いつだって自分が彼に相応しくないと思っていた。だから自分から遠ざけた。
これ以上傷付かないように。なのに、それはどうやら彼の逆鱗に触れてしまったようだった。
仕事終わりにブラブラと歩いていたら、いきなり腕を引かれ路地へと連れ込まれる。
ああ、またなんか俺に恨みを持ったヤツの仕業か、なんて思っていたのだが。
他人ではなかったものの、一応は俺の事を恨んでいるヤツであった事に間違いはない。

『別れよう』

そう言ったのは数時間前だった。アイツは無言で、何も言わなかった。
俺はそれを勝手に了承したのだと理解し、そのまま別れの言葉も継げずに出て行った。
それから俺は仕事があったから先輩であるトムさんと後輩のヴァローナを連れ仕事をした。
その帰りに、これだ。
アイツ…臨也は何も言わずに俺の腕を握り締めている。
あまり痛くはないが、やはり臨也も男だから力は強いようだった。
何も話す様子がないから、俺の方から話しかけてやろうと思ったその矢先。
臨也は俺の服を持っていたナイフで切りつけてきた。
ナイフは俺の服だけではなく、肌も傷付け血が滲み出てきた。
いきなりなんなんだ、と怒鳴りつけようとしたが、深く口付けられてそれは叶わなかった。

「ぉ、い!いざやッ、お前何す…っ」

臨也は無言を貫いた。なんだろう。別れようなんて言った俺が悪かったのか?
だって絶対お前には俺じゃなくて相応しい女がいるだろ。
彼女達なら臨也の子供も産める。俺は男だから臨也の子供は産めない。
二人の愛の結晶、なんて良く言うが、俺はそれを作ってあげられないんだ。
ましてや、こんなバケモノ染みた力を持つ俺のどこがいいんだ。
すぐ怒るし、物はすぐ壊すし、可愛くないし、甘い物が大好きだし。

「んぁっ、あ゛、ぐッ、痛っ…が、ぁあ…ッ」

ナイフで切り付けられた傷痕に指を軽く捻じ込まれる。
何がしたいんだろうコイツ。だけど痛めつけるとか、そういう事はしなかった。
暗くて表情を伺えないが、なんだか臨也が泣いているような気がした。
顔を覗こうとしたが、スラックスと下着を脱がされそのまま慣らしてもいない秘部に指を入れられた。

「ぁああ、ふっぁ――ッ!」

苦痛に目尻からポロポロと涙が溢れてくる。なんだろう。
俺も痛いはずなのに、臨也の心が伝わってくるようで、ああコイツも胸が痛いんだな、と感じた気がした。

「…どう、して?」

臨也が言葉を発した。どうして?何が?

「…どうして、別れようなんて言ったの?俺、何かシズちゃんの気に障る事、した?」

「ん…あ、のな…おれ、…俺…臨也の事、す…すき、だ…」

「なら、どうして…?」

「俺じゃ、きっと…臨也に、相応しくない、から…」

そう言えば臨也は面食らったように、ポカンとした。そしてクスクスと笑いだす。
俺は何か面白い事でも言っただろうか。

「わ、笑うな、よ…!俺だって真剣に考えて…っンあ!」

「ごめんごめん。じゃあシズちゃんは、自分が俺に相応しくないと思ったから別れようって言ったの?」

「ふぁ、そ、そうだ…ちょ、中そんな弄るな、って…ぅああんッ!」

「なぁんだ。俺の事嫌いになったんじゃないんだね?」

「あっ、当たり前だろ…臨也の事…ちゃ、ちゃんと…ん、好き、だし…」

良かった、と臨也は心からホッとした表情。好きだから、別れようと思った。
でもそれじゃあ駄目だった。恋愛なんてしたことなかったから、どうしたらいいのか分からなかっただけなのかもしれない。

「俺はね、シズちゃんの事、愛してるよ。俺の取り巻きの子達は人間としては好きだけど、一人の人としては俺はシズちゃんの事しか愛してないから」

「んなっ…!」

「嬉しいでしょう?だからね、別れるなんて、俺は嫌だよ。シズちゃんは?」

あ、と口ごもる。好きと言っていいんだろうか。
俺達は男同士だからいろいろ障害があるかもしれない。臨也が俺に飽きてしまうかもしれない。
でも、でも…。今のこの気持ちにウソは付けない。

「お、れも…臨也の事、好き、だ…。だから…俺ともう一回付き合ってくだ、さぃ…?」

「なんで疑問形なのさ…。ふふ、でも、喜んでお付き合いいたします、俺のお姫様?」

こんな恰好で言うセリフじゃないんだけどね、と臨也は笑う。
そうだった…俺、こんな恰好だし、今の状況はもの凄く辛い。イってないし、臨也も入れてないし、奥は疼くし…。

「じゃあ、続きは俺の家で、ね?」

俺の考えている事が伝わったのか、臨也はニコリと笑って言った。
俺も顔を真っ赤にしてコクリと頷いたのだった。



ああ、俺、コイツの事好きで良かった

―――――
いづみ様、リクエストありがとうございました!!
やはり静雄は自分は臨也に相応しくないって思うと思うんですよね…。
臨静の喧嘩からのラブラブが一番。

リクエストありがとうございました!!


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