夜中十二時を過ぎてすぐに携帯が鳴った。こんな夜中に一体なんなんだ、と半分怒りながら電話を取る。

「…もしもし…?こんな夜中に一体誰…」

『兄さん?』

「うぇ!?あ、えっ、か、幽!?」

どうしたんだ、と慌てて聞けば幽はゆっくりと。

『お誕生日、おめでとう』

言われて、はっと気付く。そうだ。今日は自分の誕生日。

「あ、ありがとうな…」

『一番最初に言いたかったんだ。ああ、それとプレゼントの事なんだけど…』

「ぷ、プレゼント!?そ、そんなの…いいって。もう俺だって大人なんだし…」

『俺だってもう大人だよ。それに、好きな人に誕生日プレゼントを贈るのは、駄目な事なの?』

う、と口ごもる。可愛い弟。自分とは違って怪力でもないし、才能あふれる俳優だ。
そんな弟がわざわざ自分の為にプレゼントをくれると言うのだ。
いらない、と言って断るのも弟想いではない。ここはやはり素直に気持ちは受け取るべきだろう。

「いや、あの…プレゼント、貰っとくよ…折角幽がくれるって…言うんだし、な」

『そう?じゃあ…今から届けに行っていい?』

「えっ、今から…!?ちょ、かすか…ッ!?」

ピンポーン、とインターホンが鳴る。静雄は、まさか…と恐る恐る玄関へ向かい扉を開ける。
そこにはやはり、笑顔一つしない愛しい弟の姿。黒いコートに黒いサングラス。
人気俳優故に正体がバレれば大騒ぎだ。だからか、半分不審者のようだった。

「か、幽…」

「ごめん、すぐに会いたくて」

「え、いや…まぁ…いいんだけど、よ…と、とにかく入れよ。外、寒いだろ?」

「じゃあ、お邪魔します…」

幽を招き入れると静雄はすぐさまヒーターを付け部屋を暖かくする。
急な事だから何も用意していなかった。

「わ、悪い幽…寒いだろ?すぐ暖かくするから…あっ、コーヒーでも……う、俺コーヒー飲まないんだった…」

「そんな気を遣わなくていいよ。大丈夫。それより兄さん、プレゼントなんだけど…」

「えっ!?あっ…」

久しぶりに会ったからか、どうしてもドギマギしてしまう。
兄の自分から見ても弟の幽はカッコいい。天敵である折原臨也の妹達が夢中になるのが良く分かる。
静雄自身も幽が載っている雑誌は買うし、彼が出演しているテレビも映画も全部見ている。
兄として弟が成功している姿を見るのはとても喜ばしい事だ。

「プレゼントは………俺」

「…え?」

「だから、プレゼントは俺。最近一緒に居られないから、今日一日オフにしてもらったんだ。…嫌、だった?」

「い、いや!そんな事はないぞ!うん!お、俺も…幽と一緒に居られるのは…嬉しい、し…」

「じゃあ兄弟水入らずでどこか出かける?温泉とか…」

「おっ、温泉…!?今からか…?」

「だって、時間ないから。車は用意してあるし、邪魔は入らないようにしたからさ」

静雄が一人ワタワタとしている間にも幽は着々と準備を進めていく。
もう何がなんだか分からない。大体邪魔とは一体なんの事だろう。

「さあ、兄さん、行こう?」

「え、あ、ああ…」

訳が分からないうちに車に乗せられる。幽はと言うと、何やら静雄の部屋に細工をしてから出てきた。
どうしたんだ、と問えば幽はふっと笑うと。

「鼠捕りをね、仕掛けてきたんだ」

「あー…そういえば最近出るようになったんだよな、鼠…」

「…兄さんの言ってる鼠とは違うんだけど…」

「………??」

まぁなんでもいいか。と幽はクスッと笑うとそのまま幽と静雄を乗せた車は静雄が住んでいるアパートを離れたのだった。



(シーズちゃーん!誕生日おめで、ぐあぁああ!!)
(何これ!?何なのコレ!?鼠捕りッ!?)

―――――
静雄誕生日おめでとう!愛はいつまでも永遠に!!
平和島兄弟で静誕!!


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