「空を飛ぶって、気持良いのか?」

虎徹の突然の発言にキースは驚いた。
キースの能力は『風』を自由に操れる事だ。故に空を飛ぶ事も風を使えば容易い。
虎徹は羨ましそうにキースを見つめた。

「俺、一回でいいから空を飛んでみたいんだよなー…」

「ワイルド君は良く空を飛んでいないかい?」

「あれは宙に浮いてるだけだっての。鳥みたいに飛んでるわけじゃねーよ」

ハンドレットパワーを使っても空は飛べない。鳥にはなれない。
虎徹は溜息を吐いて窓から外を眺めた。
その様子はまるで子供。夢を諦めていない子供のようだとキースは思う。
出会った頃から思っていたが、虎徹はまだ心の中に幼い頃の自分がいるのではないだろうか。

「あ、お前今俺の事ガキっぽいって思っただろ?」

「いや、そんな事はないよ。夢があっていいじゃないか。素敵だと、私は思うよ」

「ん、そっか」

笑った顔は、幼さが残る。くすぶる想い。優しい優しい虎は、自身が傷ついている事に気付いていない。
可哀相な虎。これ以上傷つかないように、温かい風で守ってやならければ。
キースはぎゅっと拳を握る。

「…今度、一緒に空を飛んでみるかい?」

「え?いいのか?」

「ああ!君の頼みとあれば空の一つや二つ、飛んでみせるさ」

「空の一つや二つって…空は一つだと思うんだが…。まあ、いいか。ありがとなキース」

空を飛んだ時、彼はどんなふうに笑うのだろう。いつも見る笑った顔ではない笑顔だろうか。
きっと、くしゃりと顔を歪めて子供のようにはしゃぎ、笑うのだろう。
それを想像しただけで嬉しくなった。早く、早く彼の笑顔がみたい。

「いつ、飛ぼうか。明日?それとも明後日?」

「ちょ、おいおい。焦んなって。空は逃げねぇんだからさ」

空は逃げなくても、君は逃げていくのだろう?キースは声には出さず、心の中で言った。
最近相棒になったという新人のバーナビー。
いつか、彼に虎徹を取られてしまうような気がしてならない。不安なんだよ。
君がいなくなってしまいそうで。

「それに、キング・オブ・ヒーローは忙しいんじゃねぇのか?」

「君の為なら時間は開けておくよ」

「そこまでしなくていいって!これは俺のちょっとした願望なんだしよ。もっと気軽に…」

「私にとっては、とても大切な時間さ」

君と二人きりで過ごす時間だからね。言ったつもりはなかったのだが、どうやら口に出ていたようで目の前の虎徹は眼を丸くして驚いた顔をしていた。
しまった、とキースは慌てたが、逆に虎徹は声を上げて笑いだした。

「あっははは!そうだな。二人きりで空中デートってか?はは、あははは!!」

「ワイルド君、そんなに笑わなくてもいいだろう!」

「ふひひひ、いや…悪いなっ、じゃあ、今度お前との空中デート、楽しみにしてるぜ」

からかったつもりなのだろう。虎徹はキースの肩にぽん、と手を置き楽しみにしているとだけ囁くとそのまま部屋を出て行ってしまう。

「…彼は、私の気持ちを知ってて言っているのだろうか…」

簡単には捕まらない虎。彼を捕まえられる日はやってくるのだろうか。



この腕に虎を抱くのはいつの日か

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キースさん、イケメソすぎる><
5話、めちゃくちゃ可愛かった…。


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