厄介な男を預かる事になった。数年前に両親が何者かに殺されて突然一人ぼっちになってしまったという少年。
ああ、今はもう青年と言った方がいいのだろうか。
俺の知り合い…というか仕事上の上司である人から彼を暫く預かってくれないかと頼まれた。
預かるって…え?なんで俺?いや確かに一人は寂しいなぁとはボソボソ言ってましたけど!
よりによって男とは…しかも俺よりもかなり年下。上手くやっていけるかとても心配。
という訳で、俺、鏑木・T・虎徹の一人暮らし用の部屋にバーナビー・ブルックスJr.がやって来ました。

「は、はじめまして?俺、虎徹っていうんだけど…バ、バーナビーで…いいの、かな?」

「………」

無視ですよ、どうします?
これから俺の家に世話になるのに何も言わない訳?
これだから最近の若いのは…!沸々と湧きあがる怒りを精一杯抑え込む。

「…僕は」

「へ?」

「僕は、貴方の世話になろうなんて思っていません」

「ああ、そう。いいよ、俺が勝手にやっから」

「マーベリックさんが言わなければ、誰がこんな…僕にはやるべき事があるのに…」

彼は両親を殺した犯人を探し続けているのだという。そうでもしないと、心の空白を埋められないのだろう。
最近の子は自分の気持ちを全然言葉にしないから、おじさん大変だよ。
俺の能力はテレパスじゃないからお前の考えてる事分からないんだ。だから、少しでいいから言葉にしてほしい。
って、今はまだ出会って数分な訳だからそんな簡単に心を開いてくれないか。
こいつ、めんどくさそうだもんな。俺、めげないぜ!

「あ、そうだ。お前腹減ってないか?チャーハン作ってやるよ!」

「結構です」

「むむ、ならお前の好物を教えてくれよ」

「何故ですか?」

「何故って…作ってやるから」

「迷惑です」

あれ、コイツ思ったより手ごわいぞ。俺とコイツの間にある壁は相当頑丈なんだな…。
一気に壊すんじゃなくて、少しずつ壊していくか。
伊達に正義の壊し屋してないぜ!!

「なら、魚肉ソーセージのマヨネーズ和えとか…」

冷蔵庫を漁っていたら、突然腕のPDAが鳴りだした。これは仕事の合図。
ああ、なんでこんな時に集合を掛けるんだよ空気読めないな!! 
うう…でも行かないとロイズさんに怒られるし…仕方ない。

「悪いバニーちゃん!急に仕事が入っちまった!冷蔵庫勝手に漁っていいから先になんか食べててくれ!」

「は?ちょ、貴方今なんて…」

バーナビーの引きとめる声が聞こえたがそれを無視して俺は現場へ向かった。
ああ、本来ならここで一緒に食事して親睦を深めるはずだったのに…。
くそ、なんでこんな時に事件が起こるんだよ!どこの誰だか知らないが今日という今日は許さねーぞ!!

と、ヒーロースーツで颯爽と駆けつけて頑張ろうとしていたのに案の定他のやつらに良い処を取られて、俺の出番は結局無し。
ああ、これじゃあまたロイズさんに怒られる…。しょんぼりしていると、肩をポンと叩かれる。

「どうした虎徹。元気ないな」

「アントニオぉおー…聞いてくれよぉー…」

学生時代から付き合いがあるアントニオ。ヒーロー時はロックバイソン。
因みに俺のヒーロー時の名前はワイルドタイガー。カッコイイだろ!
って、そうじゃなかった。ぶつくさとアントニオに今日の出来事を話す。

「へー…それはまた、大変だな」

「大変も大変、素直じゃねーし、ツンツンしてるし、眼鏡だし、ハンサムだし…」

「で、お前…そいつを置いて出てきたんだろ?いいのか?」

「はッ!!」

忘れてた!今回は俺は全く活躍出来なかったから力を使っていない。
能力を発動させてダイレクト直帰をする。これ、本当は会社で禁止されてて使っちゃいけねぇんだけど、今日は仕方ないよな。

「バニーちゃん!ごめん!ただいま!!」

急いでリビングへ向かうと、バーナビーは不貞腐れた顔で俺をジロリと睨みつけてきた。
そのままズンズンと俺の方へ向かってくると。

「おじさん」

「ん?」

「その、バニーちゃんって呼ぶの、止めてもらえませんか」

「なんで?可愛いだろ?兎ちゃん」

「僕の名前はバーナビーです!」

「うん。知ってる。でも、これから一緒に住むんだから仲良くする証として、俺はお前の事バニーって呼ぶから」

そういえばバーナビーは呆れたように、ハァと溜息を吐いた。
バニーちゃん、兎みたいで可愛い愛称だろ?髪はクルンと跳ねてるし、そのなんかツンツンしてるのが兎っぽいし。
ピッタリだと俺は思うんだがなぁ。

「あ、そうだ。お前やっぱもう飯食べた?」

「…いえ……」

「そっか。俺腹減ったからなんか作るけど、バニーも食う?」

「……少しだけ、頂きます」

なーんだ。やっぱコイツも空腹には勝てないんだなー。可愛い処もあるじゃんか。
へへ、と笑うと気持ち悪いと一刀両断された。
俺…これからコイツと仲良く出来るのか…?仕事もコイツとの関係もお先真っ暗だぜ…。



(じゃーん!俺特性のマヨネーズたっぷりチャーハン!)
(………)
(あれ、もしかしてグリンピースとか食えない?)
(いえ、これ…マヨネーズ掛け過ぎじゃないですか?ご飯が見えない…)
(え?俺はいつもこんな感じなんだけどな…)
((…この人、いつもどんな食事をしてるんだ…))

―――――
設定的には、虎さんは20代後半、兎は10代後半。
虎さんはすでにアポロンに所属。ヒーローに成り立てで、兎には自分がヒーローだって事は伝えていない。
兎はツン全開。虎の仕事がヒーローだって事は知らない。

みたいな!


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