今を輝くモデルの平和島静雄。弟の平和島幽、改め羽島幽平が先に俳優として名が売れていた事もあり、静雄はすぐに有名になった。
容姿も良く、背も高く、スタイルも良い。
弟の幽に頼まれ、静雄は幽がデザインしているブランドの宣伝として少しだけモデルをしただけだったのだが。
まさかこんな大事になるなどとは思っていなかった。

「え、ヌード…?」

「うん…。なんか、兄さん巷で凄い噂になってて…」

「なっ…まだ何も壊してねぇのに…俺の力の事、バレたのか?」

「いや、そうじゃなくて…イケメンな人がいるって。あの人は誰なんだ、とか…凄い聞かれるんだよ」

静雄には幼い頃から恐ろしい力を持っている。本人は好きでその力を手に入れた訳ではなく、静雄は出来るだけ力の事を知られないように周りに隠して今まで過ごしてきた。
だが、自身がそこまで言われているなんて知らなかった。
静雄から見ても弟の幽はカッコいい。だけどまさか自分もそんなふうに言われているなんて。
でもヌードなんて恥ずかしくて出来ない。幽ならば楽々とこなして見せるのだろうけど。
やはり慣れていない静雄にとっては羞恥でしかない。

「やっぱそういうのは…俺、苦手なんだよな…。もしかしたら恥ずかしくて暴れちまうかもしんねぇし…」

「やっぱりそうだよね。ごめん、無理言って…」

「えっ、あ…いや…」

どうしよう。幽が困っている。幽は芸能界でもとても有名で、彼の顔に泥を塗るような事は絶対にしたくない。
多少なりとも自分だって幽の役に立てる事ならなんでもしたい。

「で、でも…ヌードって言っても二、三枚だけだろ…?それなら…」

「そう?大丈夫?」

「お、おお…っ、なんとか耐えてみる…」

「無理しないでね。辛くなったらすぐ言って」

耐える、と言ったが果たして本当に耐えられるだろうか。
心配だ。控室に暗い面持ちのまま向かう。モデルをやっているのだからヌードの依頼も当然くるとは思っていた。
出来るだろうか。平然としていられるだろうか。幽は演じていればいい、なんて言うけれど。
そんな簡単に出来るものではない。はぁ、と溜息を吐いて自分の控室の扉を開けた。

「やぁ、シズちゃん。おかえり!撮影が長引いてたのかな?随分遅かったね」

なんでいるんだろう。静雄は黙って扉を閉めた。
まるで自分の控室のように優雅に寛いでいた。お茶を飲んでお菓子も食べていて。
彼は折原臨也。静雄の高校時代の友人、ではないが、一応知り合いである。
静雄は彼が嫌いであった。殺したいぐらい憎い相手なのだが。
臨也はそうは思っていないらしく、事あるごとにちょっかいを出してくる。
今回はなんなんだ、という事で静雄は意を決してもう一度扉を開けた。

「…何してんだよ臨也。つーかどっから入ったんだ。ここは関係者以外入れないはずだぞ」

「普通に通してくれたよ?それに俺はシズちゃんとの関係者でもあるじゃないか」

赫い目を細めてニヤリと笑う。

「今度は何なんだよ。俺とお前の昔の話でも引っ張りだそうってのか?それとも、俺の力の事をバラしに来たのか?」

「そんな事しに来る訳ないじゃないか。酷いなぁ…。俺はただシズちゃんの仕事場を見に来ただけだよ」

そんな訳ないだろうと静雄は思った。そんな理由でコイツが来るはずない。
高校時代は朝昼晩、一年中臨也と殺し合いのような喧嘩をしていた。
互いに憎み合っていたのだ。今更仲良くしようなんて可笑しいに決まっている。
高校を卒業してからも喧嘩は良くしていたが、今更何の用なのだろう。

「ね、シズちゃん今度はどんなモデルの仕事するの?俺実はシズちゃんが出てる雑誌、全部買ってるんだよね」

「…気色悪ぃな。なんで買ってんだよ…」

「だって、好きだから」

「………、次は…一応ヌードの仕事…」

好きだから、とはそれはどういう意味なんだろう。雑誌が好きなのか、それとも静雄が好きだから。
もしかしたら嫌がらせのつもりかもしれない。
静雄が言ったヌード、という単語に臨也の笑顔にピシリとヒビが入ったような気がした。

「ダメ」

「は?」

「その仕事、断って」

「な、なんでお前にそんな事言われなきゃなんねぇんだよ!」

マネージャーでもあるまいし。何を言っているんだこの男。
だって、と臨也は口をごもらせる。

「…シズちゃんの裸、他の人に見せたくない…から…」

「は…?」

「今まではカッコいい服着てたけど、でもヌードだと裸になるでしょ?なんか…嫌でさ…」

イマイチ状況が読み込めない。何を言っているんだろうこの男。
ヌードになってもらいたくないとは、どうしてそんな事を言うのだろう。

「好きな人の裸は、やっぱ他の人には見せたくないじゃん…」

「え…」

「俺はずっとシズちゃんの事好きで、ずっと見てきて、喧嘩とかしたけど、やっぱり好きでさ…」

恥ずかしい。こんな、こんな場所で何を大胆に告白なんかし始めたんだろう。
誰かが聞いているかもしれないのに。

「ちょ、ちょっと待て!お前…俺の事好きなのか?」

「もちろん。恋愛対象としてだよ?あ、俺は高校の初対面の時からずっと好きだったからね」

顔面蒼白。驚いた。臨也がそんなふうに思っていたなんて。
でも一番驚いたのは、臨也に告白されて、嫌だと思っていない自分が居た事に驚いた。
まさか、自分も臨也の事が好きなんだろうか。いや、そんははずはない…。

「…嫌いになった?」

「いや……、あ」

「そっか!良かったぁ…いや、なんかシズちゃんも俺の事好きだろうなって思ってた!」

「俺はまだ好きだなんて言ってねぇぞ、おい」

呆れた。静雄の事が好きだからあんなふうにちょっかいを出してきたのか。
これじゃあ好きな子に意地悪する男子そのものではないか。ストーカーにも近いかもしれないが。
案外子供っぽいんだな、と静雄は思った。

「……ったく、分かったよ。ヌードの仕事は断る。それでいいんだろ?」

「本当!?良かった…これでシズちゃんの裸は俺が最初に堪能できるね!」

「…は……?」

「抱く前にヌードなんか見ちゃうと萎えるでしょ?あ、俺がシズちゃんを抱いた後ならヌードの仕事はしてもいいよ!勿論雑誌は三冊以上は買うし、それで抱けない夜は抜くし…」

「………」

「イタタタッ!シズちゃん頭グリグリしないでよ、痛いって!あ、恥ずかしいのかな?もぉ可愛いなぁシズちゃんは!」

何を言っても無駄な気がする。弟に頼んでコイツは出禁にしてもらおう。
ヌードの仕事は断るが、決してコイツの為などではない。静雄はグッと臨也の頭を弄る腕に力を込めた。

姿

(あっ、これでシズちゃんと俺は恋人同士になったって事でいいのかな?)
(俺はお前と恋人同士になった覚えはない)
(恥ずかしがり屋さんだなぁ…照れなくていいのに。シズちゃん可愛い!)
(人の話を聞いてくれ…)

―――――
祥子様、リクエストありがとうございました!
芸能人パロ、という事で、静雄がヌードになるという事以外は臨也の事は書いてなかったので、
普通の一般人というか、いつもの情報屋さんのままになってしまったのですが…。
よろしかったでしょうか?期待に通りでなかったら申し訳ありません><

リクエストありがとうございました!!



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