ボクは、人間が嫌いだ。
だからボクは、ボクの創造主の事が大嫌いだ。
人間じゃないアンドロイドの彼らは好きだ。
ボクの隣にいる同じ電子の彼も好きだ。
でも彼は人間の、同じ顔をしている男が好きなんだとか。
ボクには良く分からない。人間なんかのどこがいい。

「つきちゃん、ボクはね、人間が嫌いなんだよ」

「…それは、イザヤさんの事?」

「アイツの事もそうだし、他の人間も皆嫌いだよ」

ボクの創造主は人間を愛しているらしいけれど、ボクは逆だ。
あんなめんどくさい奴らのどこが好きなんだか。
同じ顔をしていても、考えは違うらしい。それはボクが人間じゃないからだろうか。

「じ、じゃあ…シ、シズオさんの事も、嫌いなの…?」

「しずちゃんはねぇ…まぁ、好きじゃないけど嫌いじゃないよ」

それは別につきちゃんと同じ顔をしているからとか、そういう事じゃない。
人間離れした能力とか、ちょっとぽやぽやしている所は好きだ。
だけど、やはりどこかで彼は人間なんだと認識している自分がいるからか、彼自身の事は好きにはなれない。
つきちゃんはあからさまにシュンとしたけれど、ボクは本音を言ったまでだ。
つきちゃんは見た目がしずちゃんだから恐らくは彼をモデルにして創られたんだろうけど。
まったくもってしずちゃんとは似ても似つかない。
あと二人同じ顔の男がいるが、彼らも彼らでオリジナルには似ていない。
それはボクらにも言える事なんだけれども。

「でもね、ボクはつきちゃんの事は好きだよ」

「…それは、人間じゃないから…?」

「ううん。そういう事じゃないんだよね…。なんだろう、つきちゃんだけは特別なんだよ」

「とくべつ…」

人間じゃないアンドロイドの彼らも勿論好きだ。でもつきちゃんは別。
この気持ちはなんていうのだろう。弟と思う兄の気持ちでもあるし、友人を思う気持ちでもある。
でも他の気持ちもある。この気持ちがなんなのかが分からない。
調べれば分かる事なんだろうけど…なんだか見つけてはいけないような気がする。
電子のボクらが妙な感覚を覚えてしまえば、いろいろ支障を出してしまう。
だからまだ、この気持ちは胸の奥へしまって置く。

「じ、自分も…六臂の事、好きです…!」

「つきちゃん…」

「ぉ、お兄ちゃんっ、みたいで…!」

「…お兄ちゃん……」

なんだか拍子抜けしてしまった。顔を真っ赤にしてワナワナしているつきちゃんの頭を撫でる。
くしゃくしゃと撫でまわしてやれば、つきちゃんは恥ずかしそうにそっぽを向いた。
可愛いなぁ。

「つきちゃんはボクの事お兄ちゃんみたいだと思ってたの?」

「はい…!なんでも知ってるし、いろいろ教えてくれるから…!」

「ふぅーん…」

でもそれはそれで悪くないかもしれない。瞳を輝かせてつきちゃんはボクを見る。
ま、暫くはこのままでもいいかな。ボクもこの気持ちがなんなのか、まだ知りたくないし。
人間のようになってしまうなんて、まっぴらごめんだ。



(じゃあつきちゃん、次はアイツの秘蔵ファイルでも覗いてみようか。多分しずちゃんばっかりだと思うし)
(わっ、シ、シズオさんが…いっぱい…!?)
(うわぁあ!六臂!?やめてよ勝手に人のファイル覗くの!)
(そっちだってこれ盗撮したやつでしょ…人の事言えないじゃないか)

―――――
六月!
六臂は臨也と違って人間が嫌い(特に臨也)
静雄は曖昧な感じ。人間だけど、人間じゃないヒトだと思っている。
月島はそういうのは分からない鈍感な子。




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