ガシャァン、と大きな破壊音が学校中に鳴り響く。
これはいつもの事。特に変わった事ではない。
岸谷新羅は窓からそっと外を眺めた。人が宙を舞い、サッカーゴールが地面に突き刺さる。
地獄の底から這い出たような怒りに満ちた怒鳴り声と、楽しそうにキャッキャと笑う悪魔のような笑い声。
新羅はまたか、と視線を元に戻した。帰りの準備をしながら、新羅は今日の夕飯はなんだろうなと一人考える。
♂♀
「待ちやがれ臨也ぁああああッ!!!」
「待てと言って待つヤツなんかいないよ、シーズちゃん!!」
静雄は放課後、知らない男達にいきなり襲われた。
ナイフで切り付けられ、パイプで殴られ。彼らは案の定臨也からの刺客だった訳だ。
それにブチ切れ、静雄はいつものように臨也を追いかけていた。
「てめぇ!また変な奴ら寄越しやがって!!」
「だってぇー…シズちゃんには早く死んでもらいたいし、俺自らが手を汚すのって…嫌じゃん?」
「だったらまずお前が死ね!!」
ゴォオン、と砂埃を上げ地面が盛り上がる。ニヤリと笑う臨也。
それを見てまた怒りのメーターが上がる静雄。
思わず掴んだパイプを臨也目掛けて投げつける。
だが臨也はそれを軽々避けると、今度は臨也自ら攻撃を仕掛けてきた。
ピッという音と共に静雄の来ていた制服が水平に綺麗に切られ、肌も切られる。
チクリとした痛みがしたと思うと、傷口から赤い血がじんわりと流れ出てきた。
静雄自身あまり痛みを感じない為、傷に関しては怒っていないのだが、
制服を切られた事によって臨也への怒りは増していく。
「いざやぁあああああああ!!!」
「あーあ、制服を切っただけでそんな怒らないでよ。本当、短気だよねぇ…」
臨也は静雄を馬鹿にしたように笑うと静雄に背を向け逃げ始めようとする。
だが、それは出来なかった。勢いよく静雄に腕を引かれ、思いっきり後ろへ倒れ込む。
何をするんだと臨也は言いたかったが、臨也は今まで居た場所に大きな木が倒れてきたのだ。
どうやら先程静雄が投げつけたパイプが木に突き刺さり、そのままゆっくりと倒れてきたらしい。
臨也は危うく木の下敷きになる処だったのだ。そう考えるとゾッとする。
「…おい、大丈夫か?」
「え?あ、ああ…うん、大丈、」
ふっと倒れた木から視線を戻すと目の前に切れた制服。
思わず上を見るとすぐ傍に静雄の顔。えっ、と言葉に詰まり、顔が真っ赤に染まる。
(わっ、わ、わぁあっ…)
なんでこんな顔が熱くなるんだろう。少し怪我をして汚れている静雄の姿を一瞬でもカッコいいと思ってしまった。
心臓がドキドキと高鳴る。なんでこんな気持ちになるんだろう。
「おい、本当に大丈夫か?怪我でもしたのか…?」
「へ!?だ、大丈夫だって!そ、それよりいつまで手握ってんのさ!」
「え?あっ悪ぃ!」
静雄は本来優しい性格だ。それを間近で感じだ臨也は、自身も感じた事のないような胸の高鳴りに驚いていた。
なんで握られていた手がこんなにも熱を持つのだろう。
(な、なんでシズちゃん相手にドキドキしなくちゃいけないんだよ…っ)
静雄も静雄で、己の手を握っては開いて、握っては開いてを繰り返し、不思議そうに自分の手を見つめていた。
黙っていれば静雄もカッコいい男なのだ。臨也もそれは分かっていたが、まさかこんな処で実感するなんて。
「…おい、臨也。どっか怪我したんなら新羅にでも診てもらえよ」
「…え?…」
「ほ、ほら…菌とか入って悪化したら大変だろ…」
「そ、そうだね!うん、そうするよ!」
なんでこんなギクシャクしているんだ?先程までの殺伐としていた喧嘩はなんだったのか。
変な雰囲気になる。互いにどうしたらいいのか分からなくなり無言なってしまう。
そんな時、友人である門田京平が声を掛ける。
「おい、何してんだ二人して…」
「あっ、ドタチン!助かった!」
「助かった…?おい、静雄?」
「……あ?あれ、門田…なんで居るんだ?」
「そりゃこっちのセリフだ。珍しくお前らが暴れてねぇから何事かと思ってよ…」
え、と臨也と静雄は互いに顔を合わせる。そして二人して顔を真っ赤にさせる。
門田は状況が読み込めず首を傾げる。口を開いたのは静雄が先だった。
「…あー…俺、帰るな…。臨也、その…気を付けてな」
「う、うん…あ、ありがと…」
「………??」
臨也は己の手をぎゅっと握り締める。これはもしかして恋?
どうしよう。恥ずかしくて、明日からどう顔を合わせればいいんだ。
今まで静雄に対してしてきた事を考えると、これは好きな子をいじめる男子のようじゃないか。
意識し始めるととんでもなく恥ずかしい。
(ああ、もう!こんな気持ちにさせて…どう責任とってくれるのさ、シズちゃん…)
君への想いは募るばかり
思い描くは君の事ばかりだよ
―――――
蘭様、リクエストありがとうございました!!
遅くなって申し訳ありません!
裏は苦手という事で、殺伐としてて静雄が攻める静臨というリクを承りました、が…。
静雄が攻めてない…無意識にちょっと手を握ってるぐらいじゃないかっ…。
臨也もただの乙女になってしまった…。
力不足ですみません><
この度はリクエストありがとうございました!!