夏になると、体育の授業に水泳という、俺にとって迷惑極まりない授業が増える。
ただでさえ体育の単位が足りていない俺は、強制的に授業に参加しなければならない。
普段の授業内容であれば俺の力で生徒の誰かを傷つける可能性があるが。
水泳では、そういった事が少ない。担任にも言われ、出来るだけ水泳には出るように、とは言われているのだが…。

「やぁ、シズちゃん」

なんでコイツがいるんだろう。プールサイドで一人絶望する。
男女に分かれて授業をすると人数が少なくなるから、という理由で二クラス合同で授業をする体育。
コイツと同じクラスにならなくて良かった、と思っていたのに。
体育になった途端、コイツと顔を合わせなければならない。
だから普段の体育の授業はサボっていたのに…!

「………最悪だ」

「俺はとても最高な気分だけどね」

「くたばれノミ蟲野郎」

来神には制服が無く、自由な恰好で通っていい。だから水着にも規制はない。
そりゃ、きわどいのとか、そういうのは駄目だけど…。
俺はファッションセンスとかねぇから、弟の幽に選んで貰ったんだが…。

「ホント、シズちゃんの弟くんのセンス、わっかんないよねぇ……なんで虎なの?」

「幽のセンスを悪く言うんじゃねぇ!これは幽が俺のためにわざわざ選んでくれた物なんだぞ!!」

「はいはい。シズちゃんは弟くん大好きだもんねぇ」

一々人を馬鹿にしやがって…。臨也のヤツ、本当に腹立つやつだな。
授業内容も暫く泳いだら自由時間になったので、俺は泳ぐ事もなく、プカプカと浮いていた。
仰向けになって空を見上げる。別に泳げねぇわけじゃねぇけど…。
こうやって俺は浮いてる方が…。

「……っ…?」

今、何か背中に触ったような気が…。
浮くのを止めて、プールの底に立つ。周りは普通に俺に近づかないように遊んでいるヤツばかりだ。
新羅はプールサイドの木陰で休んでいる。肌が焼けるとセルティが…とかなんとか言ってた気がする。

「ひゃ、…ッ!?」

今度は確実に何かが足を触った。慌てて見るも、水の中には何もいない。
気のせい、な訳ないし、な…。
振り返っても誰もいないし…。一体なんなんだ、と思ったその矢先。

「シーズちゃぁあん」

「なっ、いざ、んぶぁッ!…ッ!!」

後ろから現れた臨也が俺をプールの中に引きずり込む。
そうだった。コイツもいるんだった。俺とした事が、水でアイツの匂いが消えているせいか、全然気づかなかった。
溺れさせて殺そうって根端か?そうはいくか…!!

「んっ…!ぐっ、ぶ、む…っ!」

振り返れば、臨也のヤツはニヤリと笑って俺を挑発していた。
いい度胸じゃねぇか…!そんなに殺されたいなら、今すぐ殺して…っ。

「ぶぁ!が、ばッ…!」

水の中で臨也はまるで魚のように泳ぐ。なんなんだアイツ。
人間じゃねぇのかよ。ああ、蟲だったっけな。
でも蟲って泳げたか…?

「ふ、ん……っ、んっ、!?」

背後に回られて胸に手を置かれる。驚いて息がゴボリと口から出た。
酸素を求めて水面から顔を出す。だけどそれがアイツの狙いだったらしい。

「ふぁっ、あ、なに…っ!?」

「ぷはっ、あはは、ちょっとした悪戯だよシズちゃん」

そう言って臨也はまた俺をプールの中へと引きずり込む。
その間も臨也は俺の身体を異様に弄ってくる。胸や足、それから股間。
臨也が触るたびに何故か俺の身体はビクンと震える。
身体に感じた事の無い感覚。なんだ、これ。
臨也のやつ、俺に何かしてるのか…!?
触られる度に変な声が出る。水中だと息がゴボゴボと漏れて酸素がすぐになくなってしまう。
その度に俺は酸素を求めて水面へ上がる。俺は魚か…!!

「ひ、ぁ!おま、ぇ…!やめ…ぁ!」

「その割には、良い声出してるけど?」

「ほん、と…いい加減、に…っ、」

悪戯にしては、なんだか良く分からない嫌がらせのようだが…。
もうこれ以上は駄目だ。わけが分からない。
自分が自分でなくなるような気がして、怖い。
だから思い切って、コイツ相手なら傷付けても大丈夫だから、力いっぱい、臨也を殴った。

「この、やろぉおおお!!」

「ぐ、ぶ!げぼぼっ、ちょ、シズちゃ…!俺息でき、な!ぶぶぶぶ!!」

「だったら、このまま…っ、溺れっ死ねっ!!!」

臨也の頭を掴んで水中へ押し付ける。このまま死ねばいい。
ああもう!コイツのせいで妙に身体が火照っている。
なんだこれ。風邪か?病気か?それとも変な薬でも盛られたか?後で新羅に診てもらおう。
兎に角、このノミ蟲野郎は一回殺しておく必要があるな。



(静雄ー、授業終わるよー、そろそろ上がりなー!)
(…おう、分かった。命拾いしたな、ノミ蟲)
(げは!がはッ!はぁ、はー…マジで死ぬかと思った…)
(好きな子程苛めたくなるのは分かるけど、程々にしてきなよ、臨也。それから、愛情表現はそんなんじゃ絶対伝わらないからね)
(うっ、うるさいな!分かってるよ、そんな事!!)

―――――
しらふ様、リクエストありがとうございました!
エロが本当に極端に少ないですが、素晴らしいリクありがとうございました!
ちなみに静雄の水着はゲームの特典で付いてきたお風呂ポスターで静雄が穿いていた虎の顔が付いた水着です。(分かりにくい
そして臨也のツンが静雄には伝わらないこの悲劇。

リクエストありがとうございました!!


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