一回り年上の、ドジでマヌケなどうしようもないおじさんとコンビを組んだ。
それは自分の目的を果たす上で仕方のない事だった。
どうしてこんな男を組まないといけないのか。一人だってやっていけるのに。
だけれど目立つには、ヒーロー界初のコンビとして番組で活躍しなければならない。
あんな人ほっといて自分一人でやればいい。足を引っ張るおじさんなんて気になんかしていない。
そう思っていたはずなのに。

「っだ!あーもー、デスクワークは苦手なんだよなぁ…」

「煩いですよ、おじさん。少し黙ってくれませんか」

「ぐっ、ぬぬぬ…」

眉間に皺を寄せて渋そうな表情をしている虎徹とは違って、バーナビーは静かに淡々と作業をこなしていく。
数分すると、社内にお昼休憩を知らせるベルが鳴り響く。
バーナビーは昼を食べようと席を立ちあがるが、虎徹は動かない。
よく見ると寝ている。作業中途中で飽きて寝始めたのだろう。
本当にどうしようもないおじさんだな、と思いつつバーナビーは誰もいない屋上で小さなパンを食べ始めた。

昼休憩の終わりを告げるベルが鳴り、バーナビーがオフィスに戻ると。
虎徹はまだ伏せて寝ているようだった。少しむっとしてバーナビーは虎徹を起こそうと肩に手を掛ける。
ぐっと肩を押し、声を掛けようとした。

「…え……」

泣いていた。伏せられた瞳から綺麗な涙が零れ落ちていた。
ぎょっとして、思わず彼に触れていた手をバっと自分の元へ戻す。すると寝ていた彼の口元がモゴモゴと動き。

「…と、もえ……」

「……ともえ…?」

誰だろう、それは。ふと目に入る左手の薬指。あれは結婚指輪だ。
もしかして、彼の奥さんだろうか。

(…結婚、してたのか……)

そう理解した途端、胸にチクリとした痛み。なんだ、これは。
チクチクと小さな針で刺されるような痛み。痛い、苦しい。
キラリと光る指輪が、お前では無理だ、と言っているような気がして憎たらしい。
お前では勝てない。彼は私の物なんだ。なんだかそう言われているような気がしてならない。
なんでこんな事を思わなくちゃいけないんだ。関係ないのに。
彼の事なんて、何とも思っていない。関係ないはずなのに。

(…痛い……)

胸に刺さる痛みを和らげようと、バーナビーは思い切り虎徹の身体を揺り動かした。

「ちょっとおじさん、いつまで寝てるんですか。とっくに休憩時間終わってますよ!」

「ふぇ?…え、え!?俺いつの間に寝てた!?」

「さぁ…」

「うっわ、どうしよう!昼食べてない…」

「ちょっと食べて来たらどうですか?その分少し僕がやっておきますよ」

「マジで?五分で食ってくるから!あっ、このお礼はまた今度するな!」

「ありがとうバニーちゃん!!」と、虎徹は慌てて休憩室へと駆けて行った。
バーナビーも、なぜ自分があんな事を言ったのか自分で自分が理解出来ずに悶々と考えていた。
彼の分までやっておく、なんて。絶対に言わなかったはずなのに。
どうかしてる。

「…まったく、僕はバニーちゃんじゃなくて、バーナビーですよ」



小さくぽつりと呟いた訂正の言葉とは裏腹に、バーナビーはふんわりと笑っていた。

――――――
映画見たら友恵さんに嫉妬しちゃうバニちゃんが書きたくなった。
まだツンバニの頃で自分の想いに気付いてないからなんなんだこの気持ちは…と、悶々としちゃうバニ…。
いいな…。






「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -