「いざやぁああああッ!!」

ガシャアン、とマンションのオートロックであるドアが破壊される音が聞こえる。
臨也は下の階から聞こえる雄たけびと破壊音に深い溜息を吐く。
そして暫くすると、ゴシャッという音とともに玄関のドアが壊される。

「…ちょっとシズちゃん。何回俺ン家のドア破壊すれば気が済むの?」

「てめぇええッ!!これはどういう事だ!!」

「何?」

静雄は息を切らしながら臨也を睨みつける。静雄はくるりと後ろを向く。
その背中には、小学生ぐらいの男の子がくっついていた。
白いジャケットに黒い頭。ピンクのヘッドホン。
臨也は首をかしげる。どこかで見た事あるような…。

「このガキ、手前そっくりなんだよ!!」

「はぁ?」

静雄は背中にくっついていた男の子を剥がし臨也の前に差し出す。
その男の子は臨也をそのまま小さくしたような感じで、キョトンとしている。
臨也の視線に気付いた男の子はパァア、と顔を輝かせて。

「あー!臨也くんだー!」

臨也の名を呼んだのだ。

「うえええ??」

「ほら!やっぱり手前の知り合いなんじゃねぇか!!」

「いやッ、俺こんな子知らないよ!初耳だし、こんな大きい子供、俺にはいないよ!」

「じゃあなんでこのガキが手前の事知ってんだ!」

「逆に俺が聴きたいよ!!」

ぎゃあぎゃあ、と二人言い争いを始める。男の子は辺りをキョロキョロと見渡し、くいくいと臨也の服の端を掴む。

「臨也くん、臨也くん」

「ちょ、なに!?今大事な話ししてて…!」

「津軽はどこ?臨也くんのお家にいるはずだよ?」

「つ、…」

「「津軽ー?」」

臨也の家にいるはず、とはどういう事だろう。臨也と静雄は顔を見合わせる。
臨也は先程からこの家にいるが津軽という人物は見ていない。

「見てないの?そっかー、じゃあ寝てるのかも!」

「ちょ、勝手に走り廻らないでよ!」

「いいぞもっとやれ」

「本当?わーい!」

「シズちゃんッ!!」

男の子は次々にドアを開け、閉めるを繰り返す。どうやら津軽という人物を探しているようなのだが…。

「…そういや、お前なんて名前なんだ?」

「Psychedelic dreams VOL.01だよ」

「ん、んん??」

「あ、サイケって呼んでね!」

「ん?あ、お、おう…」

(シズちゃん、今絶対聞き取れてなかったな…)

先程の男の子はサイケというらしい。サイケが次に開けた扉の奥に、青い着物を着た少年が眼を閉じ座っていた。
臨也は驚きで眼を丸くした。それは静雄も同じで。
なぜなら、その着物の少年は、静雄そっくりだったのだ。

「つーがる、つがる!起きて!」

「ふぇ…?」

「ほら、臨也くんも静雄くんも居るよ。後は津軽だけだよ」

津軽と呼ばれた少年も背丈は小学生ぐらい。青と白を基調とした着物を着ている。
津軽も静雄と臨也に気付くと、ペコリを会釈をした。

「初めまして、津軽海峡冬景色、です。津軽って、呼んで、下さい」

「え、あ、ああ…」

「…あのさ、君達なんな訳?突然現れて自己紹介されても困るんだけど」

そう臨也が言えば、サイケと津軽は互いに顔を見合わせ。

「えっと、僕達は、静雄くんと臨也くんを仲良くさせる為に未来からやってきました!」

「よろしく、お願いします…」

「え」

ええええええ!!??何だそれぇえええ!!
この日の叫びは、唯一静雄と臨也の息がピッタリ合った時だった。
さてさて、これからどうなることやら。

(え、何?まさか君達俺の家に住む気?シズちゃんの家にしてよ!)
(俺のアパート、狭ぇから無理だ)
(臨也くんのお家、無駄に広いから大丈夫だって!ねー?)
(ねー?)
(無駄に広いって何!?あああ、もう!何なのさー!)




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