五月四日は、俺、折原臨也の誕生日である。
記念すべき俺の誕生日に誰も俺を祝いに来ないってどういう事!?
新羅とかドタチンとかは普通俺におめでとうの電話とかメールぐらいするでしょ!
シズちゃんは…一応恋人同士だけど、まずシズちゃんは今日が俺の誕生日だって事知らないんじゃないかな…。
あれ、なんだかとっても哀しくなってきた。
「…仕方ない。今日は一人寂しく鍋でも食べるか」
波江さんもさっさと帰っちゃったし。こんなに寂しい誕生日を迎えることになるなんて思ってなかったよ。
がしゃがしゃと鍋セットを出している最中、ピンポーン、と玄関のドアホンが鳴った。
どうせこの前頼んだモノだろうと思い、少し気分が沈んだ様子でドアを開けると。
「よ、よぉ…」
「……シ、ズちゃん…」
照れ臭そうにシズちゃんが立っていた。珍しい。ドアも壊さずインターホンを鳴らすなんて。
天変地異の前触れだろうか。
「てめぇ、今俺に対してすっげぇ失礼な事思っただろ。帰るぞ」
「うわあ!ごめん!いきなりシズちゃんが訪ねてくるもんだから、ビックリしちゃって…」
シズちゃんが来てくれた事が凄く嬉しい。だって来ないものだとずっと思ってたから。
シズちゃんの手を引っ張り中へ招く。中途半端に鍋の準備をしてたけど、これはもしやシズちゃんと一緒に鍋食べれるかも!
「シズちゃん、これから鍋しようと思ってたんだけど、食べる?」
「ぁ、お、おう」
なんだろう、この若干ぎくしゃくした感じは。おかしいな。俺達恋人同士だよね?あれ?
雰囲気に違和感を感じつつも俺は鍋を準備する。今日は何鍋にしよう。
シズちゃんは辛いの苦手だからキムチはパス。豆乳鍋にでもしようかな…。
「ぁ、あのよ臨也…」
「んー?何ー?」
「こ、これ…」
振り返るとシズちゃんが何かを差し出していた。良く見ればそれは小さな箱。
ま、まさか…!
「シズちゃん…!これってもしかして…!」
「新羅とセルティからの誕生日プレゼントだってよ」
ですよねー!シズちゃんが俺になにかプレゼント寄こす訳ないよねー!
あっ、でもプレゼントがあるって事は新羅、俺の誕生日覚えてくれてたんだね!ありがとう!
俺新羅の誕生日何もあげてないけど!!ごめん、何か今度奢るよ。
「で、これが門田と狩沢と遊馬崎と渡草から」
「う、うん…ありがとう」
あれ、なんで皆シズちゃんに俺のプレゼント渡して、俺に直接渡さないの?
え、俺そこまで嫌われてるの?皆酷い!俺泣いちゃうよ!
あれ、なんでプレゼントの中にBL…所謂ボーイズラブの漫画とか、俺とシズちゃんが表紙の明らかに大人向けの薄くて高い本が混じってるの?
これはもしかしなくても狩沢の仕業だな…。
知ってるか。俺とシズちゃんは付き合ってるけど、俺ってばまだシズちゃんの処女貰ってないんだから!
こんな、濃厚なセックスなんてした事なんだからな!いつかはしたいと思ってるけどさ!
シズちゃんっては純情だからいきなりこんな深い事しちゃうと泣いちゃうんだって!トラウマになっちゃうの!
俺はちゃんとシズちゃんの心も心配してあげてるんだから。
な?俺って良い彼氏だろ?とか自画自賛してみたり。
…哀しくなってきたのはなんでだろう。
「…ぃ、おい臨也!大丈夫か?意識飛んでるぞ」
「は!だ、大丈夫だよシズちゃん!いかがわしい妄想なんてしてないよ!」
「はァ??」
危ない、危ない。危うく俺の妄想の中でシズちゃんを汚す処だった…。
って、あれ?なんでシズちゃんってば頬を赤く染めてるの?
は!まさか俺の心の中の声が溢れていたとか!
「…あの、さ…臨也」
「な、なに…?」
あれ、なんで俺まで緊張してるの?なんなの?俺今から告白でもされるの?
いやもう告白は俺からしてシズちゃんもオッケーだしてくれたから付き合ってるわけだし…。
「今日、臨也の誕生日、だろ?俺…ついさっき知って…プレゼント、何も用意、できなくて…」
「あ、い、いいんだよシズちゃん!俺はシズちゃんが来てくれたことが嬉しいし…一緒に鍋が食べれるだけで幸せだから」
「そんなんじゃ駄目だ!俺は臨也の恋人なのに…。だ、だから…!」
シズちゃんは涙眼で俺を見つめると、意を決したように言った。
「俺の処女、やる!!」
「はい?」
シズちゃんが絶対に言わないような単語が出て来て思わず俺の耳が可笑しいのかと思って聞き返してしまった。
そうなるとシズちゃんも当然ワタワタしながら。
「だ、だから…お、俺の処女、臨也に、やるって、言ってんだよ!!分かれよ馬鹿!!」
逆ギレ!聞き返した俺も悪いんだけどね!ごめんねシズちゃん!泣かないで!
「あ、何…?シズちゃんから俺へのプレゼントって、まさか…」
「だ、だって…俺達、今まで、セ、セセ、セックスッ、とかした事ないしッ、臨也もやっぱりしたい、かなと思ってよ…」
二十五歳にして処女喪失のシズちゃん、か…。へへ、興奮してきちゃった。
そんな頬赤くしながら涙眼で上目使いとかしないでよ!理性吹っ飛んじゃうでしょ!
「だ、駄目、か…?」
「そんな訳ないでしょ!寧ろ今までのどのプレゼントより一番嬉しいよ!」
そう言えばシズちゃんは本当に嬉しそうに笑った。怒った顔と笑った顔のギャップ、激しいよ…。
そうなれば鍋なんて後回し!シズちゃんの手を引いて寝室へ向かう。
シズちゃんをそのままベッドに押し倒してキスをした。
キスなんて何百回としたけど、今日のが一番嬉しい。ああ、なんて良い誕生日なんだろう。
誕生日なんてただ歳をとるだけだと思っていたけど。こんなに嬉しい事もあるもんなんだなぁ。
「あの、臨也…服は、俺が自分で、脱ぐ、から…」
そう言ってシズちゃんは自分のシャツに手を掛ける。一つ一つボタンに手を掛けるシズちゃんの手が震えてる。
ゴクリと思わず生唾を飲み込む。今度はベルトに手を掛けカチャカチャと外し始める。
ああ、綺麗だ。綺麗だよシズちゃん。
全裸になったシズちゃんは、見たことがないくらい白くて、綺麗だった。
この身体を今から抱くんだと思うと心臓が煩く脈打つ。
「や、やさしく、してくれよ…?」
「勿論。俺無しじゃ生きられない身体にしてあげるよ」
最高のプレゼントをありがとう、シズちゃん。
ハッピープレゼント!
(腰、痛い…)
(愛し合った証拠だよ。ね、シズちゃん)
(う、うん…。臨也、誕生日おめでと。生まれて来てくれて、ありがとう)
(シズちゃんも、生まれて来てくれて、ありがとう)
――――――
mixiでマイミクさんから頂いた、静雄が自分の処女を臨也の誕生日にあげるという話でした!
エロ部分は…希望があれば書くかも、です。
臨也、ハッピーバースディ!