つまらない。実につまらない。
静雄は一人客間で恋人の仕事が終わるのを待っていた。
客間で一人待たされる静雄は小さく溜息を吐いた。
仕事が忙しいのは知っているが、こうも何時間も待たされては退屈だ。
自分が関わってはいけない仕事なのは分かっているけど、少しぐらい顔を出してもいいんじゃないだろうか。
一緒に飲もうと持ってきたカクテルやビールはとっくの昔に冷たさを無くしていた。
久々に会いに来た恋人に仕事が終わるまで待ってくれ、なんて。
普段の彼なら仕事を放り出しても一緒にいてくれるのに。

「…やっぱ、迷惑だったのか…」

突然連絡も無しに行ったのだ。きっと迷惑だったに違いない。
静雄は持ってきた缶ビールの蓋を開け、そのままグビッと喉に一気に流し込んだ。
ちょっと浮かれてやってきた自分が馬鹿みたいだ。
静雄はまた次の酒に手を伸ばす。
笑顔で出迎えてくれるかと思ったのに、ちょっと迷惑そうな顔をされた。
あまり言葉や態度で好意を示さない自分に嫌気がさしたのだろうか。
また次の酒へと手を伸ばす。身体が熱くなる。
本当は一緒に飲んで、そのまま一緒に寝たりしたかったのに。

「…臨也の、馬鹿」

カランカラン、と床を転がる空き缶。
気付いた頃には、持って来た酒は全て無くなっていた。
頭が揺れる。眠い。
視界がぼんやりしてきた頃、ガチャリと客間の開く音がした。
振り返れば少しやつれた顔の臨也が立っていた。

「シズちゃん、ごめんね。遅くなっちゃったよ」

「………」

「本当はあんな仕事放り出したかったんだけど、お得意様の依頼だったから…」

「………」

「…シズちゃん?」

臨也が来てくれた。そこにいる、と理解が出来た途端嬉しくなった。
反応がない静雄に臨也はそっと近づく。はっとして見れば静雄の周りには空になった酒の缶が転がっていた。

「シズちゃん?お酒、全部飲んじゃったの?」

「…いざや」

「ん、一人で待たせてごめんねシズちゃん。寂しかった?」

「…寂しかった」

「そっか、ごめ、…うわッ」

がばっと静雄は臨也に抱きついた。そのままグリグリと頭を臨也へと押し付ける。

「え、え…シズちゃん?」

「いざや、好き…」

「う、うん?俺もシズちゃん好きだよ…?」

「仕事なんか放って俺の相手しろよぉ…ひっく」

「シズちゃん…?」

「せっかく、会いに来たのに…お前、仕事ばっかり…」

今まで見た事のない恋人の姿だった。
静雄は臨也の身体に腕を回してギュウギュウと抱きしめる力を強める。
メリメリと身体が悲鳴を上げるが臨也はニコニコと笑って静雄を慰める。

「いざやぁ…俺、お前の事、好きなんだよぉ…ぅうっ」

「え、ちょ、シズちゃん!?泣かないで!明日は一緒に居られるから、ね?」

「今日もずっと一緒がいい…」

(シズちゃんってお酒飲むとキャラ変わるのかなぁ…)

甘えたり、泣いたり。普段の怒っている顔とは全く違う彼の表情。
そういえば彼がお酒を飲んでいる所は見た事がなかった気がする。
それがまさか酔うと甘えたがりの泣き上戸だなんて…。
これでは他の奴と飲み会なんてさせたら大変な事になるんじゃないだろうか…。

「じゃあ、今日も明日もずっと一緒にいよう?それならいいでしょ?」

「ん…」

普段は絶対見れないような笑顔で静雄は頷いた。
ああ、こんな顔が見れるならたまにはお酒を飲ませるのもいいかもしれない。

(ただし、俺とシズちゃんの二人だけで、ね)

小さく寝息を立てて寝る静雄の横顔を臨也は幸せそうな顔で眺めた。



(…頭痛ぇ…)
(シズちゃんおはよう!今日は俺シズちゃんとずっと一緒にいるからね!)
(…朝っぱらからうるせぇな。頭痛ぇんだよ、少し黙れ)
(…昨日とのギャップが恐ろしいよシズちゃん…)

―――――
沼地様リクエストありがとうございました!
酔っぱらった静雄の甘えにタジタジになる臨也とリクを頂きました!
酔っぱらった静雄は天使ですね…可愛い襲いたい(心の声
相変わらずの駄文で申し訳ないですが、こんな文章で楽しんでいただけたら幸いです><
ありがとうございました!!


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