*幽静(幽)…な感じ

OK?↓




朝日が眩しい。今日もいつもの朝が来る。
だけど、少し違ったのは隣に静かな寝息を立てて寝ている兄がいる事。
お互いに服は着ている。ただ、一緒に寝ただけだ。それだけ。
他には何もない。それは少し残念ではあるけれど。仕方がない事だ。
俺は兄を愛しているけれど、兄は俺を愛してはいない。
だけど、それでいい。今の兄貴は俺がいないと壊れてしまうほど脆くなっている。
誰かが支えていないと崩れ堕ちるだろう。それは他の人間ではなく、俺でなくては駄目だ。
兄貴には俺だけが居ればいいんだから。
だから兄貴も、俺だけが必要になればいいのに。俺は他の人間とは違う。
兄貴を愛しているし、裏切らないし、怖がらないし、殺されてもいいんだから。
これは兄弟の絆以上の繋がり。さぁ早く、兄貴も俺の処へ堕ちておいでよ。

「ん、…かすか…?」

「おはよう、兄貴。よく眠れた?」

薄ら眼を開けこちらを見る兄貴。まだ寝起きは幼さが残る。
あの頃が懐かしい。兄貴はくしゃりと顔を歪めて俺の腰に抱きついてきた。

「あんまり良く寝れなかった…」

「そう?悪い夢でも見た?」

「あの野郎が夢に出てきやがってよ…朝から最悪だぜ」

大体予想はつくけど…。またあのオリハライザヤって人だな…。
今度あの人の事務所に変な物送りつけてやろうかな。

「どうせなら、幽が夢に出てきたら良かったのにな」

そう言って笑う兄貴。ごめん、ちょっとそれ腰に来たかもしれない。
無意識にそういう可愛い事いうからあのオリハラって人にからかわれちゃうんだよ。

「俺の夢には兄貴がちゃんと出てきたのに。兄貴の夢には俺は出てこなかったんだ」

「う…、今度見る夢には必ず幽が出て来るようにするから…」

その夢が覚めない夢ならば良いのに。夢なんて見ようと思って見れるものじゃないのにさ。
本当に可愛い事言ってくれるよね、兄貴は。

「じゃあ、もう一回寝ようか」

「え…幽、これから仕事じゃないのか?」

「仕事より兄貴の事の方が心配だよ。ほら、今度見る夢には俺が出て来るようにするんでしょ?」

「仕事より俺って…。幽は相変わらずだな」

当たり前だよ。仕事なんて兄貴の次に大事なんだから。
一番大事なモノを優先しないなんて、ただの馬鹿じゃないか。
今度見る夢にはちゃんと俺が出て来るといいな。贅沢を言うなら、その夢が覚めないといい。
そうしたら、俺はずっと兄貴と一緒に居られるだろう?
明日世界が滅びるというならば、俺は迷わず兄貴と一緒にいる事を願うよ。
死ぬ時はやっぱり好きな人と一緒に死にたい。兄貴もそうだと嬉しいな。

「俺、死ぬ時は幽と一緒がいいな」

以心伝心。どうやら俺の考えている事が兄貴にも伝わってしまったようだ。
嬉しい。死ぬ時は一緒に死んでくれるなんて。俺は兄貴さえいればこんな世界どうでもいい。

「幽さえいれば、他は何もいらない」

「…俺も、兄貴さえいれば他はどうだっていい」

堕ちろ。堕ちろ堕ちろ堕ちろ。さぁ、あと少し。
追い込め追い込め。逃げ道はもうどこにも無い。

「幽が、俺にとっての全てだよ」

愛してる。

それを聞いた俺は心の中で高らかに笑い上げ、



堕ちたキングはもう二度と戻らない。

――――――
前の文の続きのつもり。
幽静幽…みたいな…感じにしたかったが無理でした。

『Chien11』様よりお題をお借りしました。

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