目の前にずいっ、と出された綺麗な箱。
キョトン、としていると彼は苛々しているのか強引にその箱を押し付けてきた。

「お、おい…なんだよ、これ…」

「だーから!今日はバレンタインだから、チョコあげようと思ってさ、買ってきたの」

こんな高級そうなチョコ。わざわざ並んで買ってきたのだろうか。
一応は受け取っておかなければいけないような気がしてきた。
とりあえず差し出されたチョコを受け取った。

「で、シズちゃんは?」

「は?」

「シズちゃんは俺にチョコくれないの?」

「…用意してねぇけど…」

そんなぁあっ!?と大げさに声を張り上げ臨也は膝から崩れ堕ちた。
ここは臨也の家でも静雄の家でもない。池袋の60階通り。
人が大勢通る場所になる。そんな場所で何をやっているんだろう、と静雄は思う。

「わ、分かったよ…用意するから…給料前だからそんな高いの買えねぇからな」

「あ!ならチョコプレイとかさせてよ!ねっ!!」

「ああ、わか……って、あっぶねぇ!危うく頷く処だったじゃねぇか!てめぇええ臨也ぁああ!!」

「っち、駄目だったか…」

「駄目に決まってんだろ!誰がやるか死ね!」

どうせこのチョコもろくでもない物が入っているんだろう。例えば媚薬とか。
そう問えば臨也はダラダラと冷や汗を流し出した。
図星かよ!と静雄の怒りはヒートアップする。

「今年はてめぇなんかにチョコやるか!!その辺の草でも食ってろ!」

「じゃあチョコは我慢するから、代わりにシズちゃんが食べたいな!」

「ふぅうざぁあけるなぁあああああああッ!!」

「あははは!怒ったシズちゃんの顔も可愛いよー!」

周囲の人達は、ああいつもの光景だな、といつの間にか身に着けたスルースキルで二人のやり取りを眺める。
今日は一段と多く自販機が飛ぶ。

「あーあ、今日も一段とあの二人はすっげぇなぁ…まるで俺と杏里の間柄のようじゃないか!」

「ああ…破壊的に死んでるって事ね」

「そうじゃねぇよ!帝人は相変わらずの毒舌だなぁ…だいじょぉーぶ、お前にもちゃぁあんと杏里は別けてやるからさっ」

「そっ園原さんはモノじゃないでしょ!」

そんな後輩の言葉など目もくれず、臨也と静雄は恋人達でにぎあう街をいつもの戦争のような喧嘩で騒がしていくのだった。



今年も相変わらずのバレンタインです。

―――――
遅れてのバレンタイン話!
中途半端なギャグになった…。


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