躯中のズキズキとした痛みがうっとおしい。痛い。苦しい。躯中の血がドクドクと廻っているのが分かる。

『ねえジェイク?このまま続けても深夜のHERO TVは視聴率が悪いから、次の試合は明日にしない?』

遠くでアニエスの声が聞こえると、虎徹はぼんやり理解する。

「あー…そうだなァ。クソヒーロー達が俺様に無様に殺られる姿をゴミ共に見せれねェのは残念だからなァ…次の試合は明日にするかァ!でも…」

誰かが近づいてくる。この派手な男は、誰だっけ。頭がグラグラして痛む。
ガッ、と髪を掴まれてやけに派手なクマのぬいぐるみに顔を近づけさせられた。
なんだこのクマ。可愛くない。でも、どこかで見覚えがある。

「お前らが変な事を起こさねェように、こいつはそれまで俺が預かっておく。いいだろォ?お前らが何かしたら、その瞬間コイツを殺す」

『えっ、ちょ、待って!タイガーは瀕死の傷を負っていて…ッ!』

アニエスの必死な声が聞こえて、虎徹は声を上げようとグッ、と腹に力を入れる。
躯中がミシミシと悲鳴を上げて血が流れるが、今はそんな事どうだっていい。
自分が此処で人質になって翌朝まで市民が守れるなら、それはヒーローとして喜ばしい事だ。

「ァ、ニェ…、俺は、平気…だから、グッ…!」

「ほらなァ?コイツも平気だっつってんだろォ?じゃあな」

ブツリと回線が切れる。掴まれたままの髪がブチブチと音を立てて抜け落ちた。
息をするのが精一杯。このまま朝になるまで自分は生きているのだろうか。

「さァて、朝まで暇になっちまったなァ?」

「そうですわねジェイク様。お茶でもお飲みになります?」

「いや、茶はもういい」

そう言ってジェイクが見たのはボロボロのヒーロースーツーを纏い転がされている虎徹。
ニヤリと口角が上がる。ジェイクは虎徹に近づくと。

「どうせだからコイツで遊ぶかァ!なァ、“クソコテツ”よォ?」

これが悪夢の始まりだった。



普段は排泄する場所にグロテスクなモノが入っている。痛くて痛くて、叫び過ぎて声が枯れ出てこない。
夢だ。これは夢なんだ。俺はただ悪夢を見ているだけなんだ。これは相棒をキチンと信じていなかった俺への罰なんだ。
そう思わなければこのまま死んでしまいそうだ。

「ひ、っひ、ぎッ、あああぁーーッ!!」

「んー、男にしては絞まり具合がいいなァ」

グチグチと男の性器が中を行き来する。男性の性器を受け入れたのは初めてではないが、慣らされて入れられていない分、入口が裂け血が流れていた。
今やその血も動きを良くする物に変わりつつある。

「っあ、あ、はっぁ、んンーッ…!」

「超気持良いじゃねェか…よし、気に入った!お前、俺の愛人にしてやるよ。嬉しいだろ?嬉しいよなァ?」

「ぃ、いや…ぃやぁ!ぅあッ、ぐ、う゛ぁああーー!!」

嫌だ、と言った途端また動きが激しくなる。身体中にある傷から血が滴り落ちる。
ああ、このまま出血多量で死んでしまうのではないだろうか。

「この俺様がっ!直々に!言ってやんてだ、っぞ!!ありがたく思えよクソヒーロー!!」

「ひぅ、ぐッ、はぁ、あっあ、―――」

「…そういや、次の対戦相手はお前の相棒だっけかなァ?えー…バ、バー…なんだっけか?」

「バーナビー・ブルックスjr.ですわ、ジェイク様」

「ああー、そうそう!そんな名前の赤いやつ!今度はそいつの目の前でお前の事グチャグチャにしてやるよ。面白そうだろォ?」

なんで最初からバーナビーが負ける設定になっているんだろう。
彼は自分とは違って頭が良いからこんな簡単に負けるはずない。

「負けるはずがない、って。なァに言ってんだか!俺様に勝てるはずねーだろうが。“聞こえてんだよ、ぜーんぶな!”」

ゲラゲラと笑う男。こんな男に負けたのか。悔しくて。次に戦うバーナビーに何かアドバイスでもできたら良かったのに。
骨が軋む音が聞こえる。バーナビーも、コイツに負けたら自分のようになってしまうのだろうか。
それだけはなんとしても避けなければならないのに。守ってあげなければ、いけないのに。

「バ、ニぃ、には…ぁ、手を、出すな…ッ」

「へェ?その威勢の良い眼。嫌いじゃないぜ?でも、ざぁんねーん!その“バニーちゃん”とやらも、俺に殺られちまうんだよ!!」

「ひッ――!あ゛、ああぁッ!ひぎ、ぅ、ううッ…が、ァ!」

悪夢以外のなにものでもなかった。助けてと手を伸ばした。でも、その手は誰に届く事もなく、ぱたりと地に墜ちた。
こんな汚くなってしまった自分を誰が助けてくれるんだろう。
死ぬ前に、ちゃんとした自分の言葉で傷付けてしまったパートナーに謝りたかった。
嗚呼、でもこんなにグチャグチャになってしまった自分の言葉を彼は聞いてくれるだろうか。
こっちを向いてくれなくていい。伝えたい。謝りたい。生きたい。
揺れる視界。甲高い笑い声。軋む身体。滴る血。
虎徹の意識はそこでブラックアウトした。



次に眼を開けたのは、誰かの腕の中にいた。
見覚えのあるブロンドの髪に、エメラルドの瞳。赤いヒーロースーツ。

「ぁ、…れ、…バニー…?」

「ッ…、おじさ…、良かった…」

安心しきったようなバーナビーの顔。どういう事だろう。
疑問ばかりが頭に浮かんで声が出ない。顔が少し傷ついてる。
という事は彼は勝ったのか?クリームの姿もジェイクの姿も見えない。

「虎徹さ…、すみません、でした…」

「は、ぁ…?…んで、お前が謝るんだよ…」

「虎徹さんは、僕の事、信用していなかったんじゃなくて、心配していたんですよね…。なのに、僕は…」

しゅん、と項垂れバーナビーは虎徹の身体を強く抱きしめた。
それが少し身体に響いて虎徹は顔を歪めた。

「はは…、でもあれは俺も悪かった訳だし…。俺の方こそ、悪かったな」

「いえ、そんな事は…!」

「これからは、ちゃんとお前の事、信頼、するから…これからも…お前のバディで居させてくれるか…?」

でも、こんなグチャグチャなオジサンじゃ駄目かな、なんて言う虎徹をバーナビーは泣きそうな表情で見つめた。

「っ…虎徹さんじゃなきゃ、僕のバディは務まりませんよ…僕には、貴方が必要なんです…、貴方じゃなきゃ、駄目なんです…ッ」

「お前が泣いてどーすんだよ…、あーあ…ほら、また腹の傷が開いて血が…」

そう言うとバーナビーは慌てて虎徹を救急車に運び入れる。
いつものクールではないバーナビーを見て虎徹はクスリと笑う。



望むのはただ、ハッピーエンドだけさ

―――――
ジェイ虎のリクを二つ頂きました!ジェイ虎、好きです…無抵抗な虎mgmg←
ジェイクの喋り方が私の中で曖昧すぎてパーン!!
ハッピーエンドで終れたのか不安たっぷりですが、リクエストありがとうございました!!



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