眼を覚ますと部屋が真っ暗だった。どのくらい寝ていたのだろう。
今日は珍しく朝から風邪気味だった。本当に珍しい事もあるもんだ。
朝から何も食べてない。何か食べないといけないな…。
早く治してちょくちょく池袋に現れるようになった天敵のノミ蟲をブチ殺さないといけないんだ。
こんな風邪如きでくたばってたまるか。
そう思って起きあがろうとした。刹那。聞きなれた声が聞こえた。

「兄貴、まだ起きちゃだめだよ」

弟の幽だった。幽は俺と違って温厚で、今や芸能界トップのアイドルだ。
今日は仕事無かったのか…?

「幽…、お前何でここに…」

「今日はたまたま仕事が無かったから。それで家に戻ったら兄貴、熱出して寝てるからさ」

「あー…、悪いな」

「別に。どうって事ないよ」

幽は何でも出来る。俺みたいに怪力なわけじゃない。幽は俺と違って人間なんだ。
そういえば、幽と二人で過ごすのは久しぶりかもしれない。
俺はトムさんの所で毎日のように仕事しているし、幽は俳優で、アイドルだ。
程遠い仕事をしている俺達は、幼い頃と違って一緒に過ごせる日々が少なくなったからな。
たまにはこう日もありかもしれない。

「何か食べたいもの、ある?」

「…そうだな…、じゃあ、…プリン」

そう言ったら幽が眼を丸くして驚いた。普段幽は表情を崩す事が極端にない。
機械のようだと影で言われている事が多いようだが、俺はそうは思わない。
だって、こうやって俺にはちゃんと喜怒哀楽を見せてくれる。
幽はクスクスと笑って、

「分かった。今度はもう勝手に食べないから。冷蔵庫持ち上げられて壊されたらたまらないもんね」

「当たり前だボケ。…宜しく、頼むな」

「うん」

幽は小さく笑うと、財布を持って家を出た。
本当に、たまにはこう言う会話もいいかもしれないな。
プリン食ったら臨也の野郎でもぶん殴りに行くか…。



(幽のやつ…プリン買うのに何時間掛ってんだ…)
(…ただいま。ごめん兄貴、遅くなった)
(おお、おかえ…、え、なんだその袋の数…)
(プリン…だけど…)
(それ、全部か?)
(そうだよ?)
((…軽く200個はあるぞ、これ…))

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初、幽静!
平和島兄弟、大好きです。

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