その日はいつもと変わらない一日中になるはずだった。
だった、という事はそれはもう叶わないという事。
静雄は自分が置かれている状況に吐き気がした。どうしてこうなった。
油断なんてしていなかったのに。強力な催眠薬でも嗅がされたのか、思考が揺れる。
靄が掛かったように目の前が霞んで見える。そして辛うじて見える複数の足。囲まれている。
身体に力を入れようとしても、身体はピクリとも動かない。ああ、これはヤバイな、と静雄はまるで他人事のように考えていた。

「これがあの池袋最強かよ」

「流石、裏ルートで手に入れた薬は違うなぁ〜」

「おい、効果が切れないうちにヤっちまおうぜっ」

「まぁ、焦んなって」

どうやら彼らは静雄に恨みをもつらしく、日頃の恨みからこういった行為に踏み込んだらしい。
何をされるんだろう。刺されるのか、殴られるのか、蹴られるのか、ビルの屋上から放り出されるのか、道路の真ん中に放置されるのか。
いろいろな事を考えてみたが、どうせあまり自分には効かないだろうと静雄は考えていたのだが。
彼らは静雄の考えていた事の予想範囲を飛び越えた事を言った。

「喧嘩人形を犯すなんて、そんな馬鹿げた事するやついんのかよ」

「バーカ!俺達がそうだろうが!…平和島静雄は傷が殆ど付かないっていうからな、ナイフで刺すより、精神的にショックな事させる方が効くだろ?」

「男が男に犯されるなんて、こんな屈辱的な事ねぇからなぁ」

思わず目を見開く。どうした事だろう。自分は犯されるのか。こんな顔も名前も知らない男達に。ああ、嫌だ、嫌だ。

「ほら、逃げ始めたぞ。さっさと服脱がしてヤることヤるぞ」

怖い、と静雄は純粋に思った。普段は自分が人を傷付ける事に恐怖を感じていたが、今は違う。
こんな事は始めてだ。男なのに、男に犯されるなんて。こんな、こんな苦しく屈辱的な事はないだろう。
助けを呼びたいのに、この身体は動いてはくれない。声も掠れたような小さな声しか出てこない。
目の前が絶望に包まれる。
スラックスを脱がされて下着もそのまま一緒に脱がされる。
ひんやりとした空気に身体が震える。
男の指が尻の肉を割って秘部へ指を進める。ゴツゴツとした指が奥へ奥へ入っていく。
ローションなどは勿論有る訳も無く、静雄はピリリとした痛みに顔を歪める。
声を出そうとしたら、口内に何か布のようなものを詰め込まれた。
これで息もし辛くなる。簡単には取りだせない様に口にはガムテープ。
鼻に巻かれなかっただけマシだろうか。身体が自由に動かないのを良い事に男達はドンドン行為をエスカレートさせていく。

「ん゛ッ、ぐ、ぅうう゛!!」

「おい、平和島静雄のやつ泣いてるぜ!」

「いいからさっさと終わらせろ。時間がねぇんだぞ」

「へいへい」

「ぐぅううんんんッ!っァーーー!!」

殆ど解されていない状態のまま、秘部に男の熱を持った一物を突き立てられ、静雄は情けなく泣いた。
痛さも勿論あった。けど、一番辛いのは、このまま無抵抗なままヤられてしまうこと。
普段の自分なら絶対こんな目には合わないのに。どうして今日に限ってこんな事に。

「あー…すっげぇ、良い。めちゃくちゃ締め付けてくるぜ」

「一発やったらさっさと俺と変われよ」

「わぁーってるよ」

「っひ、ぅんむ、ん゛んーーッ!」

グチャグチャと下半身から音が聞こえる。怖くて怖くて。
なんでどうして。俺は男なのに。どうしてこんな目に合わなくちゃいけないんだ。
これがもし、誰かの手によって仕組まれていたのだとしたら。
その時は、自分でもどうなるのか分からない。その仕組んだ相手が顔見知りなら尚更で。

「ふっ、んぁーーッ…!!」

「はは!コイツ、後ろに突っ込まれてイキやがったぜ!」

「とんだ淫乱野郎だな!」

はははは、と笑う声が路地裏に響く。静雄は声出して大きく泣き出したかった。
拳を震わせる。逃げたいのに、身体は動いてくれなくて。もどかしくてもどかしくて。
先程の男がペニスを抜き取ると、今度はまた別の男が入れ替わりで静雄の中に突き立てる。
いつまでこんな悪夢のような事が続くのだろう。
出来る事なら助けて欲しい。誰でも良い。この状況を打破したい。
顔には精液を掛けられて、弟から貰ったバーテン服は破かれた。
どうしてくれるんだ。ここから自分の家まで遠いのに。
半ば絶望に目の前が真っ暗になりかけた時、聞きたくて、聞きたくない声が聞こえた。
ぼんやりとその方向を見つめれば、ファー付きの黒いコートに黒髪。赫い目。
どうしてよりによってお前なんだよ、と静雄は心の中で呟く。

「ねぇ、君達。何をしているのかな」

「はぁ?見て分かんねぇのかよ!?」

「…まぁ、レイプの現場だって事は俺にも良く分かるよ。でもね、君たちは相手を選ぶのを間違ったね」

「はぁ?」

そう言って男は、暗闇の中に佇む赫い目の男にナイフをチラつかせながら近づいた。
ああ、アイツ死んだな、と静雄はそっと目を閉じた。静雄の思った通り、男は呆気なく赫い目の男に倒された。
静雄を犯していた男達はそれを見て恐れ慄いたのか、一斉に逃げだした。
カツカツと聞こえてくる音に静雄はうっすらを目を開く。
申し訳なさそうに細まる瞳に、静雄はふっと笑った。

「遅くなっちゃった。ごめんね、シズちゃん」

「…バァカ…おせぇんだ、よ…」

「うん、本当にごめん。すぐ助けてあげられなくて」

「…来てくれたから、もう良い…。けど、帰ったら…、プリン…食わせろ」

「うん。でもその前に身体、綺麗にしようね」

赫い目の男、臨也はぐったりとする静雄を抱き上げると、そのまま暗闇に消えた。
その後、静雄を襲っていた男達がボロボロの状態で見つかるのは数日後の話。



大切な人を傷つけられたら怒るのは当然だろう?

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匿名希望の方、リクエストありがとうござました!
若干…というかとてもエロが少ないですが…。
少しでも楽しんで頂けたら幸いです><

リクエストありがとうございました!!




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