静雄が怪我をしたというから、友人として手当をしていたはずなのだが。
岸谷新羅は頭を抱えていた。
数時間前、血だらけで友人の平和島静雄が訪ねて来た。
どうしたんだ、と聞けば知らない男達に絡まれて喧嘩したらこうなった、と。
相手はナイフを使い静雄を切りつけてきたのだと言う。
まぁ、いつもの事かと思っていたのだが。今日はどうやら違うらしい。

「ししし、シズちゃぁああんッ!怪我したんだって!?大丈夫!?」

なんで彼がいるんだろう。新羅は頭痛に悩まされる。
彼は折原臨也。高校で知り合った人間全てを愛しているという変わった男だ。
それが今や、大好きな人の前では性格が一瞬にして変わる。
高校生活は常に静雄と臨也の喧嘩のような戦争で溢れていたのに。
時間が過ぎるたびにそれがどんどん可笑しな方向へ向かっていった。
気付いたら、彼ら二人は恋人同士になっていたのだ。
新羅としては彼らがどうなろうと自身の恋路の邪魔にならなければ何だって構わないのだが。
しかし、これではいい迷惑である。

「そんなたいした傷じゃねぇから。大げさなんだよお前は」

「だって…シズちゃんが怪我したって言うから…」

静雄が怪我をしたと新羅は臨也には伝えていない。
きっと独自に調べたか大方ストーカー紛いの行為でもしていたのだろう。
しかも彼らは新羅が視界に入っていないのか二人だけの世界に入っている。
大体いつも静雄に怪我をさせているのは臨也だろ、と新羅は心の中で呟く。
静雄の怪我の手当はある程度は済んでいるので新羅はそのまま何事もなかったかのようにその場を去った。
一刻も早く彼らがこの家から去ってくれるのを祈る事しか新羅には出来なかった。


それから暫くして、そろそろ静雄も臨也も帰っただろうと様子を伺いに行くと。

「ぁっ…ばっか、いざっ…!」

「しっ!…シズちゃん、新羅に聞かれちゃうから、もう少し声を抑えて」

「っそ、な…無理っだ…!んぁあっ」

一瞬自分の目が可笑しくなったのかと思った。いや、視力は悪いがあんなモノを見違える訳がない。
何で人の家でイチャイチャしているんだ彼らは!
新羅は思わず扉を開けて怒鳴り出したかったが、今出ていくのは非常にまずい。

「んっん…!っあ…臨也の…でか、ぃ…んぐっふ、ぁ…」

「シズちゃんも、凄い興奮してるね。俺の事ギュウギュウ締め付けてくるよ」

「ぁン!言う、なって…!」

出て行った処でこちらの方がダメージが大きいに決まっている。
ああ、なんて運がないんだろう。よりにもよってこんな光景を見てしまうなんて。
僕だってまだセルティとあんな事やこんな事してないのに!!と、思わず歯ぎしりをしてしまう新羅。

「ふぁっあ…!いざやぁ、そんなっ、おくっ…!ダメっだって…!ぁああッ!!」

「シズちゃんは奥突かれるの好きだもんね?ほぉら」

「ひゃ、ぁああ!ぅ、ううぁ!」

ああ、これは悪い夢なんだ。そうに決まっている。
そう思わないとこの先この二人とやって行けそうにない。
幸い恋人のセルティは仕事でこの家を留守にしている。彼女にこんな衝撃的な光景見せられる訳がない。
こっちだって相当参っているのに彼女は倒れてしまうんじゃないだろうか。
耳を塞いで早く終われ早く終われと願うばかり。

「ぃ、いざっ…!おれ、ぁ、もう…っ」

「んっ、中、出して…いい?外汚したら新羅煩いからさ」

「もっ、なんでもいいからぁ…っ、ぁっああーーッ!!」

外でも中でもどっちにしろ怒るから!後始末をするこちらの身にもなってもらいたいものだ。
どうやら絶頂を迎えた二人はそのままぐったりとベッドに沈み込む。
あああ、新品の医療ベッドが…!新羅はガックリとその場に膝を付く。
今後彼らに関わるのは止めよう。なんだかいろいろ失うような気がしてならない。
新羅はホロリと涙を流すのだった。



(セルティー!僕の癒し!え?何?うっとおしい?私だって今日大変だったんだよ!セルティ、これからは静雄と臨也にはなるべく関わらないでね!俺の身が持たないから!)

―――――
まこ様、リクエストありがとうございました!
呆れる人達…あれ、新羅しかいない…。
だいたいこういう状況に遭遇するのは新羅しかいないな…。
完成遅くなって申し訳ありません!
リクエストありがとうございました!!

『Aコース』様よりお題をお借りしました!


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