彼らは、誰だ?自分と恋人と同じ顔をした男が二人。
静雄は咥えていた煙草をポロリと落とした。

「あーー!!シズちゃん!煙草!カーペットが燃える!!」

「あ?ああ……」

「ちょ、なんで拾わないの!?全くもう…!」

「いや、このまま燃えればいいのにと思って…」

「酷いよシズちゃん!!」

臨也が必死でカーペットと煙草の処理をしている最中であっても、その男二人は動じない。
誰なんだろう。何で同じ顔をしているんだろう。
ドッペルゲンガー?いや、それにしても似過ぎている。
静雄が首をコテン、と傾げると、静雄と同じ顔をした青い着物を着ている男も同じ様にコテン、と首を傾げた。
同じ動きをするようになっているのか?静雄はますます考える。

「あっ、津軽ってば静雄くんの真似してるー!可愛いー!!」

「そう?…嬉しい…」

喋った。それも自分達と同じ声で。静雄は驚いて臨也へ慌てて声を掛ける。

「お、おい臨也…アイツら喋ったぞ…!」

「そりゃ喋るよ。俺とシズちゃんの子だもん」

は?と静雄は聞き返した。なんだって?
何を頭のおかしい事を言っているんだろう。

「臨也…お前、女だったのか?」

「そんな訳ないでしょ。シズちゃん、俺の身体何度も見てるのにそのボケはないよ…」

「じゃあ、なんで…」

「アンドロイドってやつ。面白そうだったから、俺がアレンジしてこういう姿にしてみたんだ」

「そうそう、臨也くんは僕と津軽のママなんだよー」

「できればママじゃなくてパパがいいかなー」

静雄は一人、その場の空気についていけなかった。急にいろんな事を言われて頭が追い付かない。
とりあえず、彼らは人間ではないという事だけは分かった。
子供だと言い張るにしては成長が早すぎるし…何より似すぎている。

「でも、僕達を作ったのは臨也くんだよ?だったらママじゃないのかな?」

「…しずおの方が、パパみたい…」

「え、それなんか酷くない…?」

「まぁ、お前の方が背は小せぇし、細いし女っぽいよな」

「夜、俺の下であんあん言ってる人の台詞とは思えないね」

「うるせぇ、ぶっ飛ばすぞ」

白とピンクを基調とした臨也似の男は言い争いをしている臨也と静雄の間に入ると、まるで何事もなかったかのように自己紹介を始めた。

「初めまして、パパ。僕はサイケ。あっちのパパに似てるのは津軽。よろしくね」

「…よろしく、お願いします…」

「あ、ああ…よろしくな」

わーい、とサイケと津軽はドタドタと臨也の部屋の中を走り回る。
これはこれで楽しいかもしれない。自分に子供ができたらこんな感じなのだろうか…。

「可愛いでしょ?流石俺って感じだよね?」

「完全にお前の趣味だろ?気持ち悪ぃ。なにも俺達そっくりにしなくてもよかったんじゃないか?」

「え?だって同じ顔同士がイチャイチャしてるって…萌えない?」

「お前一回土に還れ」

「4Pとかも出来るかも、でしょ?」

「死ね」

どうせそんな事だろうと思っていた静雄は大きく深い溜息を吐いた。
聞いた自分が馬鹿だった。頭を抱えて飽きれていると、サイケが何かを持ってトタトタとこちらに向かってきた。
なんだろうと思っていると。

「ねぇ、パパ。これ、反対に折り曲げたらどうなると思う?」

サイケが持って来たのは一般的なノートパソコン。
それをカパカパと開いて静雄に見せる。

「壊れるんじゃないか?でもどうしてそんな事俺に聞くんだ?」

「んっとねー…これに」

「あああーーっ!それには俺のシズちゃんの盗撮映像やら写真が……はッ!?」

「サイケ、それ反対に折ってみていいぞ。思いっきりな」

「わぁーい!じゃ、せーのッ!!」

バキン、と音を立てて臨也のノートパソコンは真っ二つに折れた。
と、同時に崩れ落ちる臨也。サイケはサイケであまり面白くなかったのかげんなりしている。

「なんか案外面白くなった…」

「そうか。なら次は臨也ママの腕を反対に折り曲げると面白いかもな。後は…眼潰しとか」

「わぁー、それ面白そう!ママー、腕折らせてー!!」

「シズちゃん!さっきから発想が怖いんだけど!!」

「お前が俺の知らない間に盗撮やらなんやらしてた方が俺にとっては怖ぇんだよ」

サイケが輝くほど笑顔で迫り寄ってくるのを臨也は全力で拒否をする。
怖い。作られたばかりだからか、何をするにも興味があるらしい。
しかしサイケも津軽も人間ではないが故に人間以上の力を持っている。
静雄の腕は無理でも臨也のような普通の男子の腕であれば一捻りだ。

「ちぇー、津軽ぅ、ママは腕折らせてくれないってー…」

「…ママ、ダメ…なの?」

「うっ…」

「腕、折っちゃダメ、なの…?」

「ぐ、うぅぅー…」

「臨也、そんな悶えてるなら腕の一本や二本折らせてやれよ。俺とお前の子供の頼みだろ…?」

「なんか凄い良い事言ってるみたいな顔してるけど全然そうじゃないからね!俺にとっては凄い大事な事だから!それ分かってる!?」

「いや、俺には関係ないから…特には」

「うわぁあああんッ!!シズちゃんの馬鹿―ッ!!俺もうこんな家出てってやるー!!」

涙を流しながら勢いよく部屋を出て行く臨也を三人は静かに見つめていた。

「……臨也くんの事、探しに行かなくても平気?」

「あー…すぐ帰ってくんだろ。俺と喧嘩した後はいつもこんな感じだからな」

「へー…」

「お前も、アレが素じゃないんだな」

「まぁね。ちょっとからかってみただけ。津軽はいつもあんな感じだけど」

はぁ、と二人で乱暴に開けられたままの扉を見て溜息を吐く。

「ま、これからアイツが迷惑かけると思うけどよ、よろしく頼むな」

「こちらこそ、いつか皆で4Pしようね」

静雄がサイケとは仲良く出来そうもないと思った瞬間だった。



(……4Pは…勘弁だな)
(そう?楽しそうだけど?)
((…中身も臨也に似てるのかよ…帰ってきたらアイツの事ぶん殴ろう))

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屮已様!リクエストありがとうございました!
派生組と言ってもサイケと津軽しか出ていないが…。
いつもstkありがとう!私も屮っちゃんにstkしているよ、常にね…!

こんな文章でも楽しんでいただけたら幸いです><
リクエストありがとうございました!!