ヒーローに復帰してから数日。それは何も変わらない一日になるはずだったのに、その日はとても不思議な日であった気がする。
初めは、トレーニングルームに入ってすぐに。
「タイガーさん!これ、あげる!」
「え?」
トレーニングルームに入って来てすぐにホァンから何かを差し出された。
それはよく見ると彼女がよく食べているシュテルンビルドで人気のフード。
急にどうしたのだろう。
「これね、ちょっと買いすぎちゃって…ボク一人じゃ食べきれないから、タイガーさんにもあげる!」
「お、おお…ありがとうな。でも俺以外にも他に誰か居ただろ?」
「他の人に言っても皆いらないっていうから…タイガーさんなら貰ってくれるかなって」
「そうか。なら、あとで美味しく頂くな」
「うん!」
虎徹はホァンから肉まんを貰うとそのまま奥へと歩き出す。
すると後ろから。
「あ、あの…タイガーさん」
「ん?あれ、折紙…どうした?」
「あの、今度僕と一緒にスシバーに行くって約束…覚えてますか?」
「ああ、覚えてる。えっと…三日だっけ?」
「五日です、タイガーさん…」
「あれ、そうだっけ?」
イワンはしゅん、と暗い表情になる。イワンは日本が好きらしく、日本人である虎徹によく日本の事を聞いていた。
ヒーロー関係でもイワンは虎徹を慕っていて、虎徹は本当にイワンを息子のように可愛がっているのだが。
イワンは少々気が弱いせいで自分に自信を持っていなかった。
「悪い悪い、ちゃんと覚えてるから。そんな落ち込むなって。あー、ならそのスシバー、俺が奢ってやるよ」
「あ、いえ…奢ってもらうのはなんか失礼ですから…」
「んー…ならもっと日本の事教えてやるな?それでいいか?」
「は、はい…!ありがとうございます!」
イワンもホァンも息子と娘のようだ。いずれ自分の娘もあんなふうに育ってくれたらいい、と虎徹は思う。
ホァンから貰った肉まんをモグモグと食べながら歩いていると今度はこちらを見るや否や物凄い形相になった少女が一人。
「…アンタ、何食べてんの…?」
「ああ、ドラゴンキッドから貰った」
「あの子ったらタイガーにあげたのね…」
「なんだ?お前も食べたかったのか?ブルーローズ」
「バッ!違うわよ!私は今ダイエット中なの!!」
「そうなのか?」
不機嫌になったカリーナを、虎徹は首を傾げて不思議がる。年頃の女の子は良く分からない。
そこでふと思い出す。そういえば今度娘の誕生日。きっと自分が選んだものでは嫌がられるに決まっている。
「なぁ、ブルーローズ。今度の日曜暇か?」
「え、…まぁ、暇って言えば暇だけど…」
「一緒に買い物付き合ってくれないか?」
「えッ!!??」
娘の誕生日プレゼントを買いに行きたいんだけど、という虎徹の声はもはや彼女には届いていない。
顔を真っ赤にさせて何やら悶えている。一体どうしたんだろう。
予定はまた後で決めればいいか、と虎徹はその場を離れた。
それからというもの、今日は珍しくキースやアントニオ、ネイサンからもよく話しかけられたり、絡まれたりする日であった。
不思議な日もあるものだ、と虎徹は一人ランニングマシンで走っていた。
「虎徹さん」
「あ?」
横から声がすると思ったら、今度は隣でバーナビーが同じくランニングマシンで走っていた。
こいつは汗かいてもハンサムだな、なんて虎徹は思いながらバーナビーを見た。
「どうした?」
「…いえ、なんか虎徹さん、嬉しそうだったので…どうかしたのかなって思って」
「いやな、なんか今日はやけに皆に絡まれるっていうか、話しかけられるっていうか…」
「そうだったんですか」
普段はこんなに話したりしないのだが、今日に限ってどうしたのだろう。
そういえば、隣にいるバーナビーもあまり自分から話しかけてくる事はないのだが、今日は本当に不思議な日だ。
「虎徹さん、明日…夜、空いてますか?」
「ん?あー…明日は、…ああ、平気だぞ」
「あの、その…、こっ、虎徹さんに…その、食べて、貰いたいもの、が…」
「あ?何だって?良く聞こえな……ん?あれ、アントニオの奴がなんか呼んでるな、ちょっと行ってくる」
ランニングマシンから降りると虎徹は駆け足でアントニオ達が居る方へ向かった。
一方バーナビーは唖然として虎徹が走り去った方を向きながらランニングマシンで走っていた。
「…やっぱり、ちゃんとストレートに誘わないと駄目なんだろうか…」
一人落ち込むバーナビーを遠くでホァンが見ていたのを、バーナビーは知らない。
愛されヒーロー
(バーナビーさん、どうしたの?肉まんいる?)
(あ…うん、一つ貰おうかな)
――――
ぽん様、リクエストありがとうございました!!
ヒーローに愛される虎さんという事で…!!
でも子供組しか出ておりませんが…( ;´Д`)
そしてヘタバニ(ヘタレバニー)
遅くなってすみません(>_<)リクエストありがとうございました!!