今日も池袋の街は荒れる。自販機が飛び、ガードレールが宙を舞う。
そして聞こえる罵声。

「死ねノミ蟲ぃーーッ!!」

金髪にバーテン服の男が自販機を持ち上げ、それを一人の男目掛けて投げつける。
だが、投げられた先に男は居らず、その横で飄々と笑っていた。

「あはは!相変わらずシズちゃんって攻撃の仕方がワンパターンだよね」

折原臨也はポケットからナイフを取り出すと、先程の金髪にバーテン服の男、平和島静雄に切り掛る。
静雄はそれを待ってましたと言わんばかりに切り掛ってきた臨也目掛け拳を振り上げる。
そんなやり取りが此処、池袋で繰り広げられていた。ただ少し違ったのは、珍しくこの二人がしっかりと成り立つ会話をしている事であった。

「シズちゃんってさぁ、好きなヤツができたらどうすんの?もしかしたらその馬鹿力で殺しちゃうかもよ?」

「けッ!お生憎!俺の好きな奴は、んな柔な奴じゃねぇんでな!」

「へぇ!シズちゃん好きな人いるんだ?誰?教えてよ」

「だったら自分で調べな!手前は情報屋なんだろうが!!」

ドカッ!

会話を交わしている最中にも街灯、看板が宙を舞う。

「えー、どんな女の子だろう。シズちゃんと一緒で馬鹿力なのかな?」

「勝手に決め付けんじゃねぇ、よッ!!」

ガシャーンッ!

「という事は馬鹿力じゃない…。えー誰だろう。すっごい気になるんだけど」

「手前なんかに、教えてやんねぇよ、バーカッ!!」

自分の好きな奴が目の前に居るお前だ、なんて言える訳がないと。
静雄は自身の言葉を飲み込む。
言えない。言える訳がないのだ。この男に。高校時代の同級生で、
もう何年も付き合いがある、しかも男に言える訳がないのだ。好き、だなんて。
大体、自分は好きという物が分からない。目の前にいる男は人間を愛しているなどと言っているが、
全くもって自分には理解が出来ない。

「ねぇねぇ、プロポーズとかした訳?」

「してねぇよ」

「へぇ?何で言わないの?嫌われるのが眼に見えてるから?あは!シズちゃん可哀相ー!」

「…そんなに聞きてぇなら、今言ってやろうか?」

「へ…?」

静雄を大きく息を吸って、臨也に向けて言い放った。

「いつか、ぜってぇ、殺してやる」



(何それ。プロポーズなの?)
(ああ。プロポーズだ)
(ふーん。変なの。じゃあ、俺も言っていいかな)
(は…?)

「俺もシズちゃんの事、いつか絶対、殺してやる」

―――――
不器用な二人。…がテーマでした。
どこが不器用な二人…?
難しいな。

『Chien11』様よりお題をお借りしました。

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