好きです、好きなんです。ここ最近熱烈な告白を受けるようになった。
それも一人の男から。虎徹は困っていた。
好きだ、という好意は嬉しい。素直に嬉しいのだが。
問題は相手が男で、仕事上のパートナーである事だった。
どうしたものかと日々考える。

今だって、淡々とパソコンに向かって作業する彼は、どうみても男好きには見えない。
綺麗な顔立ちをして、女の子にモテそうなのに。
最初は普通に食事をしている最中に好きです、と言われた。
ライクの方の好きだ、と思った虎徹は素直にお礼を言ったのだが。
彼、バーナビーはライクの方ではなく、ラブの方だとすぐさま訂正をした。
最初は理解できなかった虎徹だが、時間が経つにつれバーナビーのその告白がどれだけ大きいものか分かるようになった。
からかっているのだと思っていたのだが、バーナビーは本気らしい。
そういえば、ジェイクを倒した後からバーナビーは少し変わったようには思っていたのだが。
出会った頃とは相当変わったと思う。

(ちょっと大きな息子みたいだと思ってたんだけどな…)

最初の頃の鋭い嫌悪の眼差しではなく、今や優しい愛でるような眼差しをしている。
最近ではボディタッチは頻繁にしてくるようになった。
手を繋ごうとしたり、抱きついて来たり。嫌ではないのだが、複雑な心境だ。

『虎徹さんも、僕の事好きですよね?』

ある時、バーナビーは言った。虎徹はもちろん驚いたし、どこからそんな自信が湧いてくるのは全く理解出来なかった。
好きだとは思う。それはラブなのかライクなのかまだ良く分からない。
その感情がラブだったとしても、今まで軽くあしらっている手前、今更素直になるのもなんだか悔しい。
どうしたものか、と虎徹は悩む。
目の前にある並列に並ぶパソコンの文字。こんな事をしている場合ではないような気がするのだが。
自分の気持ちが分からない。苦しいし、痛い。
なんだかまるで恋する乙女のよう。いい歳して、こんな事で悩むなんて。知恵熱でも出そうだ。

「…、て、…さ……虎徹さん!!」

「ぅわあ!えっ、え…何!?どうしたバニー!?」

「さっきから呼んでるのに虎徹さんが全く反応しないから…どうかしたんですか?」

「え?い、いや…別に…」

「そうですか…、あ、それでこの書類なんですけど…」

二人しかいないオフィスに響く声。
綺麗な顔。白い肌。エメラルドグリーンの吸い込まれそうな瞳。
長く細い、だけど男らしい手。どうしよう、ドキドキしてしまう。
彼がこんなに近くにいる事が恥ずかしい。じっと見つめていたのだろう。
ふとバーナビーと視線が合う。ドキっとしてあたふたと視線が泳ぐ。
変に思われてしまっただろうか。バーナビーは鋭いから気付かれてしまっているかもしれない。

「…虎徹さん」

「ん!?…な、なんだ…?」

「好きです」

「なっ、ぇ……と、突然なんだよ…」

「いえ…、なんだか虎徹さんが言って欲しそうな顔をしていたので…」

「どんな顔してたんだよ俺…」

欲求不満のような表情でもしていたのだろうか。ああ、とうとう自分の気持ちまで騙せなくなってきている。
好きだ好きだと言われ続けていた相手にまさかこちらがこんなにも夢中になってしまうなんて。

「…好きですよ、本当に」

「――…うん……」

「嘘じゃないです。僕は、本気ですから」

「……うん……」

嘘じゃない事なのは分かっている。彼は冗談でこんな事言うはずがない。
分かってる。知っているよ。ちゃんと想いは届いている。
ねぇ、その言葉に応えてもいいのかな。今からでも遅くはないのかな。
こんな自分でも、いいのかな。

「――……、れも…」

「ん…?」

「…ぉ、お、れも……好き、だ…」

彼の未来を潰してしまうような気がしていた。だから身を引いて応えを出せないでいた。
でも自分の気持ちには嘘は吐けない。ほんの一瞬だけでもいいから、同じ時を歩んで行きたい。
決しの想いは届いたのだろうか。そっと伸ばされる腕に抱きしめらた。
彼の心臓の音が凄く近くで感じられる。心臓の音ってこんなに煩かったのか。

「…冗談なんかじゃないですよね…?」

「冗談でこんな事…言う訳ないだろ…」

「嬉しい…」

「…返事、遅くなってごめんな」

いいえ、とバーナビーは頭を振る。誰もいないオフィスで二人で抱き合う。
どこかで自分は幸せにはなってはいけないんだと思い込んでいた。
最愛の妻は忘れられないけれど、もう一度だけ、ほんの少しの間だけ、幸せに浸ってもいいかな。

(――…なぁ、友恵……?)



天国にいる彼女は、笑って許してくれるかな

――――――
アンケでリクエストしてくださったアスカ様、ありがとうございました!
遅くなってしまってすみません…。
なんでこんなドシリアスになったんだろう…不思議。
最初考えてたのはこんなドシリアスな話ではなかったのだが…あれ…?
しかしバニーは会話する度に好きって言ってそうだ。





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