今年はどういうプレゼントにしようか、と仲間から相談され思い出した。
そういえばもうすぐパートナーであり恋人でもあるバーナビーの誕生日である。
彼への最初のプレゼントは、サプライズもかねてポイントという味気ないものになってしまったが、去年に引き続き今年も流石にポイントではマズイだろう。

「なら、ちょうどその日はハロウィンだから仮装してプレゼントを渡すっていうのはどう?」

十月三十一日はハロウィンでもある。それならまた一味変わったサプライズになるのではないだろうか。
皆でするサプライズやプレゼントはそれでいいとして、恋人としてのプレゼントはどうしよう。
そういえばパートナーとして最初にプレゼントしようとしていたものは自分自身だった事を思い出す。
今なら自分がプレゼントだと言ってもおかしくないのではないだろうか。


そんな訳で虎徹は今バーナビーの部屋の前に、顔の部分だけを切り取ったシーツを被っただけのお化けの格好をして佇んでいた。
いざとなるとなんだか緊張する。あの時はふざけてあんな事を言っていたが、いざ実際にやるととんでもなく勇気がいる。
やってみてあの綺麗な顔で「迷惑です」なんて言われたらもう立ち直れないかもしれない。

(だけど、当たって砕けろっていうもんな…いや、砕けちゃダメだけど…)

意を決してインターホンを鳴らす。はい、と彼の声が聞こえた後に静かに扉が開く。
虎徹は平然を保ってふざけたように明るい声で言った。

「トリックオアトリート!バニーちゃん、誕生日おめでとう!」

あっけらかんとするバーナビーに、やはりダメだったろうかと虎徹がバーナビーに声を掛けようとすると。
バーナビーはクスクスと笑っていた。何か可笑しかっただろうか。

「本当に、貴方はやる事がめちゃくちゃですね…ふふ」

「やっぱ可笑しかったか…?驚かせようと思ったんだけどよ」

「驚きましたよ。まさか貴方がそんな格好で現れると思っていなかったもので…」

「ッだ、だって…あいつらが俺にコレを押し付けてきて…!」

「でも似合ってると思いますよ。ちょっと間抜けな所が」

まだクスクスと笑うバーナビーに虎徹もほっとした表情を見せる。
喜んでくれたかどうかは分からないが、取り合えずは成功したと言えるだろう。
そこで虎徹はシーツの中から誕生日ケーキを取り出しバーナビーに手渡した。

「これ、ケーキな。一応俺の手作り」

「虎徹さんが作ったんですか…?」

「まぁ…形は歪だけど、自分で言うのもなんだが味はそれなりに美味いぞ」

「…ありがとう、ございます」

嬉しそうに微笑むバーナビーに虎徹も満足する。何度も失敗したけれど、愛しい彼の為に何度も作った。
しかし本題はバーナビーを驚かす事でもなくケーキを渡す事でもない。
シーツの下は一応は服は着ているが、ピンク色のリボンを身体中に巻いて首元で蝶々結びにされている虎徹であった。そんな状態の自分をバーナビーにあげる事が目的なのだが。
いかんせん緊張する。だが言わなければならない。虎徹は生唾を飲み込んで、

「あのさ、バ、」

「ああ、そうだ虎徹さん。ちょっと待ってて下さい」

「へ?」

意を決して放った言葉はバーナビーによって遮れてしまう。
トタトタとバーナビーは部屋の奥に戻って何かを探した後また玄関へと戻ってきた。
一体どうしたんだろうと虎徹が思っていると、バーナビーは虎徹の手を取りその手のひらに何かを乗せた。
良くみればそれは小さなキャンディー。訳も分からずキョトンとしていると。

「虎徹さん、さっきトリックオアトリートって言いましたよね?悪戯されるのは勘弁なので、トリートの方を」

「あ、ああ…それで」

始めに言ったくせにすっかり忘れていた。貰ったキャンディーをズボンのポケットにしまいこんでいると。

「虎徹さん、Trick or Treat?」

「は?」

「だから、お菓子くれないと悪戯しますよ?それに、僕はまだ虎徹さんから誕生日プレゼントを貰ってません」

まさか彼から言われるとは思ってなかった。お菓子は持っていないし、プレゼントは…。
と、そこで気付く。プレゼントは自分。お菓子も自分という事にしてしまえばいいのではないだろうか。
俺って頭良い!なんて思っているほど虎徹には余裕が無く、瞬時に思った事をそのまま口にしてしまった。

「俺がバニーちゃんへのプレゼントで、お菓子だ!!」

かぶっていたシーツを脱いで威風堂々と言い放った。色々あったがこれで計画は全て終了した。後はバーナビーの反応を待つだけなのだが。
何の反応も示さないバーナビーに虎徹はお決まりの愛称で彼を呼んだ。
その途端力強く腕を引っ張られ部屋の中へ縺れ込む。何か気に障るような事をしてしまったのだろうか。

「あの、バニー…?やっぱ俺がプレゼントでお菓子はダメだったか?」

「いえ、むしろ嬉しいです。こんなサプライズは初めてですよ。そのリボン、自分でやったんですか?」

「おう。中々うまくいかなくてな…最後の蝶々結びなんて…」

「コレ、解いていいですか?もう我慢できない。美味しく頂きますよ、おじさん?」

「聞けって…。まぁ、俺がプレゼントでお菓子だからな。美味しく残さず頂いてくれよ?バニーちゃん」

僕が貴方を残すはずがないでしょう?なんて自慢げに微笑むバーナビーに虎徹は笑い、彼の唇にキスをした。

It is a fortune to the day when he was born.

生まれてきてくれて、ありがとう。

―――――
遅れてのバニ誕!!
バニーちゃん誕生日おめでとう!これからもおじさんと末長く!!

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