俺が好意を寄せる男には、すでに恋人がいて。
しかもそれが実の兄弟だなんて知ったら、腹が煮えくりかえる程の悔しさを覚えた。
ねぇ、どうしてどうしてどうして。

「シズちゃん…」

俺の視線の先には兄弟仲睦まじく会話している二人がいる。
平和島兄弟なんて、巷じゃ噂の兄弟だ。兄は池袋最強の喧嘩人形で、弟はイケメン俳優の羽島幽平こと、平和島幽。
俺、折原臨也はその兄弟の兄である平和島静雄に恋をしているのだが。
どうも俺はその平和島静雄、改めシズちゃんに嫌われている。
ま、それは俺のせいなんだけどさ。自業自得ってやつ?
弟の幽君は表情を顔に出さない。理由はなんでかは知らないけど、幼い頃からなんだって。
俺はシズちゃんに嫌われていて、俺はシズちゃんが好き。
シズちゃんには怒りや憎しみでもいいから俺だけを見て欲しい。
いつもは喧嘩ばかりしている俺だけど本当は俺の事を、俺だけの事を見て欲しい。
だから、まず先に弟の方を始末しようって考えた訳。
本当は粟楠会の連中でも使おうかと思ったけど、やっぱりこういうのは俺の手でやった方がシズちゃんの目を向けられるよね。

「という事で、幽君。連れて来ちゃった」

「意味が分からないんですが」

シズちゃんと別れた幽君の後を付けて、そのまま幽君を無理やりラブホへ連れて行った。
抵抗ぐらいするかと思ったけど、以外にも幽君は冷静に俺に連れて行かれてきた。
表情が変わらないから何考えてるか分からない。

「シズちゃんを奪えないなら、まずは幽君をどうにかしようと思ってさ」

「…俺、ですか」

「シズちゃんは君を凄く大切にしているからね。幽君に何かあったらシズちゃんはまた俺に眼を向けるだろう?」

「狂ってますね」

「自覚しているよ」

幽君がふっと笑った気がした。まるで俺を挑発しているようだった。

「俺をどうするつもりですか?」

「殺しはしないよ?シズちゃんが悲しんじゃうからね…。さて、どうしようか。ラブホまで来たし、ヤる事ヤっちゃう?」

これは流石に動揺ぐらいするだろうと思った。だけど、幽君は逆に、俺でも分かるぐらい笑顔で。

「いいですよ。それで貴方の気が済むなら」

「え…」

「何を驚いてるんですか?貴方が言いだしたんですよ」

腕を掴まれた。シズちゃんも馬鹿力だけど、まさか弟まで。ギリギリと物凄い力で腕を掴まれ締め付けられる。
これはまさか、俺の方がはめられたのか?

「俺の事、満足させてくださいよ、折原臨也さん?」

そう言った幽君の顔は、少しだけどシズちゃんに似ていた。


♂♀


「ん…」

ああ、まるでシズちゃんとセックスしているかのようだ。
なんだろう、この幸福感は。分からない。俺の下で啼いているのは、誰?

「ふ、…臨也さん、動きが止まってますよ…?」

「ッ…」

「ぁッ…、俺の事、兄貴だと思ったんでしょう…?っは、…どうですか、俺の演技は」

「くそ…ッ」

「ひゃ、あ…ァあ」

舐められている。完全に、俺の方が幽君の手のひらで転がされている。

「これに、懲りたら…、もう兄貴には、手を…出さないで下さい」

兄貴は俺のモノなので。
そう言い放った幽君の顔は満足げで。まるでお前に入り込む隙間など無い、と言われたかのようだった。
でも、俺がそんな事言われたぐらいで諦める男だとでも思ったのかな?
知ってるかな。俺は狂ってるんだよ。
シズちゃんと幽君が恋人同士だったとしても、奪ってみせるよ。だって俺はそういう男だもの。

「あんまり、俺を舐めるんじゃないよッ」

「ふァ!あ…ん、」

「俺は、自分の欲しい物は手元にないと嫌な性格でね。それが他人のモノなら尚更だ」

「ふ、…やってみてください。俺は…負けません、よ」

お前には無理だ。と視線が言っている。この挑発的な瞳。
嗚呼…、グチャグチャにしたくなる。

「ん、ぁ…!っひ、ぁあ…く、ぅ」

「随分気持ち良さそうだけど?感じちゃってるの?」

「そりゃあ、突っ込まれて掻き回されれば男だって、感じます、よ…。それに、やっぱり兄貴とヤる方が数倍、気持ち良い」

「…そうやって、俺とシズちゃんを比べるの、止めてくれないかな」

「どうしてですか?兄貴が抱いたこの身体を臨也さんも抱いてるんですよ?これはただの個人的な感想です」

やっぱりこの男は裏が読めない。シズちゃんは裏が無いけど、弟が逆に謎が多い。
ああ、嫌いだなぁ。俺はこの男が嫌いだ。
表裏が無い人間は、嫌いだな。胸の中がモヤモヤする。

「…俺は君が嫌いだな」

「奇遇ですね。俺も貴方が嫌いです」

俺は一生この男と仲良くなれない。そう直感した。

「大嫌いだから、…いっそどこかでのたれ死んでくれませんか」

「ふ、…俺も全く君と同じ考えだよ」

考える事が一緒とか、嗚呼…反吐が出るよ。



勝つのは、どっち?

――――――
すみません!大変遅くなりました静様!
と、とりあえずリクエストにあった三つの関係をいろいろ含めようとした結果が…。
グダグダですみません…!!
リクエストありがとうございました!!


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -