最初の出会いは最悪だった。ヒーローをやると決まった時もそうだが、コンビを組む。
それも自分よりも一回り年上の男性と。
仕事も私生活も崖っぷち。一々考えが古臭くて全く自分とは意見が合わない。
どうして自分がこんな男とバディを組まなければならないのか、嫌で嫌でしょうがなかった。
でも、両親を殺した犯人を捕まえるのなら、ヒーローをやって探すが手っ取り早いだろうと。
親代わりであったマーベッリクが言うのだから、バーナビーは渋々頷いた。

『僕は、貴方を信じていませんっ!』

他人を信じる、という事がバーナビーには理解できなかった。
いつも何かあるとぶつかってきた彼。お節介で、面倒くさい性格をしていて。
構いたがりで、構われたがり。
気付けば、彼はいつも人の為に動いていたような気がする。

『ハッピーバースディ、バニーちゃん』

いつかの誕生日サプライズ。家族以外の他人にあんな事をされたのは、初めてだった。
誕生日プレゼントとして渡された兎の人形。折角の誕生日プレゼントなんだから、捨てるのは心許ない。
こっそりと家に持って帰り、今はバーナビーのベッドの上にちょこんと置いてある。
仕事が終わり、ベッドにその人形が乗っかっていると、どうしても心が温かくなってしまう。
彼、虎徹は今までの人生で出会った事のないタイプだった。

「よぉバニー、今日仕事終わったら一緒に飲まねぇ?俺のお気に入りの店があるんだけど…」

「飲みません。明日は朝からインタビューと撮影があるので」

「…毎回思うんだけどよ、それってヒーローの仕事じゃなくね?ヒーローって言うのはなぁ…」

機械には疎いし、賠償金はどんどん積み重ねていくし。
バーナビーは虎徹が理解出来なかった。父親面して、飯は食っているか、ちゃんと寝ているのか、など。
どうしてそんな事を他人に心配されなければいけないんだ。

(…そんなの、迷惑なだけだ)

だけど、どこか彼のお節介を求めてしまう自分がいる事に、バーナビーは驚いた。
彼は、ちゃんと見てくれている。バーナビー自身を見ていてくれているのだ。
両親が殺されたから、といって距離を置く訳でもなく、縮める訳でもなく。
適度な距離に虎徹は居て、バーナビーを見ているのだ。
独りになるのが嫌で、そのくせ必要以上に人に踏み込まれるのが嫌な人。
いつまでも子供っぽくて、そのくせ誰よりも大人で、狡くて、姑息で、卑屈な人。
掴みどころがなくて、変な人。

「じゃあさ、いつなら暇な訳?俺達バディなんだからさ、やっぱ親睦を深めるべきだと思うんだよなぁ」

「プライベートにまで首突っ込まないでくださいよ」

「だってさぁ、俺もっとお前の事知りたいんだって」

なら、貴方の事も教えてください、と思わず口に出そうとしてしまった。
は、っとして慌てて口元に手をやる。なんて事を口走ろうとしてしまったんだ。

「…僕は、別に教える事なんて何もないです」

「っだ!…ったく、ブルーローズもそうだけど、最近の若い奴って壁作りすぎじゃねーか…?」

オジサン寂しい、なんてブツブツ言いながら虎徹はパソコンを睨み付ける。
先程から虎徹が使っているパソコンの画面が変わっていない気がする。
どうしてだろう、無意識に目線で彼を追ってしまう。
なんなんだろう、この気持ちは。今まで知らなかった感情だ。
こんな気持ちになった事がない。
どうして、なんで、こんな気持ちになるんだろう。
これはもしかして、同じヒーローであるブルーローズが虎徹に向ける感情と同じなのではないだろうか。
そう思うとどこか納得する自分が居た。

(…なんで納得しているんだ僕は。…どうしよう…)

彼の事なんて何とも思ってなかったはずなのに。



どうしてこの胸はこんなにも高鳴るの?

―――――
ツンバニ、恋をする(おじさん相手に

『10o』様よりお題をお借りします。



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