小生意気な相棒とコンビを組んで早一か月。
まだまだ生意気で可愛げのない相棒。
そんな彼が熱を出したのはある大雨が降った次の日だった。
上司のロイズから連絡があり、お見舞いに行けとの事。
なんで俺が…、そうは思いつつも虎徹はゆっくりと確実にバーナビーの家に近づいていく。

「おーい、バニーちゃーん!見舞いに来てやったぞぉー」

無反応。悪いとは思いつつもドアノブを捻る。すると扉は簡単に開いた。
小さく断りを入れて、部屋の中に入る。
初めて入る彼の部屋はあまりにも小ざっぱりし過ぎていて、ここに本当に人が住んでいるのかと疑いたくなるほど何もなかった。

「バニー?バニーちゃーん?…あー、バーナビーさー…」

「…っるさいな…そう何度も呼ばなくても聞こえてますよ」

「お、いたいた!具合はどうだ?」

「貴方が来たから余計酷くなりました」

はぁ、とバーナビーは溜息を吐く。いつも通りではあるけれど、顔が赤い。
色が白い彼の肌だからか、すぐに分かる。これは相当熱があるんだろう。
足取りもフラフラしているし、早めに寝かせて体力を戻さないといけない。

「バニー、薬飲んだか?一応買ってきたんだけどよ。あ、デザートも買ってきたからな」

「僕を子供扱いしないでください。余計なお世話ですからさっさと帰って下さいよ」

「いや、だってよ…」

「大方、ロイズさんに言われてやってきたんでしょう?…本当、そういうの迷惑なんで止めて下さい」

思わず虎徹は黙ってしまう。本当に彼は他人と関わる事が嫌なんだなと思う。
でもそれじゃあこれからどうやってコンビとしてやっていけばいいんだ。
困った問題である。

「バニー、なのな。風邪引いてフラフラしてんだから、ここは元気な俺に任せてお前は寝てろって」

「薬だけくれれば大人しく寝てますよ僕は」

「飯はどうすんだよ」

「適当に食べますから大丈夫です」

「適当ってお前なぁ……あ、なんなら俺何か作ってやるよ。炒飯でいいよな?」

虎徹がそう言えば、心底嫌そうにバーナビーは虎徹を睨み付ける。あ、これはマズかったか。
冗談だよ、冗談!!虎徹はそう笑って誤魔化したが、バーナビーは不満のようで機嫌が悪い。

「あっ!じゃあ部屋の掃除とか!」

「掃除はいつもしているので大丈夫です」

「ぐむむむ…じゃあ!」

「いいから。もう帰って下さい」

無理矢理部屋を追い出される虎徹。バダン!!と力強く扉を閉められる。
しゅん、と虎徹は扉の前に佇む。あんなに邪見にしなくてもいいのに。
ちょっとは心を開いてくれたっていいじゃないか。虎徹は不貞腐れて帰ろうとした。その瞬間。
部屋の中からバタリと倒れる音が聞こえた。虎徹は慌てて部屋の中に入る。
幸い鍵は掛けられてなくすぐに中に入れたが、そこには倒れているバーナビーの姿。
慌てて抱き起してベッドへと運び入れる。一度はお姫様抱っこをされた自分だが、
バーナビーをお姫様抱っこをする日がやってくるなんて思っていなかった。

(まぁ…これはこれでいいか)

一人で寝るには大きすぎるベッドにバーナビーを寝かせると、起きたバーナビーに煩く言われる前に部屋を出て行こうとする。
だが、くいっと服を引っ張られ、振り返るとバーナビーが小さく虎徹の服を握っていた。
無意識のうちに掴んでしまったのだろう。
寝顔は可愛いのに、どうしてあの口からは素直じゃない言葉が出てくるのか。

「おやすみ、バニーちゃん。早く元気になれよ」

虎徹はふっと笑うとバーナビーの頭を一回撫で、虎徹の服を掴んでいた手をゆっくりと離し、音を立てないように部屋を出た。
なんだか良い事をした気分になった虎徹は帰り道、鼻歌を歌いながら自宅へと帰宅した。



(なんだか昨日の記憶が曖昧で…おじさん僕の家に来ました?)
(おう、行ったぞ。お前風邪引いてフラフラだったもんなぁ…)
(…おじさんにお姫様抱っこをされたような気がするんですが…)
(んー、気のせいじゃねぇ?あははは)
(ちょっと…なんで笑うんですか)

――――――
ゲームやったらツンバニが書きたくなった。
ツンバニはツンバニで…イイ…ゴクリ。

『最果てを棄てに』様よりお題をお借りしました。





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