今日はいつものように眼が覚めるはずだった。けど。
思うように身体が動かない。嫌な機械音も聞こえる。
やっと頭が覚醒し始めた頃。今俺が置かれている状況が理解できた。
眼隠しをされ、猿轡をされ、腕を後ろ手に縛られて、下半身に細かく振動する何かが取りつけられている。
最悪だ。こんな事するやつは一人しかいない。声を発したくても出るのはぐもった声。
縛られた紐を千切ろうとしてもなぜか身体が自由に動かない。なんだ、これ…。

「あ、シズちゃんやっと眼が覚めた?」

聞きたくない声が聞こえた。なんだよこれ。なんでこんな事するんだよ。

「今日はね、シズちゃんがなかなかコレを使ってヤらせてくれないから、ちょっとした遊びをしようと思ってね」

最悪だ最悪だ最悪だ。臨也が笑っているのが分かる。ムカつくムカつく。
俺は手前の玩具じゃねぇんだぞ。なのに、なんでこんな扱いされなきゃなんねぇんだよ!
そう思って少し身体を動かした時だった。俺の中に入っていた物が動き出した。
クスクスと臨也が笑う声がする。こいつ、なにしやがったんだ…!?

「シズちゃん、ビックリした?ふふ、身体がビクンって震えてたよ。今日はね、果たしてシズちゃんはこんな玩具如きで達してしまう淫乱なのかって事を調べようと思ってさ」

ヴヴヴ、と嫌な音を立てて俺の中に入っている玩具が動き出す。
微妙な振動が俺の緩い快楽を引き立てる。逃れようと身体を動かしても、逆に深い快楽の元へと堕ちて行ってしまう。
俺はきっともうこの快感からは逃れられない。

「ん、ううーッ!ンむーッ」

「あははは、ほら、まだメモリは“弱”だよ。この程度で音を上げちゃ駄目だからねシズちゃん」

もっと楽しませてよ。
耳元で囁く臨也の声にさえ反応してしまう俺はなんて浅はかなんだろう。
意志とは関係無しにこの身体は勝手に小さな快楽さえも拾ってしまう。憎らしいこの身体。
目の前が見えないからだろうか。いつもより身体が快楽に忠実な気がする。

カチリ、と音がしたと同時に中のモノの震えが増す。
俺の中に入っている玩具にはイボのようなモノがくっついているらしく、それが時々前立腺に当たる。
その度に俺の身体はビクビクと震えあがる。どうしよう。気持ちが良い。

「ほら、今度は“中”だよ。まだ“強”じゃないんだから勝手にへばらないでよね」

「ぐ、ぅうー…ッ」

涙が出てきた。悲しいとか苦しいとか、そんな事は思っていないけど、勝手に出て来るんだ。
臨也は本当に俺を愛しているのだろうか。こんな事をするくせに、俺に好きだとか愛してるだとか言いやがって…。
アイツは本当に愛の意味を分かっているのか?ああ、今はそんな事はどうでも良かったんだった…。
ぼぉっとしていたら急に両足を掴まれて広げられた。今自分がどんな格好をしているのか見たくない。
嫌だ嫌だ。何をする気なんだよ。
ヌル、と俺自身を掴まれて根元に何か紐のようなものを巻かれた。

「んぐッ!?んンーッ!!」

「ああ、ごめん、痛かった?でも我慢してね、シズちゃんの為だから」

俺の為?何を馬鹿な事を言ってるんだコイツ。さっきまで達しそうだったのに、根本を縛られたからイクにイケない。
苦しい。これは本当に苦しい。しかもまたカチリと音がして中のモノが暴れ出すように振動し始めた。
気が飛びそうだ。満足に息も出来ていないうえにこの快楽。

「んッ、ンん!ぐ、うッ…んぐぅーッ!」

「…なーんか色気のない声だなぁ。もう猿轡取っちゃおうか」

半分頭がぼぉっとする中聞こえてきたのは臨也の声。シュルシュルと口に宛がわれていた布が外された。
漸くまともに息が出来ると思ったのは間違いだった。

「あぅッ、あ、あ、やぁあッ…!」

「うんうん。やっぱりシズちゃんはソッチの声の方が可愛いよ」

喘ぎ声が止まらない。ピクピクと反応する自身が分かる。嫌だ。
なんだよコレ。もう嫌だ。達したいのにイケない。苦しい。助けて。

「ぃ、…いざやぁ…ッ、も…い、イきたい、ぃ…ッ」

「もうちょっと待っててね。この玩具結構性能良くてさ…こんなボタンもあるんだよ」

またカチリと音がした。今度はまともに息ができないくらい激しいものだった。
グリュグリュと中を削るように蠢くソレ。頭の中が真っ白になる。怖い。
自分が自分でなくなるようで凄く怖い。なんだよ。なんなんだよ、これは…!

「ひぎぃい…ッ、ぅあッ、やぁ、やだ、やだぁ…こわれ、るッ…!」

「壊れてみなよ。俺がちゃあんと見ててあげるからさ」

またカチリと音がした。あー…一瞬意識が飛んだ。
もう良いか。もう意識飛ばしてもいいか。こんなに苦しいのはもう嫌だ。

「ひ、ぃ、…あッ、ァああーーッ…!」

射精した感じはあるのに、精液は出ていない。はは、…空イキかよ…。
臨也が笑う声が聞こえる。そんなに可笑しいなら声を上げて笑えよ。
ムカつくだろうが。あー…もう本当に嫌だ。

「シズちゃん、空イキしちゃったね。しかもこんな玩具如きで。はは、シズちゃんのいんらーん!」

「は、はぁ、…ッるせぇ…。て、めぇなんざ…俺がぜってぇ、殺して、やる…」

「そんな格好で言われても全然怖くないし。逆に俺がもっとシズちゃんの事たくさん啼かしてあげるから」

そう言いながら臨也が俺の眼隠しを取る。今まで真っ暗だったものがいきなり明るくなるもんだから光が眼に入って痛い。
眼が光に慣れてきた頃。この日初めて見た臨也の顔は満面の笑みだった。
それも異様にスッキリした感じに光って見えた。なんだコイツ。気持ち悪い。

「これでシズちゃんは玩具相手にイっちゃう淫乱だって事が分かったから、俺は満足かな」

「は、…悪趣味な野郎だな…」

「でね、さっきのやつビデオに撮ったから、今度はそれ見ながら羞恥プレイでもしようね、シズちゃん」



(…もうしらねぇ)
(あ、そう?じゃあその録画したやつ編集してネットで売ってもいいんだね?)
(そうは言ってねぇだろうが!!くそ、その録画したヤツ、出せ!壊す!)
(そんな事言われて出す馬鹿が居る訳ないでしょ。シズちゃんって本当に馬鹿だね)

―――――
ero有りなくせに短いっていう…。
今度はドロドロな話を目指す。

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