信満々な顔をするが、津軽から発せられた言葉は。

「サイケの事は、好きじゃない」

「えッ!?」

驚いてを上げたのはサイケではなく、臨也のほうだった。
一方サイケは真っ白に燃え尽きていた。頭の中でエラーコードが何度も出るがそれどころではない。
津軽が、好きじゃないって言った。嫌われた。全部、全部津軽の為だって思ってやってたのに。
好きじゃない。その言葉がこれ程までに苦しいモノだとは知らなかった。
ポロポロと、自然に涙が出てきた。拭っても溢れてくる涙をジャケットの裾で拭っていると、津軽が恥ずかしそうに呟いた。

「…サイケの事は、好きなんじゃなくて、愛してるんだ。マスターは好きだけど、愛してるのはサイケだけだから」

その言葉はとても胸に響くものだった。暖かくて、安心できる歌のような言葉。
嫌われた、なんて思った自分が情けない。彼はこんなにも自分を想ってくれていたのに。

「ぅ、…うぅー、…つ、が、つが、る、津軽ぅうーッ!!ごめ、ごめんねぇえッ!僕が悪かったよぅうう!!」

「ふぇ?…急にどうしたんだサイケ?何か悪い事したのか…?」

悪い事をしたのは津軽じゃなくて僕なんだ。君の僕への愛を疑ってしまった。
でも、でもね。

「ッ、津軽!僕もね、津軽の事愛してる!この世で一番、愛してるッ!!」

そう言ったら、津軽は恥ずかしそうに顔を真っ赤にして、笑った。
この笑顔を命に変えても守ろう。津軽の笑顔を奪うヤツが現れたのなら、自分自身が壊れても彼を守り抜こう。
これはきっと一生忘れない誓い。
だから。

「津軽。津軽は、ずぅーっと笑っていてね」

僕はその笑顔も含め、君の全部が大好きなんだ。
君が笑ってくれれば、僕も幸せだから。



(よし、まずは身近な悪から滅ぼさなきゃ!)
(…サイケ?何でそんな不吉な事言いながら笑顔で俺の方を向くの?)
(ノミ蟲めー!覚悟ぉー!)
(ちょ、ノミ蟲って…シズちゃんってばサイケに変な事覚えさせてッ、…って、アッー!)

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くーぷへ!
リクエストありがとうですの!
相互のよりこちらが先に出来てしまいましたん…。
すみませぬ。良かったらお持ち帰りして下さいませ。
途中ぐちゃぐちゃしてますが、少しでも楽しんでくれれば幸いです(^ ^)
リクエストありがとう御座いました!

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