裏切りのレクイエム悲しみのラプソディの続き


ok?↓




目の前が絶望で染まろうとも、決して俺は輝く光を見失わないと誓おう。

パチリ、と目を覚ます。自分の部屋でない事はすぐ分かった。
薄暗いトタンの天井。冷たい床。ゆっくりと身体を起こし辺りを見回す。
ああ、こんな生活ももう何日目だろう。一向にウロボロスの情報は掴めない。
虎徹は拳を力強く握る。今の仲間を裏切って昔の仲間の元へ還ったはいいが、それから何も進展はない。
情報が何一つとしてないのだ。
幼い頃ウロボロスという組織に関わってはいたが、それもほんの数日だけだ。
それでは詳細など分かる訳もないし、昔の仲間もそれ程詳しい訳ではないらしい。

「ウロボロスには入っているが、ボスの存在やましてや他にどれだけの人間がいるかなんて、そんなの知る訳ねェだろ」

ジェイクが言うには、ウロボロスという大きな組織の中でも自分は実行犯という立場にあるらしい。
命令を下す人間とそれらを実行する人間。
しかしジェイクはそういった命令などは聞いた事はなく、好きに暴れているのだとか。

「俺はNEXTだけの楽園を創る。誰も虐げられない俺達の世界を。その為に神はこの力を与えるべき人間に与えたんだろう?」

与えられる資格があるから、神はこの力を授けた。ジェイクはそう言う。
昔はそのジェイクの理想郷に憧れもした。しかし、今は違う。
確かにNEXTという存在は差別されているかもしれない。だからと言って更にその差を広げてどうする。
俺達は人間なんだから手を取り合って生きていけるはずだ。虎徹はそう思う。

「よォ、よーやく起きたのか」

「…俺、どれだけ寝てた?」

「あー、ざっと一日って所か?」

一日。そんなに寝ていたのだろうか。虎徹はウロボロスの事を調べる為に苦手なパソコンを使って必死に情報を探していた。
そう言えばバーナビーもこうやって二十年ウロボロスの事を調べていたんだっけ。
あの優等生なバーナビーが調べても出てこなかった情報が自分に見つかるわけがない。
何を馬鹿な事をやっているんだと落ち込む。

「おい虎徹」

「…なんだよ」

「俺ァもうこの街から出るぞ。こんな街にいつまでも居てまたヒーロー共に捕まるなんで御免だしな」

お前も来い、とジェイクは手を差し出す。この街を出る。
それは即ちバーナビーの両親殺しの犯人が分からないまま、という事だ。

「ま、待ってくれ!あと、あと少しだけ…っ」

「…ったく、しょうがねェなァ…。なら、俺へのご機嫌取り、してくれるよなァ?」

彼の命令は絶対。拒否ろうにも、無意識に身体が反応してしまう。
ああ、本当に昔の自分をぶん殴りたい。



「はぁ、はぁ……」

散々ジェイクに遊ばれた後、虎徹は食料を調達しようと街の中にいた。
身体がまだダルイが、気分転換も兼ねて外へ出たのだ。
正体がバレないよう、フード付きの羽織をし、マスクをして出来るだけ変装をした。
普段ならこんな事をしなくてもこの街を歩けたのに。
悔しい思いを抱えながら虎徹は歩く。そんな時、近くにあった銀行で爆発があった。
銀行強盗だろう。助けなければ。そう思い身体が自然に動き出していた。
声を上げ市民を助ける。正体がバレやしないか不安だったもの、幸いな事に皆逃げるので必死だ。

「キャアっ!」

「…!!」

逃げる時に転んだであろう少女に、強盗グループの男が銃を向ける。
虎徹は咄嗟に能力を使い男を殴り倒し少女を救出した。

「あ、ありがとう…」

「いいんだって。それより、早くママの所へ…」

そう顔を上げた目線の先に虎徹の良く知る人物が居た。
そうだ。あの人なら何か知っているかもしれない。こんな裏組織に戻ってしまったような人間の言葉など聞いてくれないかもしれないけれど、イチかバチかだ。
残り数秒の能力を使いそのある人の元へ駆ける。

「っま、マーベリック、さん…!」

出来るだけ抑えてその人の名前を呼ぶと名を呼ばれた男は振り返った。

「君は…」

「あの、少しだけ、俺の話聞いて貰ってもいいですかっ」

そう裏路地の方向を差しながら言うとマーベリックと呼ばれた男は少し考えた後頷いた。
人通りが少ない裏路地。虎徹はフードを取りマスクを外した。

「やはり鏑木くんだったのか。一体どうしたんだね。あの事件以降姿を見せないし、もう殺されてしまったものかと思っていたよ」

「そんな縁起でもない事言わないでください。あの、いきなりで申し訳ないんですけど…」

マーベリックは以前虎徹がヒーローだった時に努めていた会社の社長だった。
そしてバーナビーの育ての親でもある。この人なら何か知っているかもしれない。虎徹はそう思ったのだ。
虎徹は早速バーナビーの事、ウロボロスの事をマーベリックに質問をしてみた。

「バニーが言うには右手の甲にウロボロスのマークがあるって言うんですが、でもジェイクにはそんなマーク無いんですよ」

「そのマークを消した、なんて事はあるのではないかね?」

「それは、ありえません。一度そのタトゥーを彫ったって事はもう組織の人間になったって事ですから…」

「…なんだか、含みのある言い方をするんだね」

「…俺も、そうですから」

ズキ、と内腿にあるマークが疼く。過去にしようと思っていたのに、出来ないこの印。
お前は逃げられないんだ、という戒めを込めた言わばこの印は鎖なのだ。

「君は、…ウロボロスの人間なのかね…?」

「一応。子供の頃に…少しだけ。タトゥーもまだ残ってます」

「…………」

そう言うとマーベリックは黙ってしまった。何かこれで分かるだろうか。
早くバーナビーをこの苦しみから解放してあげたいのに。
そうしたらこの身体なんていくらボロボロになろうが構わないのに。
親友や一人娘には迷惑をかけてしまうかもしれないけれど、彼を救ってやりたいと思うのもまた事実なのだ。
するとマーベリックは突然電話を掛け始めた。

「ああ、アニエスくんかね。今私の目の前にウロボロスという犯罪組織に関わっている人間がいるんだ。早くヒーローを寄越してくれないか」

「っえ…!?マ、マーベリックさん!?」

「…君は、知らなくて良い事を知ってしまったようだね」

「え、そ、れは…どういう…」

「オイ、クソ虎徹!テメェ帰ってくんのが遅ェんだよ!!…あ?誰だこのジジイ」

ジェイクがやってくると同時に虎徹達の目の前にストンと赤いヒーロースーツを纏った男が舞い降りた。

「大丈夫ですかマーベリックさん!?」

「ああ。大丈夫だ。ありがとうバーナビー」

「っ…おじさん、これはどういう事なんですか。なんで貴方がマーベリックさんを…、まさかっ」

「ち、違う!!俺は、ただ話を…っ!」

攻撃態勢に入るバーナビーを何とか宥めたいと思ったがこちらの話を聞く気はないようだった。
勘違いをさせてしまった。辛い。胸が苦しい。こんなはずじゃなかったのに。

「…ハァーン?なーるほど…、おい虎徹、戻るぞ」

「ま、待ってくれっ、話を、まだ…!!」

「んな事言ってる場合か!他の連中が来ちまうだろうが、よ!!」

ジェイクは能力を発動させパチンと指を鳴らしバリアを地面へと放ち目くらましをさせる。
その隙に虎徹達は姿を暗ました。大慌てで隠れ家へ戻ると虎徹は硬い床へドンッと拳を叩きつける。
何か、何か聞き出せそうだった。マーベリックは何か知っているようだった。
もっと、もっと話を聞けたら…。彼が一瞬見せた憎しみの瞳が頭にこびり付く。
ああ、もう二度と口を聞いてもらえないかもしれない。
そう思ったら急に息が出来なくなった。辛い、苦しい。ただ彼を助けてあげたいだけなのに。

(なんでこんな、……っ)



心がギシギシ痛むのは、この想いが恋にも似た感情だからなのかな

――――――
光夜様、リクエストありがとうございました!!
悲しみのラプソディの続き、という事で…。
あれ…まだ完結して、ない…(汗
少しは話に進展があったかな、と思い、ます!!
宜しければまた続きのリクエストをして頂けたら、書きます!
私もまだこの話は不完全燃焼なので、続きを書こうかな、と思っております!

完成が遅くなってしまい申し訳ありません><
リクエストありがとうございました!!




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