*死ネタ注意






彼が死んだという話を聞いたのはつい最近だ。
珍しく仕事で暫く東京から離れていた間の出来事だったらしい。
彼とは一応犬猿の仲でほぼ毎日殺し合っていたような仲だった。
互いに死んで欲しいと思っていたし、自分が手を下さずに死んでくれたのならこんな嬉しい事はない。
そうだ。嬉しい。嬉しいはずなのに。どうして心が痛いんだろう。

「…変なの。シズちゃんが死んで嬉しいはずなのに。死んでもシズちゃんは俺を苦しめるんだね。…ホント、大嫌いだよ君なんか」

顔見知りの友人や、高校の後輩たちは皆臨也が殺したのでは、と問いかける。
そんな訳ない。自分の手を汚すような事を自らする訳がないのだ。
そうなると誰かが静雄を殺してしまった事になる。
ナイフも銃も効かない男がどうやって。そう考えると少しの嫉妬心が芽生える。
シズちゃんを殺していいのは俺だけなのに。静雄もどうして死んでしまったの?
ああ、最後に会ったのは、いつだっけ。

『…臨也よぉ…お前、俺とこんな事して楽しいか?』

『楽しいというより、俺達の関係は互いに性欲処理をする、つまりはセフレって事だよ?求めるのは快楽だけでしょ?』

『俺はお前と友達になった覚えはねぇんだけどよ。っぁ…ばか、急に動くな…ッ!』

互いに性欲処理という形で繋がっていた二人。いつからなんて。最初に言い出したのは臨也だったような気がする。
気付いたら彼の口車に乗っていたように思う。静雄は当初、訳も分からず抱かれていた。
暫くすればこれがどういう行為で、相手が何を思っているのか分かるようになった。

『すっかりシズちゃんの中は俺の形になっちゃったね。女の子みたいだよ』

『っひ、ぁ…うっるせぇ…!は、っゃ…まッ…!ぁ、ぁあっ』

『シズちゃんの中、俺に絡み付いてきて離さないね。そんなに俺の、好き?』

『っく、ぁ…だ、まれッ…!』

『ふふ、怒った顔かーわいい!これからも仲良くしようね、シーズちゃんっ』

思えば、あれが彼に会った最後の日だったのかもしれない。
そう考えればあの時の彼は少しおかしかったかもしれない。ただの思い過ごしなんだろうけれど。
でも、考えてしまえばあの時彼は何を思っていたんだろう。何を思ってしんだんだろう。
静雄が死んだという話は当初は嘘だと思った。だけど調べれば調べる程彼の死は明らかになっていく。
死体は見つかっていないらしい。友人の新羅によればネブラが関係しているのでは、という。
どうしてそこに足を突っ込んだのか、と聞かれれば。優しい彼の事だから家族や友人を人質かなにかにされ、
仕方なく従ったのだろう。悔しい。悔しいね。
きっと彼は悔しかったに違いない。分かるよ、その気持ち。

(シズちゃんの気持ちが分かるなんてどうかしてるけど…。これだけは分かるよ)

ねぇ、君は何を思って死んじゃったの?聞きたい。聞きたいよ。教えてよ。
こんなに彼の事が気になるなんてどうかしてる。

いなくなってしまった彼。過ぎていく日々。
あれ、こんなにも毎日はつまらない物だったっけ?
愛している人間の観察も、つまらない。退屈だ。どうしてこうなってしまったんだろう。
足りない。何かが足りないのだ。今までの生活で絶対に必要じゃないと思っていたものが、もう日々の生活に欠かせないものになっていたなんて。
彼がいなくなったのなら、新しいセフレでも探せばいい。
いろんな女とやった。男ともやった。だけど、足りない。これじゃない。違う。違うんだ。

『…また明日も、これ…やんのか?』

『男の性欲舐めちゃいけないよシズちゃん。君は鈍いから感じないだけで俺はもう興奮したら…』

『もういい。黙れ。…じゃあ、また明日、か…』

『…?? どうしたのシズちゃん、いつになく真面目な顔して…』

『…なんでもねぇよ』

他愛ない会話が楽しかった。こんなに話をしたのは初めてかもしれない。
本当なら仲良く出来たかもしれないのに。

『じゃあな、臨也』

『うん、また明日』

明日なんてやって来なかったのに。次の日は仕事が入ってそのままシズちゃんとは会えないまま、今日になった。
あの時のさようならは、お別れのさようならだったの?なんとか言えよ。頼むから。

「…苦しいよ、シズちゃん」

君がいない世界にいる事が辛いよ。苦しいよ。ねぇ、この気持ちはなんて言うのかな。
恋?愛?愛と憎しみは紙一重っていうから、これは愛かな。
憎くて憎くて、愛しちゃったのかな。苦しい、苦しいよ。愛ってこんなに苦しいの?
もう、分からないよ。助けてよ、シズちゃん。

「君に会いに行けば、応えは見つかるかな」

でも君は分からないって渋い顔をするかもしれないね。
それでもいいよ。本当は君に会いたいだけだから。

「待たせてごめんね。今、会いに行くから」

吹き抜ける風を受けて、彼は高いビルの屋上から宙へ足を踏み出した。



遅ぇんだよノミ蟲野郎、と少し嬉しそうな声で怒る彼の声が聞こえた気がした。

――――――
お久しぶりです!この度はリクエストありがとうございます!
相互リンクもこちらこそ張っていただきありがとうございました^^

幸せな死ネタという事で…バッドエンドっぽいけどハッピーエンドみたいな感じにしたかったんですが…。
失敗しました^^;
静雄も冒頭で死んでラストで臨也も死んでしまったけど二人にとっては幸せ…みたいな…(ちょっとよく分からない
出来あがるのが遅くなってしまい申し訳ありませんでした…><

リクエストありがとうございました!!





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