「ご、ごめんセルティ!」
仕事から帰ってきたら、新羅が私に対して土下座をいきなりしてきた。
意味が分からない…。突然親しい人間に土下座されたら誰だって困るだろう。
兎に角、まずは理由を聞かなければ分かるものは分からない。
『分かったから…。一体なんで私に謝るんだ新羅。突然謝られても困る』
「…言っても、怒らない?」
『内容による』
「うわぁぁあん!絶対怒るよセルティは!」
何をしたんだ新羅の奴…。まったく、私に怒られるのが分かっていながら何で余計な事をするのやら。
何年も付き合ってはいるが、何で分からないんだ。成長していない、とでも言っておこうか。
『で、何をしたんだ?』
「……、…だよ」
『………??』
「セルティが楽しみに撮っておいたふしぎ発見の録画間違って消しちゃったんだよぉ!」
うわぁぁあ、と床に顔をくっ付けて泣きだす新羅。全く…。
そりゃあ私だって愉しみ撮っておいたふしぎ発見を消された事に対しては怒っている。
毎週毎週愉しみにしているし、リアルタイムで見たいとは思っている。
けど、仕事が入ればそれは叶わぬ夢物語り。だからこうして録画していたのに…!
『新羅なんてクリオネに殺られればいいのに』
「クリオネ!?セルティそれは勘弁だよ!」
涙と鼻水を垂らして私に縋りついてくる。まったく、これじゃあ怒るに怒れないじゃないか。
こうすると新羅は私が怒るに怒れない状況になると分かっててやっているのか?
まったく、面倒な奴に好かれたものだ。
『新羅、もうこんな事はしないな?』
「うん!もうしないよ!セルティに嫌われるのは嫌だし!」
『よし、ならもう許す』
「ああ、ありがとうセルティーッ!!」
『ちょ、鼻水垂らしたまま抱きつくな!!』
愉しみにしていた録画を消されても、鼻水を垂らしたまま抱きつかれても。
どうしても嫌いになれない。私の癪に障る事をされても、うっとおしいと感じる事をされても、
嫌いになれないのは。
好きになった、私が悪い
これが惚れた弱みってやつだろうか。
―――――
久しぶりに新セル。この二人見てて和むなぁ…。
『それもひとつのラプソディア』様よりお題をお借りしました。