*臨静前提の臨津
*軽い死ネタ

OK?↓





彼は、平和島静雄では、ない。

「マスター」

止めろ。止めてくれ。彼と同じ顔、同じ声、同じ姿。
唯一違うと言えば服装ぐらい。お願いだから、もう俺の前に姿を現わせないで。
その顔で、その声で俺の名前を呼ばないで。苦しくて苦しくて、おかしくなりそうだ。

「おかえりなさい、マスター」

憎むべき相手が死んだと同時に現れた、津軽という彼にそっくりな男。
何故俺の前に現れたのか。どうして俺じゃなきゃ駄目だったんだろう。
死んでから気付いたんだ。俺はこんなにも平和島静雄という男を愛していたんだと。
嫌い嫌いと口では言っておきながら、こんなにも愛していたのに!
それなのに、俺は、俺自身の手で彼を殺めてしまった。俺はなんて哀れなんだろう。
愛して欲しいと思っていた相手を自ら殺めてしまったなんて。
きっと俺は世界中誰よりも哀れで愚かな人間だ。

「…津軽」

「はい、マスター」

こんなの。こんなの。

「違う」

「マスター?」

「違う違う違う違う」

シズちゃんは、そんな顔で俺の事見ない。俺の事、マスターなんて呼ばない。
お願いだからもう俺を苦しめるのは止めてよ。俺がした事ぐらいならいくらでも謝るから。
だから、戻ってきて。時間が戻るなら俺はシズちゃんを殺したりなんかしないから。
こんな生き地獄は嫌だよ。俺の眼の前には彼そっくな男がいて、でも彼じゃなくて。

「もう、嫌だよ…」

膝から崩れ落ちた。なんでこうなったんだろう。きっと日ごろの行いが悪いせいだな。
ああ、ごめん。ごめんねシズちゃん。もっと優しくしてあげればよかった。
そうしたら、きっと俺はこんな目に合わなかっただろう。

「津軽、津軽、…」

「はい、マスター」

「…ごめん、ね」

「どうして謝るんだ…?」

君を通して違う人間を想っている事を許して。俺にはもう、何もかも遅すぎたんだ。
暖かくも冷たい津軽の身体を抱き締める。シズちゃんの事も抱き締めたらきっとこんな感じだったんだろうな。
すると津軽が何か思いついたように懐を探り始める。
何だろうと思っていると津軽が取りだしたのは、華だった。

「夢の中で俺と同じ顔をした男が、コレをマスターに渡してくれって…」

その花の名前は何なのかは分からない。調べたら花言葉とかも分かるかもしれないけれど。
そうしたらきっともっと虚しくなる。夢の中でシズちゃんに会ったらしい津軽。
いいな。羨ましい。やっぱり君達はどこかで繋がってるんだね。
ねぇ、シズちゃん。俺にも逢いに来てよ。

「ありがとう、津軽」



その花は不思議な事に俺が死ぬまで枯れる事は一度もなかった。

――――――
久々のDRRR更新がまさかの軽い死ネタっていうね…。
そしてまさかの臨津。
死ネタ好きなんだけど書こうとすると何を間違ったのかバットエンドになるんだよな…。
あ、死ネタって結局バットエンドか…。

『Aコース』様よりお題をお借りしました。

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