*DV兎×健気虎
*若干の暴力描写有り



OK?↓








ぱしん、と乾いた音が響いた。
ああ、殴られたんだなと理解したのもつかの間。
次は腹部を蹴られた。それも思いっきり、だ。
身体がめり込む勢いで俺は壁に激突した。蹴られた時に肺が圧迫されたのか息が出来ない。目の前がグラグラと揺れる。気持ち悪い。

「虎徹さん、僕何度も言いましたよね?約束は守って下さいって。…何度言ったら分かるんだアンタはッ!」

怒ってる。怒ってるよなぁ。ごめん、と謝ろうとしても、バニーはそれを許さない。
俺が言葉を発する事を許されるのは彼の許しが出た後だ。
それ以前に何か言おうものならば容赦無い暴力が俺を襲う。
バニーがこんなふうになってしまったのは、マーベリックの事件の後からだったと思う。
一時はヒーローを辞めていた俺だけど、バニーと再開して、また一緒にバディを組んで犯人を逮捕して。
それからいろいろあって一緒に住む事になって…。
その辺りから、だったような気がする。
これは所謂DV(ドメスティックバイオレンス)というもの何だろう。バニーは酷い独占欲があるから、それの延長線でDVにまでなってしまったんだと思う。
離れていた間に随分と変わってしまった俺の相棒。
だけど俺は受け入れる事しか出来ない。バニーは愛情の表し方が出来ないんだ。
だから俺はその精一杯の愛を受け止めてやる。
だって俺はバニーの事が大好きだから。

髪をガッと掴まれて投げられる。投げられた先には小さなテーブルがあって。
俺は受け身も取れないままそこに突っ込んだ。
テーブルの上にあったワインやグラスが床に落ち、ガシャンと大きな音を立てて割れた。
割れたワインの破片で顔や腕を切ったのだろう。
生臭い血の臭いがする。

「虎徹さん、僕は虎徹さんが大好きなんです。知ってますよね?」

うん、うん。知ってるよ。俺もバニーちゃん大好きだもん。
そう思っていても、俺のこの想いはバニーに届いているのだろうか。

「今日も帰りが遅かったですね。僕は、早く帰って来て下さいって、毎日毎日毎日毎日…言っているのに」

皮肉な事に、俺はいつもバニーより帰るのが遅い。残業だったり、スポンサー様の主催のパーティーだったり、接待だったり。
今日は、スポンサー様主催のパーティーだった。
そこにはやっぱり俺を目当てに来る人も居るから、その人の香水が俺に染み付いている。
これだけは俺の持っている香水で匂いを消しても、バニーには絶対バレてしまう。

「ああ…臭いな…雌の臭いがしますよ、虎徹さん。どんな女に言い寄られたんです?」

虎徹さんは淫乱だから、女より男かな、なんて。
綺麗な顔が憎悪に染まる。この瞬間だけバニーは何か悪魔にでも取り憑かれているのではないかと思ってしまう。

「この臭い、綺麗に消さないといけないですね」

「ぁ…っ」

そう言ってバニーは俺の髪を掴んで浴槽へ向かう。
そういえばこの前は臭いを消すとかで熱湯を頭から掛けられたんだっけ。
あの後の火傷の痕は酷かった。それを思い出して思わず身体を強張らせると、バニーは途端に機嫌を悪くした。
気付いた時には床に叩きつけられていた。これはちょっとマズイかもしれない。
血を流しすぎたのか、目の前が揺れる。身体に力が入らない。

「…ば、に…」

「虎徹さん、僕は虎徹さんが大好きなんです。好きで好きで、愛しているんです、虎徹さんっ…!だから僕は、虎徹さんを僕だけのモノにしたいんですよ」

知っているよ。バニーは俺の事大好きだもんな。
だって俺が気を失って目が覚めるまで、ずっとずっと、ごめんなさいごめんなさいと声が枯れるまで謝ってるもんな。
謝らなくていい。悪いのは俺だ。お前の愛をちゃんと受け取れていない俺が悪いんだ。
でも、ちょっとだけ待ってくれないか。瞼が落ちてきた。
今の時刻はもう深夜だ。普段なら既に寝ているはずの時間。
だからか、とても眠い。

「……ば、…に、ちゃ…」

ごめんな、となんとか伝えると、バニーはハッとした表情をすると、急にくしゃりと顔を歪ませた。
今にも泣きそうな表情で俺を見る。
唇をプルプル震わせて、綺麗なエメラルドグリーンの瞳からポロポロ涙が溢れ出てきた。
ああ、バニー…泣くなよ。涙を拭ってやろうと思ったのに腕が上がらない。おかしいな、なんでだろう。目も開かなくなってきた。

「ぁ、あ……ぼくは、僕は…また…っ!虎徹さんっ、僕…ぼく、は…!」

目が覚めたら抱き締めてやろう。もう大丈夫だぞ、怖くないからって。
ふわふわな髪を撫でて、ポロポロ零れる涙を拭ってやるんだ。
謝らなくていいよ、バニーは不安になっただけなんだもんな。
独りにしてごめんな、もう泣くなよって。

でも、今は少しだけ寝させてくれないか。
身体中が重くて動いてくれないんだ。
起きたらちゃんと傍に居てやるから。大丈夫だぞって頭を撫でてやるから、だから。

「…ぁ…、……こ、てつ、さん…?」



バニーの声が聞こえるのに、どうしてかな。死んだはずの友恵が凄く近くに居るような気がするよ。

――――――
DV兎と健気おじが書きたかったんだがなんとも…。
いつもの如く中途半端である。

『空をとぶ5つの方法』様よりお題をお借りしました。



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