クリスマスまで仕事なんて、ヒーローに休みは無いと言うけれど。
やっぱりたまには休みが欲しい。クリスマスにだっていろいろ予定があるのだ。
夜景の見えるレストランで一緒に愛おしい人とご飯を食べたりしたいのに。
バーナビーは笑顔で子供たちにクリスマスプレゼントを渡す中、一人気持ちが沈んでいた。
本来ならこんな事をしている場合ではない。他のヒーロー達に紛れ、奥のほうに笑顔でプレゼントを配る相棒。きっと今頃は彼と二人で映画でも見ている頃なのに。
どうしてこんな事をしているんだ。ギリリ、と奥歯を強く噛んだ。
バーナビーの視線に気づいたのか、相棒の虎徹がこちらを向いた。ヒーロースーツのフェイスガードを開けている状態の虎徹。
バーナビーの気持ちも知らないで、彼はニコリと微笑むとまた子供達へ視線を移した。
たったそれだけなのに、先程まで苛々していたバーナビーの気持ちは一瞬にして消え去った。

(ああ、早く終わればいいのに)

自分の気持ちを必死に押し殺してバーナビーは子供達へプレゼントをまた渡し始めたのだった。



仕事が終わる頃にはもう日が変わる数分前だった。子供達にプレゼントが配り終わるや否や、クリスマスということに浮かれた若者達が暴れているだの、強盗が出ただのでヒーロー達は大忙し。
不機嫌な様子のバーナビーを虎徹は不思議に思い思わず声をかける。

「おい、どうしたんだよバニー。何苛々してんだ?」

「…僕の計画がメチャクチャにされたからですよ。折角今日はいろいろ予定を立てていたのに…っ」

「ああ…クリスマスだからか?まぁ、ヒーローに休みは無いしな。仕方ねぇって」

苛々している様子のバーナビーを、虎徹は逆撫でしないように話しかける。
クリスマスに何か大切な予定でもあったのだろう。ヒーローになったからにはそう簡単には休みは取れない。
しかしバーナビーの場合は虎徹とは違って実力もあるしルックスもいい。
上司であるロイズに頼めば有給にでもさせてくれそうなのだが…。

「つーか、んな大切な用事があったなら有給でも取って休めば良かったじゃねーか」

「…それじゃあ意味がないんです」

「はぁ?」

「…貴方と、虎徹さんと…一緒にクリスマスを過ごしたかったんです…」

「っだ!おま…っ、なんつー恥ずかしいやつ…」

「だって!だって…恋人になって初めてのクリスマスですよ!一緒に過ごしたいじゃないですか!なのに子供達にプレゼントを配るなんて…でも、それぐらいならまだ良かった」

バーナビーがボソボソと愚痴を溢し出す。彼の素直な気持ちの表し方はとても好きだ。
だけれど時折めんどくさくなるのはどうしてだろう。
今日は虎徹さんとずっと一緒にイチャイチャしたかった、など。他のヒーロー仲間が聞いたら倒れるんじゃないだろうか。
このまま帰っても彼の機嫌は直らなさそう。どうしたものかと虎徹は考える。
私服に着替えてベンチに座り落ち込むバーナビーに、虎徹は、はた、と記憶を巡らせる。
ああ、これは今がチャンスかもしれない。
自分のロッカーに隠していた小さな紙袋。それをバーナビーの目の前に持っていき、差し出す。

「…?なんですか?」

「そんないじけてるバニーちゃんに、俺からのクリスマスプレゼントだ」

ニカ、と笑う虎徹にバーナビーは一瞬唖然とする。恐る恐る虎徹からクリスマスプレゼントを受け取ると、バーナビーは袋を開けた。
中にはフォトフレーム。ポカンとしてそれを見つめる。

「なんかさ、いいプレゼントが思いつかなくてよ…写真とかなら思い出にもなるし、後にも残るから、それでいいかなって」

彼の優しさが溢れてくるようだった。そうだ。例え今年のクリスマスが一緒に過ごせなくても、来年一緒に過ごせばいいじゃないか。
何をいじけていたのだろう。これだからまだまだ子供だと言われるんだ。

「…ありがとう、ございます…。すみません、僕、何も用意してなくて…」

「いいんだって。俺が勝手にやったんだし…」

彼は大人だな、と思う。なのに自分はまるで子供なのに大人の真似事をしているようだ。

「これ、大切にします。本当にありがとうございます、虎徹さん」

「いや…。まぁ、俺もお前とクリスマス過ごせなくてちょっとへこんでたし…」

照れて赤くなる頬をむず痒そうに掻く虎徹に、バーナビーは愛おしさが込み上げる。
一回りも年上の男をこんなにも愛すようになるんて。両親が知ったらどんなに驚くだろう。
でも、それでも、

「愛しています、虎徹さん」

「っだ、…んな面と向かって言うなって…恥ずかしい」

来年は仕事があってもテコでも動くもんか。



フォトフレームの中の写真には、仲睦まじく方を並べて微笑む二人が写っていた。

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クリスマス話!遅れた!
兎のクリスマスは綺麗な夜景の見えるレストランで好きな人とラブラブするみたいな感じのイメージがある。



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