ガヤガヤ。夜中なのにも関わらず、この池袋の街は明るい。
平和島静雄はそんな町並みをタバコを吸いつつ眺めていた。
今日は比較的気分が良かった。特に気分を害するような事は無かったし。
天気も良かった。ああ、そう言えば弟の幽にも偶然出会った。
撮影で池袋まで来たらしい。電話では声を聞いていたが、元気そうで良かった。
今日は、そういう日なのだと思っていた。そう、思っていたのだ。
自分の大嫌いな奴が現れるまでは。
「シズちゃん」
聞こえる聞こえる。耳障りな声が。耳を塞ぎたい。
今日も来たのか、神出鬼没なこの男。折原臨也。
静雄はこの男が大嫌いだ。顔を見るだけで苛々する。
「シズちゃん」
「黙れ」
「シズちゃん、タバコって身体に悪いんだよ?いい加減止めたら?」
「黙れノミ蟲」
「俺、ノミ蟲じゃないから黙らないよ」
「ちッ、………臨也、」
「何、シズちゃん」
名前を呼ぶだけで、こんなにも顔を綻ばせて笑う臨也。
静雄には分からなかった。この男が何を考えているのか。
変だと感じるようになったのはいつからだろう。高校時代の時?
いや、あの時はまだマシだった。普通ではないけれど、ちゃんと会話も成り立っていた。
(コイツは、変わっちまった)
変わってしまった。この男は。それはいつからかは分からない。
だけれど、変わってしまったのは事実。
「臨也、何しに来た」
「用がなきゃ来ちゃいけない訳?」
まぁ、強いて言うならシズちゃんに逢いに。
そう付け加えて微笑む臨也。何を、どう間違ったのか。
臨也は静雄に対して恋心を抱いていた。それに気付いたのはいつだろう。
もう覚えていないのかもしれない。しかし、確かにこの胸に抱くのは、愛。
人間全てに対して抱くのも、愛。だが、この胸にある愛は一人の男に対してのモノであった。
「シズちゃん、愛してるよ」
そんな臨也を静雄は不思議な気持ちで見つめていた。
臨也の言う愛は、決して心地よいものではないが、嫌ではない。
それは少なからず嬉しいという気持ちがあるからではないかと静雄は思う。
そんな事を思う自分も、自分に対して愛の言葉を呟く臨也も。
狂っていると、感じる。
「臨也、手前…狂ってる」
「はは。何言ってんの。シズちゃんも狂ってるじゃない」
人々が行き交う中、二人は揃って排気ガスに汚染された汚い空を見上げ、笑い上げた。
「狂ってる。」そんなのわかってる。でも君がこうさせたんだ。
狂ってる。そう呟く君も、俺も、みんなみんな、狂ってる。
……………………
おかしな二人を書いてみたかった。
が、見事に撃沈。難しいな…。
これ臨静か…?また一方的な愛をぶつける臨也さん。
『虚言症』様よりお題をお借りしました。