「あぁ〜〜…、暑ぃい〜〜…」

トボトボと街中を歩く。尋常じゃない暑さ。熱気。
太陽がカンカンと照りつける。両手で扇いでも涼しい風はやって来ない。

「あぁ、ああああ〜〜…うぁあああ」

「煩いですよおじさん。こっちまで暑くなりそうです」

「だってよぉー…暑いもんは暑いんだからしょうがねぇだろぉ…。つーか、なんでお前そんな涼しそうなわけ?」

「風通しの良い最新のブランド物の服ですから。おじさんのとは作りが違うんです」

「さりげなく俺の事蔑むのやめろよな」

クールに、なんの変哲もないバーナビーに対して虎徹はもう暑くて堪らない。
いくら日陰に行こうにも温度は全く変わらない。

「ったくよー…、なぁんでわざわざこんな暑い中パトロールだのなんだのしなきゃなんねぇんだよー…」

「仕方ないでしょう。会社からの命令なんですから」

「お前はいいよな。風通しの良い服着て。俺なんて年がら年中…」

「黙ってて下さい」

「ぐ、うう〜〜…」

暑い。スタスタと歩くバーナビーは後ろでトボトボ歩く虎徹の体調に気付かない。
汗が全身から噴き出す。頭が痛い。身体が重い。目の前がグラグラする。
前を歩くバーナビーに追いつこうと少し駆け足で行こうとした瞬間、脚がもつれた。
受身を取ろうにも目の前が真っ暗で、虎徹は自分でもどうなったのか分からず、そのままべしゃりと熱いアスファルトの上に倒れ込んだ。

「…ッ、…おじさん?」

「あー、あー…バニー?ちょ、ちょっとアスファルトが…、熱ッ!、え、ヤベー…世界が回ってやがる…」

「ちょっと、おじさん、大丈夫ですか?しっかりしてください!」

「しっかりったって…、目の前がグラグラして、立てな、…ぅ、わッ!」

感触的に抱きかかえられたのは分かった。しかも初めて出会って最初にやられたお姫様抱っこだという事も。
心配そうに虎徹の顔を覗き込んでいるバーナビーの顔も見えた。

「いや、…あのさ、お姫様抱っこは止めてくんない?どんな羞恥プレイなの」

「一回したじゃないですか。TV中継で」

「あれはしょうがなかったんだよ!今は別にいいだろ!もう自分で歩ける!…多分」

「多分でしょう?ほら、涼しい処、行きますよ。飲み物も買ってきますから」

連れて行かれたのは近くのビジネスホテル。ロビーにあるベンチに座らされて、そのまま大人しくしていろと言われた。
軽い熱中症だろう。こんな歳にまでなって自分の限界が分からないなんて。
と、虎徹は溜息を吐いた。情けない。大の大人がこんな事で…。

「おじさん、ほら。水です」

「おおー、ありがとうなバニー。…迷惑かけて、悪いな…」

自分の方が先輩なのに。きちんと先輩らしい事を教えてやりたかったのに。
いつもどこかで失敗する。俺、ドジっ子なのか?と一人考え始める。

「おじさんのドジは、いつもじゃないですか。別に今更どうって事ありません」

「ああ…そう」

「それに」

「ん?」

バーナビーは虎徹の隣に腰掛けると、虎徹に渡したミネラルウォーターを奪い飲んだ。
虎徹が口を半開きにしながら唖然としていると。

「僕もパトロールはつまらないと思っていたので。サボれる口実が出来て良かったと」

「…あー、そうですか」

この男、実は腹黒いんじゃないかと虎徹は思った。
そんな暑い夏の日の事。



(バニーちゃん)
(…なんですか)
(アイス食べたい)
(知りません。自分で買ってきて下さい)

―――――
途中から×な関係じゃなくて+になった!
でも兎虎!
熱中症には気を付けてください!
そして相変わらずタイトルのネーミングセンスがない私!






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