*410000キリ番リクエスト




「なぁ、オッサンが泣いてんだけど?」

ライアンのその言葉にギョッとして振り返る面々
そして下を向きポロポロと涙を零す虎徹。
皆にどうしたんだ、と心配される中、虎徹は胸の奥がじんわりと暖かくなるのを感じた。


事の始まりは数時間前。
アポロンメディアでは、バーナビーとライアンが虎徹の事務作業を手伝っていた。

「だーから、そこはそうじゃなくてこう、分かったか?」

「う、うーん…?」

「ライアン、教え方が適当過ぎます。虎徹さん、これは、こうやってこう…」

「ん、んんんー……??」

自分より年下に苦手なパソコン操作を習う。こういう機械類は教えて貰ってもすぐには覚えられない。
携帯だってメールと電話とカメラ機能だけを覚えただけで、他にどういう機能があるのか知らない。
家でパソコンを操作するときも手元が覚束無いのに。

「手伝って貰って悪いな…」

「いいんですよ。僕がしたいからしているので」

「俺様は別にしたいなんて言ってねェけど」

うぐ、とバーナビーに肘鉄を喰らったライアンがうめき声を上げる。
一度ヒーローを辞めてしまったが、こうしてまた戻ってこれた。
それも今まで相棒だった彼の隣にまた一緒に立っていられる。
虎徹はそれをヒシヒシと己の身に感じていた。
優しい表情のバーナビー。また一緒にヒーローが出来ると知った時、彼も少し喜んでくれていたような気がしたけれど、あれは見間違いではないはず。
二人の手伝いもあって、あっという間にパソコンでの作業は終わった。
食い入るようにパソコンと格闘していたからか、身体が重くなってしまった。

「よっしゃ!トレーニングしに行くぞ!」

「僕も行きます」

「えー、俺様はパス」

「お前も行くんだよ、ライアン!」

え、と虎徹とバーナビーに腕を掴まれ半ば強引にトレーニングセンターへライアンは連行された。
ジャスティスタワーへ向かい、ロッカールームには他のヒーロー、アントニオとキース、そしてイワンがいた。
気さくに話しかけてきたのは虎徹の親友であるアントニオであった。

「お、虎徹ー!仕事は終わったのか?」

「あったりまえだろ!」

「俺とジュニアくんが殆どやったんだけどな」

「え、タイガーさん…それは…」

「ワイルドくん、それはいけないな、いけないぞ!」

「や、俺パソコン苦手でさぁ〜…」

ワイワイとロッカールームで皆と戯れた後、トレーニングルームへと入る。
そこにはもう全員揃っており、なんだか懐かしい気持ちになった。
虎徹がいる事に気付いたのはパオリンで、トタトタと虎徹の傍まで寄ると、

「あ、タイガーさん!おかえりなさい!」

そう笑顔で虎徹を迎え入れた。
パオリンのその何気ない言葉に虎徹は心を打たれた。
ジャスティスデーの事件の時も、ヒーローに一時的に復活した自分に「おかえりなさい」と声を掛けてくれた皆。
また自分を受け入れてくれるのか。目の奥が少し潤んだ。

「やっぱアンタがいなきゃ、なんか…皆寂しそうだったし」

「何言ってんのよ。アンタが一番寂しそうだったじゃない」

「や、やだ!何言ってんのよ!わ、私は別にさ、寂しいなんて…」

「思ってないの?」

パオリンの言葉にカリーナはうっと言葉を詰まらせる。
それから小さな声で、

「さ、寂しかった…けど…」

そう真っ赤な顔をして言った。
ああ、こんなにも自分は皆から思われていたんだ。
もうあんな思いはしなくて済むんだろうか。
相棒が知らない相手とコンビを組んで、皆が戦っている中、自分は何も出来なくて。
もう、そんな事にはならないで済むんだろうか。
皆がおかえり、と我が家に迎え入れるように自然というものだから、心につっかえていたモヤモヤが消えたような気がした。
肩の荷が下りたかのように、目の奥からホロリと涙が零れ落ちる。
溢れた涙は止まる事なく流れ続けた。
虎徹も止めようと思っているのだが、止まる事はない。
虎徹が泣いている、と気づいたのは一人遅れてトレーニングルームにやってきたライアンだった。

そして冒頭に戻るという訳だ。



ライアンは泣いている虎徹の顔を覗き込んだ。

「なに、誰かに苛められたワケ?」

「ちが、そういう、んじゃ…うっ、ぅう…」

「ちょ、ライアン!虎徹さんに何したんですか!?」

「は?何もしてねェよ」

「でも虎徹さん泣いてるんですが!」

「俺が気付いた時にはもう泣いてたんだよ」

どんだけ必死なんだよジュニアくん、とライアンははぁと溜息を吐く。
虎徹の事となるとバーナビーはやたらと必死になる。
グスグスと泣く虎徹の傍に寄りバーナビーはどうしたのかとオロオロとしていた。
それから、中々泣き止まない虎徹をバーナビーはそっと抱きしめた。
バーナビーの暖かい身体に安心したのか、泣いている虎徹の声が小さくなる。

「大丈夫ですか?」

「ああ…、悪かった。急に泣いたりして…」

「差し支えなければ、理由を聞いても?」

虎徹はポツリと語りだす。今まで不安だった事、ヒーローを辞めた後の事、それからこれからの事。
そんな事から少し肩の荷が下りたと思ったら急に安心して涙が溢れてきたのだと。

「またそんな…虎徹さん、貴方は一人ではないんだから、もっと僕たちを頼ってください」

「でも…」

「一人で泣かれてしまう方が僕はとても辛いです」

「う、ごめん…」

ごめん、と虎徹はまた小さく呟き、バーナビーの肩に顔を埋め声を押し殺して泣いた。
これからはもっと皆の事、頼ることにするよ。
だってもう一人じゃないんだから。

「ありがとう、皆」



これからは僕らがずっと傍にいるから、一人で泣かないで

――――――
ネイサンLOVE様、リクエストありがとうございました!
遅くなってしまい申し訳ありません><
兎の肩を借りて虎が声を押し殺して泣くシチュ、私も好きです^^

リクエストありがとうございました!



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