*俳優パロ




「ほい、お疲れさん」

ふと目に前に出された飲み物にバーナビーは驚いた。
たった今ドラマの撮影が終わりほっと一息ついていた時だ。
飲み物を差し出してきたのは、ベテランの俳優、鏑木虎徹。

「…ありがとうございます」

「いやー、やぁっと終わったな、このドラマ」

今日の撮影はドラマの最終回の話。それを全て撮り終えた処だ。
まるで始めから仲のよいメンバーだったと思う。
バーナビーは子役の頃からドラマやバラエティで活躍しており、家を空ける事が多かった。
知らない大人と人生の大半を過ごしており、親と過ごす日は余りなかった。
そんな中、バーナビーの両親は事故で他界してしまい、バーナビーは突然独りになってしまった。
親からの愛情を少ししか受け取らなかったバーナビーは、他人からの愛情を拒むようになる。
この人達と一緒にいたから、親の愛情を受け取れなかったんだ。
こんな仕事をしていなければ、家族と一緒に居られたのに。
そんな思いの中、出会ったのが虎徹だった。虎徹と知り合ったのはこのドラマが初めてだ。
まるで、自分の息子のように接してきて、温かくて、大きな存在だった。

「…少し、寂しいですね」

アドレスも電話も連絡先も交換した。これで一生離れる訳ではない。
なのに、寂しかった。もう、こういったドラマの撮影以外で会えないなんて。

「そうか?またすぐ会えるんじゃねーの?ほら、このドラマ人気みたいだし、映画化とかするんじゃないかって騒がれてるぜ」

「…そうだったら、いいんですけど」

この人に会えるのは嬉しいけど、何か理由がなければ会えないなんて、そんなの嫌だ。
この胸にある想いはきっと恋とか愛とか、そういうモノなんだろう。
自覚はしていた。自分はこの男に恋をしているんだと。
だけど、彼は既婚者であり、娘がいる。撮影時にそういう話を自慢げにしていたのをこっそりと聞いていた。

「僕は、貴方みたいになりたい…」

「ん?俺?」

「もっともっと、虎徹さんを見て、勉強したかった…」

「そんなん、俺が出てるドラマのDVDでも借りて観ればいいじゃねーか」

「画面の中の虎徹さんを見ても意味が無い。現場にいる、僕の目の前にいる貴方じゃなきゃ、意味がないんです…」

役になり切っている貴方ではなくて、本物の彼を見たい。
ずっとずっと見ていたい。そう思えば思うほどその思いは強くなっていって。
いつか、自分でも思ってもいない処で爆発するんじゃないかと、不安で堪らない。

「天下の天才俳優のお前がそんな事言うなんてな」

「僕は天才なんかじゃないですよ」

「良く言うよ…。しょうがねーな。じゃ、今日の打ち上げは俺とお前の二人で行くか」

「え…?」

「本当は皆を誘って行こうと思ったんだけどな」

悪戯に笑う虎徹に、バーナビーは面を食らったように呆けてしまった。
この人は僕の気持ちに気付いていてそんな事を言ってくれたのだろうか。
分からない。分からないけど、最初で最後のチャンスな気がする。
この俳優人生が粉々に砕けたっていい。だから、言わせて欲しい。



演じている役の言葉ではなく、自分自身の言葉で伝えたいんだ。

―――――
俳優パロのリクを頂きました。
すみませ、俳優パロ、難しかった、です…。
グダグダですみません…。リクエストありがとうございました。



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