トレーニングの後のシャワーは確実に気持ちが良い。
汗を綺麗に流している最中、虎徹はふと自分の身体を見た。
三十後半の成人男性の身体にしてはまだまだ若々しいとは思うのだが。
ふと隣でシャワーを浴びているパートナーの方をちらりと見た。
彼、バーナビーは虎徹の仕事上のバディであり恋人だ。しかも彼は二十代。
こんなオジサンとは違いピチピチの若者だ。
それが今や彼は虎徹に夢中。虎徹しか眼中にない。
彼にはまだまだ未来があるのにどうしてこんな女ではなく歳を食ったオジサンなんかを好きになったのだろう。
世の中不思議である。

「…おじさん、さっきからどうしたんですか。人の事ジロジロ見て…」

「へ?ああ…なんでお前、俺の事好きなのかなーって。ほら、俺お前と歳も離れてるしオッサンだし…魅力なんてどこにも…」

シャワーコックの捻る音が聞こえた。あれ、と虎徹が不思議に思いバーナビーに声をかける。
だが隣から聞こえてくるはずの声はなぜか真後ろから聞こえてきた。

「おじさん」

「ウワァアーッ!?なっ、お前いきなり後ろから現れんなよ!つーか入ってくるなって、狭っ…」

「おじさんはとても魅力的です。まず、腰…」

「のぁあああ!!触るなって!」

「それから太股…いいですか、三十超えたオッサンがこんな細い腰細い脚、小さなヒップなんて世の中の男性を誘っているとしか思えない!」

「なんで男限定なのバニーちゃん。そこはオジサン聞き捨てならないな」

一人専用のシャワールームに大の大人が二人も入って何をしているのかと思う。
虎徹はこの場から今すぐにでも逃げ出したいが、何せ入口にバーナビーがいるものだから出ようにも出れない。
激しく何とかしたい。

「全く、だいたいなんで貴方はこんなに女性のような身体つきをしてるんですか!」

「え!?なんで俺怒られてんの!?」

「男を魅了する要素が溢れ出て…まぁ僕もその魅力に取りつかれた一人なんですけどね」

「ドヤ顔でそんな事言われてもな…全然分かんねーんだけど…。つーかさ、なんで毎晩毎晩俺が下なの?バニーでも良くない?」

「良い訳ないでしょう!なんで僕が下なんですか!おじさんが下に決まってるでしょう!?昨日だってあんなに可愛く喘いでいたくせに…」

「ワァー!ワァー!そんな事言わなくていい!!」

いい加減この場所で言い争いをするのはどうかと思う。
虎徹は全裸であるし、バーナビーは腰にタオルを巻いているとは言え他は何も着ていない。
他のヒーロー達に見つかったりしたら何を言われるか分かったものではない。

「いいですか、おじさん。これから僕が鏑木・T・虎徹という人物が如何に素晴らしく魅力的で性的かを語ってあげます」

「激しく遠慮したいんだけど」

「だっておじさんが言い出したんですよ?自分の魅力が分からないって。だから僕が三日三晩おじさんに添い寝しつつ語ってあげようかと思っているんですが…」

「うん…そんなに語らなくていいし添い寝も必要ないと俺は思うな」

「まず、先程も言ったようにこの身体つきについてですが…」

「言わなくていいっつってんだろ!人の話を聞け!後触るなって何度も言って…っ」

「もっと触って欲しい?なんて淫らな人なんだ貴方は!全く…これだからオヤビッチは…」

「お前の耳都合良すぎだろ!なんなの!?それから俺もういい加減此処から出たいんだけどーッ!!」

シャワールームに寂しく響く虎徹の叫び。
それは誰に届く事もなく消えていった。

「バニーちゃん、落ち着け。な?一回落ち着こう?」

「僕は落ち着いてます。いや…、おじさんの全裸を前に興奮はしていますが」

「ヒィィーッ!!この子怖い!将来が心配だよ俺は!」

「おじさん…そんなに僕の将来を心配して…!安心して下さい。僕の将来はおじさんと結婚して末永くラブラブしながら毎日を過ごす事ですから。何も心配する事はありませんよ」

「それが心配なの!もーヤダコイツ!話が通じない!お願いだから俺と言葉のキャッチボールしてくれよ!」

うわぁああんッ!!と半泣きの状態で叫ぶ虎徹。
それを遠目で見詰める親友アントニオ。
入り辛い。なんて入り辛いんだ。
あんな所で二人して何をやってるんだ。周りの事も考えろ。
心の中で呟いた。

「バイソン君?何をしているんだい?」

「うおぉッ!?スカイハイ…ビックリさせんなよ…」

「すまない、そして、申し訳ない…。しかし君は一体何を…おや、あれはバーナビー君とワイルド君じゃないか!」

おーい、なんて清々しい挨拶をしながら二人に近付こうとするキースをアントニオは必死に止める。
頭にクエスチョンマークを浮かべるキースにアントニオは頭を抱えた。

「…バイソン君?」

「今はアイツらに話掛けるな…ややこしくなる上に面倒くさくなるからよ…」

「??」

シャワールームでほぼ裸の二人の会話をしているようでしていないやり取りを、アントニオは苦笑しながら眺めていた。
ああ、早く出て行ってくれないだろうか。



(おじさん、どこ行くんですか。逃げるなんて許しませんよ)
(いい加減服を着たいんだ俺は!お前も早くタオル一枚だけじゃなくて服を着ろ!!風邪ひくぞ!)
(僕の身まで心配してくれるなんて…!おじさんっ、僕は…!)
(うわぁああ!!俺がややこしくしちまった面倒くせぇえーッ!!)

ーーーーー
なぜ自分が受けなのか悩むおじさんとリクを頂きました!
書き終わってから気付いたんですが、おじさん全然悩んでねぇ…悩んだの冒頭の一瞬だった…。
バニーが予想外の馬鹿になりましたなんでだ…?
期待してくださったらすみません><
リクエストありがとうございました!

『空をとぶ5つの方法』様よりお題をお借りしました。

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