突然放り出された、この世界。いつかはやってくるんだろうと覚悟していた。
だって、おれはマスターにとって一瞬の遊び道具でしかなかったんだ。分かっていたのに、どうして胸の奥がこんなに痛むんだろう。
サイケには何も言わないで来てしまったから、もしかしたら泣いているかもしれない。
おれも涙脆いけど、サイケの方が泣き虫なんだ。ごめん、ごめんな、サイケ。
もう一緒に唄、歌えないな。

おれの瞳の真ん中が、 広がって広がって、戻らなくなる。
馴染み始めたこの場所。 色鮮やかだったあの世界が遠ざかる。
怖いよ。もう戻れないなんて。抜けだそうにも上からガラガラとガラクタが落ちてきて、這いあがれないんだ。
もう足は瓦礫で埋まって動かない。ああ、このまま消えていってしまうのかな。

サイケの名前を呼んだら、気付いてくれる?早く出して。ココから出してよ。
ねぇ、早く…。嗚呼、もう、手遅れ?

見えないよ。聞こえないよ。感じないよ。おれの存在が消えて行く…。
くしゃくしゃと音が鳴って、ほら、なにもない。
埋もれていく、おれの身体。ああ、寂しいなぁ…。

ガラガラと、ガラクタの雪が降り積もる。埋まって埋まって、溺れてしまうよ。
でも、君達もマスターに捨てられたんだよな。だったら、あんまり寂しくないかもしれない。
サイケのその心に、残っているかな。ただの記号の羅列。だけど、もう忘れていいよ。
きっとサイケは泣いちゃうから。そんなサイケ見たくないんだよ。だって君にはずっと笑っていてほしいから。
おれは、サイケが笑っているのを見られるだけで嬉しいから。

落ちてくよ。暗くなるよ。
怖くないよ。平気だよ。

くしゃくしゃと音が鳴って。じゃあ、おやすみ。

見えないよ。聞こえないよ。感じないよ。消えてくよ。

くしゃくしゃと音が鳴って、ほら、もうなにもない。



「じゃあ、おやすみ」



目を閉じて、瓦礫に身を寄せる。

「津軽ッ!!」

かすかに響く君の声は、懺悔?
振り返れば君の姿。幻かと思った。だってあり得ないから。

「……サイ、ケ?」

名を呼べば抱きつかれた。その体温が嘘じゃない事が伝わって。
涙が溢れて止まらなかった。

「サイケ…どうして、ここに?」

「津軽を探しにきたんだ!臨也がここに津軽がいるっていうから」

サイケのその眩しい笑顔がとても懐かしく感じた。ああ、愛おしい。

「だけど、ここにいたらサイケも消えちゃうよ」

「僕は消えないよ。だって僕は津軽を助けにきたんだから!さぁ、ほら、一緒に抜けだそう!」

差し出された腕に、戸惑いながらもおれは手を伸ばした。
今度はずっと一緒に居られる空間で、たくさん唄を歌おうか。



(サイケ、よくおれがここにいるって分かったな)
(…だって、津軽の声が聞こえたから)

愛しい君の声を、僕が聞き逃すはずがないだろう?

――――――
津軽のターン!そして完結!
リンレンのサルベージとごみばこは泣けるよ…ほんとに。

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