好きだ、と自覚してからは絶望の連続だった。
だって彼は男だし、既婚者だし、自分も男である。
果たして男の自分が彼の傍に居ても良いのだろうか。
彼は未だに愛している人が居るのに。
そんな彼と恋人同士なってからも、ずっとずっとそう想い続けてきた。
諦めようと、何度も思った。だけどその度に胸が苦しくなって。
僕はこの人の事が好きなんだってまた想って。
好きで好きで、愛してしまった。
両親よりも、好きな人が出来てしまった。
この先一生人を好きになる事なんか無いと思っていたのに。
「…母さん、父さん…僕は、どうしたらいいんでしょうか…」
深々と真っ白な雪が降る中、僕は両親が眠る墓に独り話しかける。
あの人をこれからも好きでいていいんだろうか。
嫌いになろうと思った事もあった。けれどやっぱり嫌いになんかなれるはずもなかった。
好きで、大好きで、愛して、僕はきっと一生この人無しでは生きていけない。
それぐらい、彼は僕の中でとても大きな存在になっていた。
ずっと一緒に居たい。それは絶対に願ってはいけない事なのに、願わずにはいられない。
傍に居て、愛して、僕だけを見つめて。
酷い独占欲が溢れて溢れて僕を包み込む。そうして知らず知らずに彼を傷付けていくんだ。
「…僕は、…あの人を、愛して…いいんでしょうか…?」
不安になる。あの人は僕に付き合ってくれているだけで、本当は僕の事なんかなんとも想っていないのではないだろうか。
これは悪いクセだと思う。すぐにネガティブになるのはいけない。
ポタ、と少し積もった雪に涙が落ちる。
考えれば考えるほど苦しくなる。不安になる。悲しくなる。
持っていた傘がバサリと音を立てて地面に落ちる。崩れ落ちるように膝を付いて泣き出す。
「…っ、こて、つ…さん…っ」
寂しくて愛しい人の名前を呼んだ。こんな処に来るはずなんかないのに。
だけど雪を踏みしめる足音が聞こえてきた途端また涙が溢れてきた。
どうしてこの人はタイミングが悪いんだろう。こんなカッコ悪い姿見せたくないのに。
「ここに居たのかバニー。探したぞ。お前ん家行っても留守だしさ」
「…すみません」
「いや、謝らなくていいって。それより大丈夫か?雪積もってるぞ」
そう言って僕の頭や肩に降り積もった雪を払い除けてくれる虎徹さん。
寒いだろう、と言って自身が付けていたマフラーを僕の首に巻いてくれる。
彼も寒いだろうに。彼は優しすぎる。それが嬉しくて痛くて。
またホロリと涙が零れた。
「えっ、バニー?何泣いてるんだよ?あ、っ俺何かしちゃったのかっ!?」
「い、いえ…すみません、すぐ、泣きやみますっ、から…」
冷たくなった手で必死に涙を拭う。だけど拭っても拭っても涙は溢れていくばかり。
どうして止まってくれないんだこの涙は。
虎徹さんに心配を掛けたくないのに。
すると虎徹さんは何を思ったのか僕の身体をぎゅっと抱きしめてきた。
「…泣きたい時に泣け、此処には俺とバニーしかいないから」
「…っ、…虎徹、さん…」
「ん…?なんだ?」
「っ…すき、です…!愛して、います…ッ」
僕が泣きながら発する言葉に何を感じ取ったのか分からないが。
虎徹さんはまるで花が咲くように満面の笑みで僕に言った。
「俺も愛しているよ、バーナビー」
その言葉がどれだけ嬉しかっただろう。涙で虎徹さんの顔がはっきり見えない。
子供のように泣きじゃくる僕を虎徹さんはただずっと抱きしめていてくれた。
嘘偽りのない虎徹さんの言葉に僕はただ泣く事しか出来なかった。
ああ、好きだ。大好きだ。愛している。それは僕も嘘偽りなく言える事。
僕は、この人を一生愛し続けるだろう。だから、僕もこの人にずっと好きでいてもらえるように努力をしよう。
泣くのを止めて、虎徹さんのように綺麗に心から笑える人になろう。
「…ずっとずっと、愛しています、僕の…この世で最も愛おしい人…!」
その声は想いを伝えるためにある
真っ赤に染まった顔の彼の身体を力強く抱きしめながら、僕は目一杯叫んだ
―――――
ほんわか甘い話ではなくなってしまった…なんて事。
涼様リクエストありがとうございました!
申し訳ないメンタル弱い兎と包容力ありすぎる虎をメインにずっと書いていたらほんわかが消え去ってしまった…。
ごめんね涼たん…><
タイバニの方でリクエストしてくれてありがとう!!とても嬉しかったよ!
リクエストありがとうございました!!^^