ああ、私が幸せになれるはずがないんだと、ようやく思い知った気がした。


放課後の図書室。誰も居ない静かな空間が私は好きだ。夕陽が部屋に射し込んでキラキラ光る。
校庭では部活動のサッカーやテニスを生徒がやっていた。羨ましい。私は小学生の頃から妙な力を手に入れてしまい、皆でやるようなスポーツが出来ない。
サッカーボールを蹴れば破裂し、テニスラケットを持てば力を込めただけで簡単に壊れてしまう。
だから、殆どの体育の授業は見学だ。本当は皆と一緒にやりたいけど、仕方ないんだ。
今じゃ皆が遊んでいる姿を見れるだけで満足なんだから。

そんな学校生活で、一番厄介なのがとある男である。
折原臨也という私と同級生の変な男だ。事有るごとに私にちょっかいを出してくる。
臨也は、私を怖がらない。他には小学校からの友達の新羅と、最近友達になった門田ってやつ。
クラスの連中は私を怖がるのに、三人は私を恐れない。それが少し嬉しくて。申し訳ないという気持ちで悲しくなった。
私は、独りでも大丈夫だよ。寂しくないから。もう、慣れたから、平気だよ。
親しくされたら、離れられなくなる。だって私は、バケモノだから…。

夏に向けて暖かくなる気温。そろそろ長くなった髪を切ろう。
夏休みが始まるに、皆に言うんだ。もう私に無理して付き合わなくていいよ、って。
私に関わっていい事なんか一つもないからって。
ああ、でも臨也はそんな事お構いなしに突っかかってくるかも。
実は私は臨也に片想いをしている。どうやら毎日喧嘩のような鬼ごっこを繰り返すうちに、間違った方向に私の想いは傾いてしまったらしい。
臨也は顔も頭もイイし、そこら辺の男よりは断然カッコいい。だからモテる。
告白したって、どうせ私なんか女の子として見られてないだろうから。フられるのを分かってて告白するほど私は馬鹿ではない。
けど、でも、やっぱり。

「………すき」

「何が?」

ビックリした。机を挟んだ私の前に臨也が居た。少し不機嫌そうな臨也の顔。

「な、なんでも、…ねぇよ」

「えー?気になるなァ…。シズちゃん、一体何が好きなの?あれ、もしかして校庭で部活動している男の子の一人に恋でもしちゃったのかな?あは、バケモノのシズちゃんが?人間に恋?あっはは、傑作だね!!」

「…るせぇな。手前には関係ねぇだろ。とっとと私の前から消えろ。目障りだ」

バケモノの私が人間に恋をするなんて馬鹿げている。そんな事、最初から分かってた。
けど、私も女だからいつかは恋人を作ってデートしたり、結婚したり、子供を授かったりと、そんな事が訪れると思っていたのに。
やっぱり私は幸せになんかなれないんだと臨也の言葉で思った。

「今日はなんだか普段のシズちゃんじゃないみたいだね。変なのー!」

「…黙れ」

この男には悟られたくない。私はお前が好きなんだと。
私の想いは決して叶うはずがないんだから。バケモノに恋をされて嬉しいはず、ないんだから。

「…気分悪ぃ。帰る」

「え、シズちゃーん、待ってよー!一緒帰ろうよ」

「なんで私がノミ蟲なんかと帰らなきゃなんねぇんだよ。勝手に一人で帰ってろ」

「つれないなぁ。そんなんじゃ彼氏出来ないよ?」

私なんかに彼氏が出来ないって分かってて言ってるだろ、コイツ。
本当、嫌味なヤツ。どうして私はこんなやつ、好きになったんだろ。馬鹿みてぇ。

「じゃあな、臨也」

今日でこの恋とはさよならするんだ。未練なんか、残さない。
臨也を振り切って家に帰る。家には弟の幽がいた。
そうだ、幽に頼もう。

「なぁ、幽…頼みがあるんだけどよ…」

幽は出来た弟だから私の言いたい事がすぐ分かる。
外に出て、縁側に座る。今日の夕陽は忘れられないモノになるだろう。

「…いいの?姉さん」

「…ああ」

終わったんだ、私の恋は。
幽の腕が動き、髪が持ち上げられる。ハサミが髪を掬う。
ジャキ、と髪が切られる音がする。
切られた髪が風に吹かれて空を舞う。

(…さようなら、私の想い)

これで終わった、私の恋物語。新たな恋が始まる事は、もう、無い。



明日はちゃんと新しい気持ちでいつも通り、普通に接しられるだろうか。

―――――
臨♀静は報われない恋とか…好き、です…。
臨♀静のラブラブは私には書けない…。なぜなら私がラブラブ苦手だから!



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