*ヤンバニ×病虎



OK?↓






彼は、僕の知らない間に確実にガラガラと壊れていった。
いつからこうなった、なんて僕にも彼にも分かる訳がない。
だって彼も僕も、壊れているのだから。

「虎徹さん、ご飯出来ましたよ。貴方の好きな炒飯です」

「いらない」

「どうして?お腹空いてるでしょう?僕、頑張って作ったんです、食べて下さい」

「バニーがつくるごはん、おいしくないから、いらない」

「酷いなぁ。これでもちゃんと料理の勉強してるんですよ?」

事ある後に虎徹さんは僕が作ったご飯を食べてくれない。
空腹だろうに。殆ど食事をしなくなった虎徹さんは、物凄く痩せ細ってしまった。
昔のぷっくりとした顔の虎徹さんはもうどこにも居ない。
僕は虎徹さんを餓死させたい訳じゃないのに。だけど虎徹さんは食事を拒否する。
僕だって、ちゃんと料理の勉強して、虎徹さんの好きな炒飯はもちろん。
他のオムライスやスパゲッティ、ハンバーグ。虎徹さんが好きだという品々は頑張って作れるようになった。
だけど虎徹さんは、僕の作った料理を食べもせずに「美味しくない」と言う。
ああ、困ったな…。

「ねえ、虎徹さん。なにか食べないと死んじゃいますよ」

「べつにいい。ともえのところにいけるなら、しんでもいい」

「…僕は、虎徹さんが死ぬのは嫌です」

「どうして?」

「だって、僕は虎徹さんの事、愛してるから。愛しい人に死んでもらいたくないのは当然でしょう?」

「ふぅん…」

まるで無関心。虎徹さんの瞳に僕は写っていない。
あの瞳は空虚。何も無い。
虎徹さんはじっと小さな窓から空を見上げているけれど、彼の目には青々と広がる空は写っていないのだ。

「でもね、バニーはおれのこと、かんたんにころせるよ」

「僕は虎徹さんの事を殺したくありません」

「のうりょくをつかって、おれのくびをぎゅっとにぎれば、おれはともえのところにいけるんだ」

「…貴方を友恵さんの所になんか行かせやしない」

「ともえにあいたい。あいたいなぁ。なあバニー、おれ、ともえにあいたい」

「駄目です。貴方は僕の隣にいないといけない。ずっと、ずっと僕の傍に居て」

ぎゅ、と虎徹さんに抱きつく。痩せ細った虎徹さんの身体は、僕が力を込めれば簡単に折れてしまいそう。
会話が噛み合わないのは、いつもの事だ。もう気にならない。
虎徹さんは虚ろな瞳に僕を写すと、僕の背中に手を当てて、まるで子供をあやすように撫で始めた。

「バニーは、さみしい?おれがしんだら、さみしい?」

「寂しいです。兎は寂しいと死んじゃうんですよ。知ってました?だから、虎徹さんが僕の傍に居てくれなきゃ、僕は寂しくて死んじゃいます」

「バニーはさみしがりやさんなのかぁ…じゃあ、おれがあたまなでなでしてやろうな」

「っふふ、くすぐったいですよ、虎徹さん」

虎徹さんはクスクスと笑うと僕の頭を撫で始める。
指に僕の髪を絡ませてクルクルと巻いて楽しんでいる。
このまま時が止まればいいのに。そうしたら僕は虎徹さんと一緒に居られる。
僕は虎徹さんを抱いたまま、ベッドにボフンと倒れ込む。
虎徹さんはクスクスと笑うと、妖しく僕を誘う。

「…どうしたんだぁ?もう、ねるのか…?」

「…虎徹さん、抱いても…いいですか…?」

「あー、んー…バニーちゃんはへただから、やだ」

「誰と比べてるんですか」

「えっと…ひみつぅ。バニーにはおしえない。ともえにはおしえるけど」

「じゃあ、友恵さんから聞くしかないですね」

「バニーはともえにあえるの?」

「いいえ。だって彼女はこの世には居ませんから。死んで天国へ行かないと会えないですよ」

「ふぅん…おれもてんごくにいきたいなぁ…ともえにあいたい。ともえのことぎゅーってしたいよ、バニー」

「駄目です。虎徹さんは僕と一緒に地獄へ行くんですから」

虎徹さんに覆いかぶさって、ベストとシャツを脱がす。
あんなに筋肉が付いた、とても三十代後半の男性とは思えないあのしなやかな身体は、今はもう見る影もない。
身体に無数に刻まれた傷に、僕はキスをする。
胸飾りに噛み付いてやれば、虎徹さんはビクンと身体を震わせる。
優しくされるより、痛くされる方が彼は好きなのだ。

「あん、…ァ…ばに、…やだ、ゃ…っ」

「ん、っん…」

「ふぁ、ゃ、あぁン…」

虎徹さんが僕の身体を引き剥がそうとする。嫌だ、嫌だ、と身体をくねらせ僕から逃れるようと必死だ。
ローションを塗りたくった指を虎徹さんの秘部へ躊躇なく突っ込む。

「虎徹さんの中、熱くてトロトロで僕を離さない。気持ちいいです、か…?」

「やだ、やだぁ…ん、ひっ…ぅ、うう…」

「嫌だなんて、嘘でしょう?だって、虎徹さんのココ、もうこんなに大きくなって…」

「あっ…ばに、ばにぃ…きたないっ、きたない、からぁ…」

「汚く無いです。虎徹さんは汚くなんかないですよ」

「ううん、…おれ、きたないよ…ぐちゃぐちゃで、どろどろで、きたないのが、いっぱいっ、ぁっ…ついてる、の」

「僕には虎徹さんが汚ないようには見えません。むしろ、とても綺麗だ…」

「バニーのめは、おかしいんだよ…ともえにあって、なおしてもらおう?」

「友恵さんはお医者さんなんですか?」

「ううん。ともえはね、あったかくて、やさしくて…ぁっ、ひ、ン…」

これ以上友恵さんの事を聴きたくなくて、虎徹さんの秘部へ入れていた指を激しく掻き回した。
壊れてしまった虎徹さんの中では友恵さんが一番。僕は二番かどうかも分からない。

「っ、ねぇ虎徹さん…僕達、昔もこうやって愛し合いましたよね…?覚えてますか…?」

「しらない。おぼえてない。それはきっとおれじゃないよ。ちがうひとだ」

「いいえ、虎徹さんですよ。僕は覚えていますから」

「ぁっ、やっ…!ひぁ、ぁああ…そこっ、そこ、やだ…じんじんっする、からぁ…っ」

「ココを弄れば虎徹さんは可愛い声を出して喘いでくれるって、僕は知ってます。あとは…ココ」

「ひぐっ…ぁっあああっーー!!」

「あれ、…虎徹さん、イっちゃったんですか?可愛いなぁ。そういえば随分セックスしてなかったな…ふふ、ぐちゃぐちゃな虎徹さん、凄く可愛い…」

虎徹さんの空虚な瞳から零れる涙を舐め取る。久しぶりにやったから、気を失っちゃったかな。
僕は虎徹さんの手に自分の手を絡ませて、そのままぎゅっと握る。
いつから壊れた、なんて。覚えてない。僕が虎徹さんを好きになってしまった頃からだろうか。
それとも僕と虎徹さんが恋人同士になってから?虎徹さんの能力が減退している頃?
僕らが虎徹さんを忘れてしまった時?
でもそれは壊れた僕らには関係ない。

「…ずっと一緒に居ましょうね、僕だけの、虎徹さん…」

細くなった虎徹さんの指には、彼が大事にしていた指輪なんて、見る影もなかった。



指輪も居場所も奪ったら、彼は僕だけを見てくれると思ったんだ。

ーーーーー
ヤンバニ×病虎!!
病んでるバニーちゃんがおじさんを監禁して、指輪と居場所を奪ったらおじさんも病んじゃったよって言う話です!
病む前はちゃんと二人は恋人同士だったのです(・ω・´)



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