「オレさー!処女は絶対日々也にあげるって決めてるんだー」

「突然なんなのデリちゃん。津軽がいるんだからそういう話は止めてよ」

「しょ、じょ…?」

「ほら!津軽が変な言葉覚えちゃうでしょ!こんな馬鹿な弟を持ってお兄ちゃん大変だよ…」

臨也は必死に今の会話を聞かないようにしていた。こんな人間染みた会話、面白い事このうえないのだが、何せ会話しているのは人間ではない。
ボーカロイドだったり思念体だったり…。アイツら本当に人間じゃないの?溜息まで吐いてるよ?
いや創ったのは俺なんだけどさ。と、臨也は一人表情には出さずパソコンを見つめる。

「サイケ、しょじょ、って…何?」

「馬鹿!デリちゃんの馬鹿!僕の津軽が汚されちゃうでしょ!津軽はずっと純白なままがいいのに!」

「えー?でもサイケだって津軽とヤりたくねーの?」

「う、そりゃあヤりたいけどさ、津軽には痛い思いさせたくないし…って、何言わすんだよ!!」

「イテッ!!」

「サイケ、叩いちゃ、駄目、だろ…?」

「あっ、あ、ごめんね津軽!苛めてる訳じゃないんだよ?これは全部デリちゃんがいけないんだから」

「えぇー?オレぇー?」

なんて会話をしているんだあの子達。動揺で手元がプルプルと震える。

『ねぇ、臨也。ソトの連中の会話止めさせてくれないかな。つきちゃんに毒なんだけど』

「いや、俺だって止めさせたいけど…気になるっていうか…」

『ああ、今後に役立てようとか思ってるわけ?気持ち悪い』

「うっさいなぁ!そんな事思ってないよ!六臂、俺の事嫌いでしょ?」

『良く分かったね。前々からそういう態度とってたと思うんだけど。鈍いな』

コイツ…!!六臂はパソコンの中に住んでいるソフトである。勿論コチラ側には出てこられない。
パソコンの内側から俺を蔑むように、憐れむように見下してくる六臂に思わずぶん殴りたくなったがそんな事したら俺のパソコンが壊れるだけだ。
しかも六臂は高性能のソフトだがら無くしたらもう二度と手に入らない…。
もどかしい苛々が駆け巡る。

『あの、あの…六臂、ごめんなさい。あそこの文字が読めなくて…』

『ん?ああ、ごめんねつきちゃん。それじゃあ、臨也』

「………」

俺、これからシズちゃんに会いに行こうかな。なんだか居場所がない気がする。
可笑しいな。ここ、俺の家だよね…?え…?
溢れそうになる涙をぬぐいながら俺は池袋へと駆けた。

鹿

(うわぁーんシズちゃぁああん!!)
(出たなノミ蟲!!死ね!消えろ!池袋に来るな!!)

―――――
日々也は外室中でした。

『空を飛ぶ5つの方法』様よりお題をお借りしました。


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