こんなに苦しい事があるだろうか。静雄は揺れる視界の中で思う。
己の中にある強大な力。それは暴力となって静雄自身を脅かし、周りを傷付けてしまう。
そのせいで公共の物を壊してしまい、今の仕事の給料だけでは借金を返済出来ない。
どうしようと困っていると、まるで図ったかのようにヤツが現れた。
『シーズちゃぁーんっ、何かお困りのようだね?』
臨也はこの時を狙っていたのだ。静雄は、臨也の罠にまんまと陥れられてしまった。
静雄がその事に気づいたのは随分後の話だ。
「ね、何考えてんの?」
ぐちゅ、と中を掻きまわされた。静雄は小さくうめき声をあげる。
臨也の罠に嵌ってしまった静雄は、静雄の借金を肩代わりする代わりに自分の言う事を聞け、と臨也から話を持ち掛けられたのだ。
断れなかった。本当はこんなヤツの言う事なんか聞きたくもないはずなのに。
借金をこのまま積み重ねていく事も静雄には辛かった。それにこのままでは上司には迷惑を掛け、弟にも苦労をさせてしまう。
それだけはなんとしても避けたかった。
「…なんでも、…っねぇよ…!」
「ふぅん…?」
「ぁっ…!」
だったら、顔見知りの方がいんじゃないだろうか。でもコイツはどうしようもない卑怯で姑息で最低な人間だ。
ソイツの手を借りてしまっていいのだろうか。
静雄は迷った。頼りたくない。相手はこの世で最も嫌いで憎い相手なのだ。
「っひ、あが…ん、ぅ!」
「大方、どうしてこうなったんだろうって思ってたんでしょう?」
「ぐ、っ……!」
「あは、図星か…ほーんとシズちゃんて分かりやすいよねぇ…」
悔しい。悔しい。なんて悔しいんだろう。こんな良い様に使われて、弄られて。
でもそうしないと生きていけなくて。
縋るのであれば、臨也が一番静雄を理解し、受け入れてくれる。
彼は静雄を玩具として見ているが、静雄は少なからず感謝していた。
屈辱だと思う。だけどほんの少しだけ感謝しているのも事実であった。
「ぁっ…――ッ!!」
「はーい、だめだめ。イっちゃだーめッ」
「はっ、や、ぁあ…」
ふふ、と臨也は笑う。ペニスを握られて静雄は達せない。
苦しい。臨也は静雄が苦しむ姿を見て笑う。
人間として最低な男だ。今すぐ殺してやりたいのに、手を出せない。
ポロポロと涙で目の前が滲むが、射殺せるような瞳で臨也を睨み付ける。
こんなヤツの手を借りないといけないなんて。
「悔しい?そりゃあ悔しいよねぇ?大嫌いな俺に好き勝手弄られてるんだから」
でも新羅よりはマシだと思うけど、なんて臨也はふざけたように笑う。
友人である岸谷新羅であれば喜んで静雄の身体を解剖をしていたと思う。それに比べて臨也はまだ良い方なのだろう。
男が男に抱かれるなんて、プライドがズタズタにされるほど苦しいものだ。
静雄は心が鋭い刃で傷付けられていくのをただ歯を食いしばって耐えていた。
「ほら、イっちゃう?出してもいいよ?ほら」
「や、いぁ、あっ、いざ、ひっぁ゛ああっ――ッ!!」
びゅるびゅると精を吐き出すと静雄は大きく息を吸い込んだ。
イかされてしまった。悔しい、悔しいっ。
どうしようもない苛立ち。自分自身に腹が立つ。
グッと血が滲み出る程拳を握る。その手に、臨也はそっと己の手を重ねる。
驚いて静雄は目を見開く。
「そんなに握ってると血が出ちゃうよ」
「…て、めぇがそれを言うのかよ…ッ」
「まぁ、それもそうだね」
少し寝るといい、と臨也は静雄に言う。なんでそんな事を言われなければいけないのか。
だが、疲労で身体が重い。
「…クソっ…ぃ、つか…ぜってぇ…殺してやるッ…」
「あはは、それは随分後の話になるだろうねぇ。俺がシズちゃんの借金を肩代わりしてあげてるんだから、殺すんじゃなくてむしろ感謝してもらいたいものだけど」
ニヤリと笑う臨也の顔を睨み付け、静雄は気を失うようにパタリと眠りについた。
臨也は静雄の身体に飛び散った白濁をティッシュで拭きとる。
それも臨也は楽しそうに笑いながら一人喋り続ける。
「本当にシズちゃんは面白いよ。俺は君のお蔭で毎日飽きないで日々を過ごせているんだ。君はそんな事知らないだろうけどね」
静雄の背負う借金が大きくなり一人で支えきれなくなった時、臨也はチャンスだと思った。
静雄を自分の良い様に使えるいい機会だと思ったのだ。
そうして静雄は簡単に臨也の掌の上に転がり込んできた。
こんな玩具、簡単に手放すなどするものか。
「ずっと俺のオモチャでいてね、大好きで大嫌いなシズちゃん」
どこまでも傷付けて
もっと苦しむ姿を見せておくれよ
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海栗様、リクエストありがとうございました!
遅くなり申し訳ありません><
なんとも私のツボを突くリクが来たので興奮しました^^
短くてエロも少なくてすみません…。
この度はリクエストありがとうございました!!
『空をとぶ5つの方法』様よりお題をお借りしました。