出来る新人。若くて、自信に満ち溢れている。そのくせハンサム。
誰もが好きになるであろう男。それが俺のパートナー。
自慢でもあるし、だけど嫉妬の対象でもある。
仕事上のパートナーだけど、俺はいつもアイツの引き立て役。
今は別にそれでもいいと思っている。俺のサポートのお陰でアイツが目立てるのならそれでもいい。
だから、アイツは笑って輝いていればいい。

そう思っていたはずだったのに。

最近は、アイツから目が離せない。私生活を心配するのはいつもの事だったのだが。
それ以上の事も考えるようになってしまった。
パシャパシャとカメラのシャッター音が鳴る。俺の目の前ではアイツ、バーナビーが雑誌の表紙を飾るとかでその撮影をしている。
俺は別に居なくてもいいんだが、とりあえず一応付いて行こうと思い此処にいる。
ああ、本当にカッコいい。男の俺がそう思うんだから、女なんて即好きになるだろう。
ジェイクを倒してからは本当に笑うようになった。
俺の事も『おじさん』ではなく『虎徹さん』と呼ぶようになったし…。
名前で呼ばれるのがこんなにも嬉しいモノなのかと思うほど嬉しかった。
互いの家も行き来するようにもなり、大分打ち解けてきたとは思う。
だけれど一方俺は、友達以上、パートナー以上の気持ちを彼に持つようになってしまった。
つまりは、そう。俺はバニーが好きだ。仕事の相棒を、恋愛感情で好きになってしまったのだ。

(…これ、マズイよなぁ……)

こんな事、あってはならない事だ。パートナー、しかも男。自分は一度結婚もしていて子供もいる。
そんな男が、新人の若くて有能なイケメンを好きになるなんて可笑しな事。
頭では理解しているのに、心はそうはいかないらしい。
カメラに向かって笑顔で微笑みかけるバーナビー。あの笑った顔が好き。好きと自覚してからは彼が載っている雑誌は全て買うようになった。
今の所、パートナーの事を知る為となんとか誤魔化しているが、それもいつバレるか分からない。
この気持ちをもし彼が知ってしまったら、嫌われるのは確実だ。
今までのように接してもらえないのは目に見えている。
出会った頃なんて嫌われているようなモノだったのに、好きだと自覚した今、嫌われてしまえばきっと立ち直れない。

(…女子か俺は…)

ああ、と頭を抱える。どうにかしてこの気持ちを無くさなければならないのに、無くす方法が分からない。
こんな事初めてでどうしたらいいのか分からない。相手が女であればこんな事思わないで済んだのかもしれないけど。
はぁ、と机に伏せる。いつか彼は可愛い綺麗な彼女を作って幸せな家庭を築く。
そこに俺は居ない。いつか訪れるであろう未来に、足が竦む。
そこには俺の居場所はない。彼の隣に自分は居ないのだ。その真実が胸に深く突き刺さる。
恐らく相当自分の世界に入っていたからか、バニーが話しかけたのにも関わらず俺は全く気が付かなかった。

「虎徹さん、虎徹さんってば」

「うぉおッ!?ば、バニーか…脅かすなよ…」

「何度も呼んでるのに虎徹さんが気付かないから…、あの、次の取材なんですけど虎徹さんも一緒にどうかと思って」

「へっ?次の取材って…?」

「ただのインタビューですよ」

「いや…でもバニーへの取材なんだろ?俺が行っても…」

「僕が虎徹さんに一緒に居てもらいたいんです。駄目ですか?」

悲しそうにしゅんとした顔。一緒に居てもらいたい、なんて。勘違いしてしまいそう。
でも彼は相棒として俺を好きでいてくれているんだから、俺はそれに応えなければならない。
それ以上の感情で応えてはいけない。

「っい、いぃ、けど…」

「本当ですか!?ありがとうございます!嬉しいです…!」

あれよあれよという間に、記者が待つ部屋へと移動する。
椅子に座るや否やインタビュアーのバニーへの質問が始まる。
最初はやはりヒーロー関係の事。その次は相棒の俺の事。
俺の目の前で堂々とバニーは俺に対する思いを話し出す。
嬉しいけれど、複雑だ。バニーは俺の事、息の合うパートナーで、心の許せる友人の一人としか思っていないんだと再確認してしまう。
嗚呼、息苦しくなる。身体が震える。

「バーナビーさんは今付き合っている方って居るんですか?」

「いえ…いません。僕は今の仕事が楽しいので」

「誰か気になっている方とかはいないんですか?」

「気になっている人……そう、ですね、気になる人なら一人、います」

ドクン、と心臓が大きく脈打った。気になる人。バニーが好きな人。
それが、いる。途端に息が出来なくなった。
まるで世界に独り取り残されたような感覚。なんだろうこの絶望感は。
気分が悪くなる。ここに居ては駄目だ。泣いてしまいそう。

「わ、悪いバニー…、俺っちょっと部屋出るわ」

「え?こ、…タイガーさん?」

なにかバニーが言ったような気がするが、俺はそれどころではなかった。
どこか独りになる場所に行きたい。大きな声で泣き出したい。
まるで年頃の女の子のよう。情けない。大の大人がこんな事でみっともない。
ああ、そういえばこれが恋をするって事だったっけ。忘れかけてた胸の痛み。

「…くそ…っ、なんでっこんな…」

涙が溢れて止まらない。痛い。苦しい。叶わない恋が、こんなにも辛いだなんて。
死んでしまいたくなるほど胸が締め付けられる。
誰かこの苦しみから解放してくれ。この恋を忘れる方法を教えて欲しい。

「苦しいよ、バニー…っ」

溢れだす涙に、言葉は誰にも響かず地に堕ちた。



こんな感情を持ってしまった自分が、殺してしまいたくなるほど憎らしい。

――――――
こんにちわ!またまたリクエストしてくださってありがとうございます!
いやぁ…少しでも楽しんでいただけているのなら幸いです^^

虎の片思い、という事で…とりあえず虎の一方通行な話にしてみました!
実は兎→虎だったりもするのですが、それはまた別の話になりそうだったので一端打ち切ってみました。
ご要望があれば今度は兎→虎視点の話も書こうと思います!

この度はリクエストありがとうございました!!

『たとえば僕が』様よりお題をお借りしました。




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -