シズちゃんの身体は人間と同じで暖かい。見た目は俺達と同じなのに、とても不思議だ。

「ん、…つめた…」

「シズちゃんの身体は暖かいね。ゆたんぽみたい」

クスクスと笑えばシズちゃんはまた顔を真っ赤にした。本当に初なんだから。
上半身全てを脱がして、胸の飾りに軽く噛みつけばシズちゃんは小さく甘い声を漏らす。
反対側の飾りを指の腹で押しながら脚でシズちゃんの下半身をグリグリと刺激してやる。
それが堪らなく良いのか、シズちゃんは悲鳴のような声を上げた。

「ぁッ!あ、あァ…!ふ、ひィッ…ん」

「ふ、随分可愛く啼くんだねシズちゃん」

「だ、って…こんなん、初めて…だし…、良く、分からなくて…」

「え、シズちゃん初めてなの?」

「あ!当たり前、だろうが…!人間とちゃんと会話したのも、お前が…初めて、だし…」

思わずこっちの顔が赤くなる。なんて愛おしいんだろう。
恥ずかしそうに呟くシズちゃん。可愛くて愛おしいよ。大好き、大好きだシズちゃん。

「んん、…ぁ、なんか、へん、だ…ッ、いざやぁ…!」

「可愛いシズちゃん。だーいすき」

「ふぁ、あ…っ、れも…すき…ッ」

下も脱がせて、俺に対面座位で座らせる。
シズちゃんの、この美しさを俺だけのモノにできる。こんな嬉しい事はないだろう。
好きだ、好きだ!!
ぬち、と俺のをシズちゃんの中に入れる。身体の構造は殆ど人間と同じらしい。
絡みついてくる。一つになった。俺とシズちゃんは、一つになったんだ。

「ん、んぁ!ぃた、ぁああ…!ひ、ゃあぁ…ッ」

「ん、ふ…シズちゃんの中、気持ちいーよ…」

「ぁ…、よか、ったぁ…、あん、いざやぁ…!」

「ッ、…シズ、ちゃ…」

この神聖な桜の樹の下で交り合う俺達。本当にこのままシズちゃんが俺の子を孕んでくれたら良かったのに。
ずっと、ずっとこのままでいたい。

「シ、ズちゃん…中、出すよ…?」

「ん、…ぁ、いざやの、ちょーだぃ…ッ!」

俺はシズちゃんの中に欲を吐き出せば、シズちゃんも遅れて俺とシズちゃんの間に欲を出した。
まだ思考が追いつかないのかシズちゃんの目は虚ろなまま。
荒い息を必死に整える。一回だけで済む訳ないからね。
シズちゃんの処女を奪って満足って訳にもいかないんだよ。
そのまま孕むぐらいヤりたいし。溜まりに溜まった性欲を今此処で吐き出さないと後が辛いからね。
そんな訳で俺達は一晩中セックスをしまくった。


朝、桜の樹に二人で寄りかかる。そろそろこの桜も散ってしまいそうだ。
咲くまでが長いのに、いざ華を咲かせたらすぐ散っちゃうんだもん。
寂しいよね。

「…もうすぐ、桜散っちゃうね。そしたら…またお別れ、だね」

「……臨也」

「なぁに」

「桜の樹の寿命って…知ってるか?」

「…知らない、けど…それが、何?」

「大体人間と同じぐらいだって事、知ってたか?」

「え、…シズ、ちゃん…?」

「俺は多分お前より先に死ぬ。持って後二十年とか、か…」

それって、何。新しい恋人を作れって事?
元の樹が死んだらその樹の妖のシズちゃんも一緒に死ぬって事で。

「元々無理だったんだ。人間と妖の恋なんて。臨也が俺を見つけた時、凄く嬉しくて。今までずっと独りだったから。もしかしたら俺も人間になれるかもしれない、なんて思ったりした。
けど、現実を見せ付けられる度苦しくなった。俺が臨也の恋人でいいのかって。俺は桜が咲く季節でしか姿を現せられないし、会えない。だから、臨也は、…俺みたいな妖じゃない、人間と結ばれた方が絶対良いって…」

「…シズちゃんの馬鹿」

「え…」

シズちゃんの樹はとっても立派な樹。俺が生まれる前からずっと此処で時を過ごしてきたのだろう。
生まれてからずっとこの場所に独りでいたのだろう。
桜の樹が人間と同じぐらいの寿命だって事は知らなかった。という事はもうシズちゃんは五十歳ぐらいって事?
見た目は俺と同い年ぐらいに見えるのに。

「分かったよ。シズちゃんは俺と別れたいんだね?」

「ちが、…そうじゃなくて…。本当は俺だってずっと一緒に居たい、けど…、けど」

「それじゃあ、シズちゃんが死んだら、俺も死ぬよ。それならいいだろ?」

「は!?よ、良くねぇよ!全然良くねぇ!なんだそれ!」

シズちゃんが死ぬ、つまりは桜の樹が枯れるってことだ。
シズちゃんの寿命は後二十年。シズちゃんとは後数回しか会えない。
それなら。そんな事になってしまうんだったら。いっその事。

「桜の花弁が赤っぽいのってさ、その樹の下に人間の死体が埋まってて、桜の樹がその人間の血を吸って赤くなってる…とか、そういう話あるじゃない?」

「あ、あれは作り話だろ!い、臨也が死ぬのは、嫌だ…」

「俺だってシズちゃんが死ぬのは嫌だよ。ずっと一緒にいたい」

好きな相手が居なくなってしまうのは嫌だ。それなら一緒に死んでしまいたい。
誰だってそう思う事は一度ぐらいあるだろう。

「…なら、俺の寿命が尽きるまで…毎年、会いに来てくれよ。俺も頑張って長く華を付けさせるようにするから。臨也と一緒に居られる時間を作るから」

「ん…、そう、だね。じゃあ、毎年会いに来る。俺もシズちゃんと一緒に居られる時間、沢山作るようにする」

俺の仕事はちょっと危ないけど、シズちゃんにはそんな事言えない。
シズちゃんに心配は掛けられないし。
仕事でへまして死ぬなんて絶対嫌だ。死ぬんだったらシズちゃんと一緒がいい。
それまで頑張って生きていないとね。

「それじゃあ、シズちゃん。今日は帰るね。また仕事が終わったら会いにくるよ」

「ああ。分かった。待ってる」

なんか結婚したての夫婦みたい。仕事に行く夫を見送る新妻、みたいな…。
でもシズちゃんの顔は浮かないまま。安心して、すぐ戻ってくる。
すぐ会いにくるからね。

(桜は出会いの季節であり、別れの季節…か。確かにそうかもね)

でも俺とシズちゃんに別れなんてこない。ずっと一緒だから。
何があっても、桜が咲く季節でしか会えなくても。

(俺は、シズちゃんが、大好きだから)



数年後。古ぼけた桜の樹に寄り添いながら眠るように亡くなる青年がいたという。

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あれ、悲恋どこ行った…。
mixiで、マイミクさんから頂いたネタ。
夜桜+和装+青姦+人外静雄+悲恋で臨静…。
悲恋…、あれ?




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