それはまだ、彼がシュテルンビルトへやってくる前の話。
彼の人生の中で一番屈辱的で、一番忘れられない快楽だった。

その日は友人達に誘われて街で一番有名なカジノへと遊びに出かけていた。
ヒーローが朝からカジノで遊んでいる、なんて世間一般的には許されないだろう。
しかも彼は顔を出しているヒーローなのだ。
だが彼は特別だった。昔から遊人なのはもう既に知られていた為彼の行動には皆目を瞑っていた。

「っしゃー!まーた俺様の勝ち〜」

「っちぇ、ライアン強すぎだって」

「今日の俺様超ついてんなぁ〜!このまま俺の一人勝ちかー?」

ケラケラと笑うライアンに、友人達は苦虫を潰したよな顔をした。
ガヤガヤと賑やかなガジノ。ライアンは周りを見渡して今度はどれに挑もうか、と考える。
今日は思ってもいないほどチップを稼げた。このまま引き上げてもいいが、それだと癪に障る。
自分はゴールデン・ライアン。もっともっと上を目指せるはず。
ライアンは獲物を探す肉食獣のように目を鋭く光らせ、ペロリと舌舐めずりをする。
するとそんな時、ライアンに声をかけてくる友人の一人であるギルバート。

「お疲れ、ライアーン。はい、コーヒー。あれ、お前コーヒーで良かったっけ?」

「なんでもいいって。今の俺様超ついてっから!」

「だなー!今日のライアンすっげぇのな!あとでなんか奢ってくれよー」

「は?お前らは自分で稼げってーの」

ギルバートから渡されたコーヒーをグッと喉の奥へ流し込むと、ライアンはすぐ側で行われているルーレットへと向かった。
さて何番に賭けようかな、と思っていると数人の黒い服を着た男に声をかけられる。

「…なに?」

「オーナーがお呼びです。是非貴方様をVIP室へ案内したい、と」

「オーナぁー?」

ライアンは少し怪しいと思いながらも、警戒をしていれば大丈夫だろうとニコリと笑って黒服の男の後へ続いた。
少し入り組んだ廊下を歩く。随分奥まで来るものだと思ったがVIPだしそんなものなのだろうと思うことにする。
暫くして、大きな扉の前までやって来た。そこに入るように言われ、中に入ると部屋は大きなベッドが一つ。
見慣れない物もいつくかある。なんだか可笑しい。
ライアンは元来た道を引き返そうとしたが、直後にガチャンと鍵の締められる音。
しかしライアンのNEXT能力は自分を中心とした重力増幅。
こんな鍵を掛けられた所で重力を増幅させ扉を破壊してしまえばどうと言う事はない。
そのはずだったのだが、急に音もなく現れた数人の男達に両腕を後ろ手に押さえつけられ床へと倒される。

「っぐ…!」

ライアンは能力を使う場合、両手が地面に接していなければ発動出来ない。
押さえつけられていた腕をロープのような物で縛られ、転がされる。
なんとか身体を起こそうとするのだが、思うように動かない。そういえば頭もなんだが重いような気がする。
グラグラと揺れる視界の先に誰かが現れた。

「やぁ、ゴールデン・ライアン」

「って、めぇ…俺様が誰だか分かって…っ」

「ああ、分かっているとも。それに、君の友人達には悪い事をしたよ」

「なに…っ!?」

男の話によると、ライアンの友人達はこの男に金で買われ、ライアンをカジノまで呼び寄せたらしい。
友人達は何食わぬ顔でライアンと娯楽を楽しみ、その後、薬入りの飲み物をライアンに渡せばそれで男からの依頼は終了との事。
そんな事になっていたなんて。友人達に申し訳ない事をしてしまったとライアンはギリっと歯ぎしりをした。
初めてみる男。この男はなにか恨みでもあって自分にこんな事をしたのだろうか。

「さて、そろそろもう良いかな。もう待ちきれないよ」

「はっ…?っちょ、おい!やめっ…!!」

自由に動かない身体を無理矢理立たされ、部屋の中に唯一あるベッドへ放り投げ出される。
受身をとる間も無く今度は履いていたズボンと下着を剥ぎ取られた。
驚いて後ろを振り返るも次は冷たいヌルリとした液体を下半身に掛けられる。

「うぁ!っひ、この…っ、もうやめッ」

「さぁ、次は指を入れるよ」

「はっ…!?い゛ッ!!ぁあ゛!!」

誰も触れたことがない場所に指を入れられる。気持ち悪い気持ち悪い。
吐きそうなぐらい気持ちが悪い。必死に声を押し殺していると、男の指がある一点を突いた瞬間、身体中にビリビリとした電流が走る。
驚いて目を見開く。なんだ、今のは。

「ああ、今のが前立腺だよ。気持ち良かっただろう?」

「ん、なわけっ、っぁ、ああっ、やっ、そこ、ばっかッ…!」

「嘘はダメだよ」

気持ちよくなんかなりたくないのに、身体が感じてしまう。
声を抑えたいのに、継続的に続く快楽に唾液が口から溢れ出てくる。

「君を始め見た時から、ずっとこうしたいと思っていたんだ」

「なんっ、ぅあッ!んぁ、っあ!」

男が好きな男なんているとは思っていたけれど、まさか自分が標的にされるなんて。
こんな屈辱的な事をされたのは初めてだ。悔しくて憎くて、今すぐこの男を捕まえたい。
しかし、徐々に感じ始めている快楽をもっともっと感じていたいと思う自分も居た。

「さて、そろそろ頃合かな。挿入るよ?」

「え、ぁっいれ、るって…」

「ココに、だよ」

男はトントンと軽くライアンの後孔を指で叩く。これから何をされるのかを想像してしまいライアンの身体はビクッと跳ねた。

「や、やめ…ッ」

「もしかして初めてかな?だとしたら私が初めてって事になるのか、嬉しい、ねっ」

「っひ!!あ゛ぁあー!!痛っ、いぃ゛!!っぐ、ん゛んんーッ!!」

凄まじい痛み。逃げようにも身体が自由に動かないのと、男が腰を掴んでいるせいで逃げられない。
痛みから逃れようと金色の髪がユラユラと揺れる。痛い。もの凄く痛い。とんでもない激痛だ。

「やめっ!うご、く、なァっ、!ぁあ゛、がっぁああ゛!」

「やっぱり初めてみたいだね?嬉しいなぁ!…でも一応飲み物にもこのローションにも媚薬は多少なりとも入れているのだけど…少なすぎたのかな」

「ぅああっ、いッ、ぐ…!んぁ!」

しかし、男のペニスが先ほど言われた前立腺を擦るとビリビリと身体に快楽の電流が走る。
痛いのに気持ちがいい。こんなのがまだ続くだなんて、頭がおかしくなってしまいそう。

「ほらっ、気持ちいいんだろう?」

「っは、ぁああっ、んぁっ、ひぎッ、ぃいい゛」

こんな無理矢理されて気持ちいいだなんて感じたくないのに、今まで感じた事のない刺激にライアンは狂いそうだった。

(やっべぇ…、超っ気持ちいい、じゃねぇか、よっ…っ)

混ぜてあったという薬の影響もあるのかもしれないけれど、生まれて初めての快感に溺れてしまいそう。
打ち付けてくる男の腰に合わせて自分も合わせて小さく動き始める。
男はライアンのペニスを掴むと腰の動きに合わせて扱き始めた。
何も考えられなくなるほどの快楽。助けてくれ。気が狂いそうだ。

「っさぁ、中に出すよ…?」

「は、っはぁあ、も、なんでも、いぃ…からっ、早くッ、くれよ…っ!俺も…イ、くッ…」

「…ッ…、は、」

「ぅあッ、イく、イっぁッ、ァあああー…、あ゛、あァ…」

暖かいヌルリとした物を身体の中で感じながら、ライアンも男の手のひらに白濁を吐き出した。
チュポと音を立てて男のモノが引き抜かれた。すると同時に襲いかかってきた脱力感。
ダメだ。このまま気を失ってしまいそう。

「今日はこのままココで眠るといい。もし君が望むのなら、私はいつでもココに居るから待っているよ、ヒーロー」

「……………」

男の言葉をぼんやりと聞きながらライアンは目を閉じた。
もう一度。もう一度だけあの快楽を味わってみたいと思いながら。



そうしてのめり込んでいく事に気づかないまま、彼はまた扉を開く

――――――
アンケのリクで頂きました『俺様なライアンを無理矢理…!なモブ獅子』です!
モブ獅子美味しいですリクエストありがとうございました!!
大富豪×獅子とかもイイ…。
コンチネンタルエリアで活躍してた時は枕営業とかあったのかなライアンちゃん…。

『最果てを棄てに』様よりお題をお借りしました。


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